※2024年6月12日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2024年6月12日 日刊ゲンダイ2面
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自民党を隠し、小池都知事(左)支援という姑息な手法(岸田首相=右)/(C)日刊ゲンダイ
いよいよ「首都の七夕決戦」の火蓋が切られる。20日告示、7月7日投開票の東京都知事選のことだ。
3選を目指す小池知事は都議会最終日を迎える12日の本会議で、出馬を表明した。
自民党国会議員だった小池は2016年夏の知事選に電撃出馬。「東京大改革」をスローガンに掲げ、自民推薦の増田・現日本郵政社長と保守分裂の選挙戦を展開。圧倒的な支持を得て初当選し、都議会で自民党と対峙する基盤をつくるべく地域政党の「都民ファーストの会」(都ファ)を立ち上げた。
と、ここまでは勢いがあったのだが、国政関与に色気を示して「希望の党」を設立し、排除の論理によって野党分断を始めた頃から迷走し、人気も急落した。
肝心の都政でも、選挙争点でもあった築地市場の移転問題に対して「築地は守る、豊洲は生かす」などと反対派を取り込むような甘言を弄しながら結局、黙認。「待機児童ゼロ」「満員電車ゼロ」「残業ゼロ」など「7つのゼロ」の公約への取り組みは2期8年経った今も、果たされたとは言い難い。
3選の出馬表明では、あらためて子育て・教育分野の取り組みや、日本経済全体を先導する東京の成長戦略、防災施策の充実について訴えるとみられるが、もはや化けの皮の剥がれた小池に騙される都民はそう多くはないのではないか。
「闇の社会」で怪しくうごめく反社会的組織のよう
都知事選を巡っては、立憲民主の蓮舫参院議員が「小池都政のリセット」「反自民・非小池都政」を掲げて出馬表明。激しい選挙になると予想されているが、何といっても恥ずかしいのが政権与党・自民の対応だろう。
自民の東京都連が10日党本部で開いた会合。裏金事件で渦中の人物となった衆院議員の萩生田会長は、知事選に独自候補を擁立せず、「小池都知事が3選の出馬をするなら支援を行う方向だ」と明言。支援の在り方については党本部が推薦するのではなく、新たに「確認団体」を設立した上で、小池が特別顧問を務める都ファなどと相乗りで支援する方針を示したのだが、みっともないったらありゃしない。
政権与党であれば堂々と自らの政策と政治姿勢を有権者に問うのが当たり前ではないか。しかも、地方の過疎地域で候補者もおぼつかないような村議選レベルの話じゃない。
約8.5兆円の巨額予算(24年度一般会計)を抱える1400万人都市の首長選なのだ。
百歩譲って公認候補の擁立を見送ったとしても、自民は国政を担う与党なのだから、小池を適任と判断するのであれば「推薦」を出して意思を示せばいい。
それなのにあえて自民の色を隠し、わざわざ「確認団体」をつくって支援するという姑息な手法。一部メディアでは党名を表に出さない「ステルスサポート」と報じられているが、まるで反社会的組織が「闇の社会」で怪しくうごめいているかのようではないか。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「政権政党が首都の知事選で候補者を前面に立って支援できないという異常事態ですが、これは自民党自身が国民、都民に見捨てられつつあるということを認識している表れでもある。落ちるところまで落ちた政党になったと言ってもいいと思います」
自民党は政党として完全に機能不全になっている
「小池支援」を明言した萩生田光一・自民党都連会長(C)日刊ゲンダイ
「いくら隠したって分かりますよ。有権者はバカじゃないんで」「いくらステルスでやっても、(自民が)後ろに付いていることが分かる。都連も『支援したい』という話をしているし、ステルスにしてどれくらい意味があるのか」
11日のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」で、コメンテーターを務める元テレビ朝日社員の玉川徹氏は今回の自民の「ステルス選挙」についてこう感想を漏らしていたが、その通りだろう。
有権者はバカじゃないし、さらに言えば、政権与党が首都の首長選でステルス支援しかできないという倒錯した状況に対し、マトモな都民ほど呆れているに違いない。
玉川氏はまた、小池の受け止めについても言及。「今、自民党の政治に逆風が吹いており、自民党と一緒にやるというと(小池は)逆風に乗る感じになる。『実質応援してほしいけど、表には出ないで』というのが(小池の)本音なんでしょうね」とコメントしていたが、この推測も的を射ているだろう。
「ステルス」とはいえ、小池が自民都連の支援を受ける気がないのであれば、「拒否します」「排除します」と門前払いし、都連も「確認団体」の新設に踏み込む必要もない。
ところが、小池は「保守の方々からの支援、大きなエールもいただいている」と言っていたから、すでに小池と都連は水面下でデキている可能性が高い。しょせんは小池も萩生田も自民・裏金事件の“本丸”となった最大派閥「清和政策研究会」の出身だから、悪知恵を働かせることには長けているのだろう。
「緑のタヌキ」と「アタマの悪いネズミ」が手を携えている
「緑のタヌキ」と「アタマの黒いネズミ」が互いに距離を置くフリをしつつ、コッソリと手を携えているような状況なわけで、有権者をバカにするにも程があるが、果たして思惑通りにコトが進むかは分からない。
「来夏に都議会議員選挙があり、現時点の議席数は自民27、都ファ26と競っています。おそらく、都議選では維新が食い込んでくるでしょうし、立憲、共産も勢いがある。つまり、すでにライバル関係にある自民と都ファが知事選で共闘しましょう、となるのか。今回は都議補選もあるわけで、自民議員、支持者が都ファが推す小池知事支援に本気で動くとは言い難い」(都政担当記者)
いずれにしても、自民が政党色を打ち出したくない理由は裏金事件があるからだが、それは裏返せば「違法、脱法行為」だったと自ら認めているに等しい。「派閥の指示だった」「私は知らなかった」として、何ら後ろめたいことはないと主張するのであれば、正々堂々と自民の名前を前面に出して選挙を戦うのがスジ。繰り返すが、腐っても政権与党なのだ。
それができず、反社のような動きしかできないのだから、これほど異様で異常なことはない。この一事で下野は当然。森山総務会長はおととい、静岡市で開かれた党静岡県連大会で、「自民党が政権を失うようなことになれば大変なことになる」などとあいさつしていたが、寝言もいい加減にしてほしい。自民はもう死んでいるに等しいからだ。
政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「党総裁である岸田首相や茂木幹事長、都連執行部らがそろって、知事選にどう対応していいのか分からず、右往左往している。負けた場合、誰も責任を取りたくないと腰が引けているし、政権与党としてこれでいいのか、という正論を言う議員が誰もいない。情けない限りです。自民党は政党として、完全に機能不全になっていると思います」
もはや、自民はこのまま消えてなくなるのが都民、国民にとって最善だ。
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