※2024年6月6日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2024年6月6日 日刊ゲンダイ2面
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世紀のザル法が衆院を通過。世にもおぞましい歴史に残る暴挙(C)日刊ゲンダイ
日本政治の裏金文化は、やはり温存されるようだ。
自民党の裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡る国会審議が大詰めだ。5日の衆院特別委員会で、自民党が公明党と日本維新の会の主張を踏まえて修正した改正案の採決が行われ、自公、維新の「与ゆ党」の賛成多数で可決された。6日の本会議で可決され、参院に送られる見通しだ。世紀のザル法の成立がほぼ確実となった。
岸田首相は6日の特別委で、裏金同然の「政策活動費(政活費)」の領収書の保存や公開に関するルールについて「改正法が成立した暁に罰則の要否も含め各党会派で検討が行われる」なんて悠長なことを言っていた。相変わらずのヤル気のなさである。肝心の政治資金パーティーや企業・団体献金、“掴み金”の政活費の3点セットはほとんど手つかず。法の「抜け道」は維持されることになった。
こんなデタラメが通ってしまった理由は明白だ。改正案の詳細を決めたのが、自公と維新の「ムジナ3兄弟」だったからだ。特筆すべきは、ゆ党・維新の立ち回りである。
もともと、維新は他の野党と同じく、企業・団体献金の禁止、政活費の廃止または領収書の公開、議員が会計責任者と同等の責任を負う「連座制」の導入を要求していた。ところが、先月下旬に突然、政活費について「使途報告書や領収書を10年後に公開する」という案を提示。この大甘のフザケた提案に対して「自民に“助け舟”を出し、最終的に水面下で握る気ではないか」(永田町関係者)などと囁かれていたが、案の定である。党首会談で合意し、修正案に自らの主張が盛り込まれたことで維新は賛成に回ったのだった。
維新発のドタバタ劇はヤラセ
この間、岸田側近の木原誠二幹事長代理が維新幹部と複数回にわたって面会。改正案について協議を重ねてきたが、大方、木原にニンジンをぶら下げられてパクッと食いついたということだろう。最初は「野党の顔」をしていたのに、結局は日和ったわけだ。
ところが、自民にスリ寄ったと見られるのを避けるためか、維新は最終局面で自民案に反対。政活費の公開基準の緩さに「話が違う」とこぶしを振り上げ、結果的に採決日が後ろ倒しになったのだが、このドタバタ劇はヤラセだったことがハッキリしている。
「維新の遠藤国対委員長は、採決延期が水面下で協議されていた4日未明に『“自民党寄り”を排除した戦法をとった』『“反対するかも作戦”が効いて良かったわ』などと周囲に話していました。本気で反対するつもりはなく、初めから手を握るつもりだったとみられています」(官邸事情通)
結果的に、維新としては「オレたちが自民をピリッとさせた」と格好つけられ、自民も「野党の意見を取り入れた」とアピールできるわけだ。実際、維新の馬場代表は「維新の存在がなければ、今回このような動き(法案修正)になってはいない」と胸を張り、自民の法案提出者の鈴木馨祐衆院議員は「各党の意見を幅広く受け入れて反映させ、一歩を踏み出すことができた」と誇ってみせた。中身スカスカで裏金づくりの歯止めにならないうえ、水面下で握っているのに、しらじらしいにもほどがある。国民は、世にもおぞましい国会風景を見せつけられたのである。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。
「今回の動きは、ヒドい茶番劇と言うしかありません。国会で審議する前から、どこを落としどころにするか自民と公明、維新の間で決めてしまっている。いわゆる昭和の国対政治です。それぞれが党利党略だけを優先して、国民はそっちのけ。特に維新は野党のふりをしながら自民に恩を売り、実を取る戦略がアリアリでした。完全に化けの皮がはがれた格好です。彼らの水面下の交渉によって、結果的に裏金文化の温存が決まってしまった。また同じような事件が起こってもおかしくないでしょう」
悪辣政権与党と、ゆ党・維新の賛成は歴史に残る暴挙となるだろう。
「ムジナ3兄弟」は政権にしがみつきたいだけ
3党連立視野に入れ、公明党も同類だ(山口代表)/(C)日刊ゲンダイ
今回の一件を、国民は絶対に忘れないはずだ。
ここへきて、衆院解散時期について「会期末見送り」「総裁選後の秋以降」などと報じられているが、その理由は明白だ。裏金事件の影響で内閣支持率が低迷し、とても岸田が伝家の宝刀を抜ける状況ではないということ。解散時期を後ろ倒しせざるを得ないわけだ。多くの国民が「次の選挙で鉄槌」と手ぐすね引いていることを、岸田自身も分かっているのだろう。
実際、4月の衆院3補欠選挙で自民は全敗。5月には静岡県知事選に東京都議補選(目黒区選挙区)、岸田の地元選挙区に含まれる広島県府中町の町長選でも自民は敗北した。今月2日の東京・港区長選でも、自公推薦の現職が負けた。いま解散すれば、「自民NO」を突きつけられるのは確実である。
国民が怒るのは当然だ。そもそも、再発防止策の規正法改正の前に、いつから、誰の意思で裏金づくりが始まったのか。カネを何に使ったのか、といった実態の解明は、後ろ向きな自民のせいでまるで進んじゃいない。実態が分からないのに再発防止もクソもないだろう。実態解明をウヤムヤにしておくことで“今後も裏金をつくり続けたい”という自民の本音が透けて見える。
そんな裏金自民に手を貸している公明党と維新も同類だ。文字通りの「ムジナ3兄弟」である。少しでも長く政権に居座りたい岸田としては、解散総選挙で大敗しても、公明と維新を合わせれば政権は維持できると踏んでいるはずだ。今回、規正法改正で維新に花を持たせたのは、その布石だったに違いない。
「第2自民党でいい」と言ってはばからない維新側も、最終的に連立入りを狙っているともっぱら。馬場は万博担当相として「入閣説」まで囁かれているほどだ。
自公、維新に課題解決能力ナシ
しかし、ムジナ3兄弟による連立を許してしまえば、この国の民主主義は一巻の終わりだ。またぞろヤラセやゴマカシで国民を欺き、やりたい放題の政治が続くことになる。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「日本はいま、急速な少子高齢化や、産業の空洞化と円安インフレといった深刻な問題を多く抱えています。政権に居座ることだけが目的の自公、維新による野合に、こうした課題を解決する能力があるとは思えません。今回、裏金事件の対応を巡って、自民に統治能力がないことがハッキリと分かりました。そんな堕落した政党を手助けする公明と維新は、文字通り同じ穴のムジナです。党利党略ばかりで国民目線のない政党に任せていて、この国が良い方向に向かうわけがないでしょう。衆院3補選以降の選挙の結果を見て分かるように、既に多くの国民が気づいていると思います。国民が求めているのは、ムジナ3兄弟による古い政治からの転換です。野党は真価が問われています」
ムジナ3兄弟が古い政治を続けられるのは、「どうせ国民はそのうち忘れる」となめているからだ。この際、あらゆる選挙で自公維3党に「NO」を突きつけるべきではないか。
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