※2024年5月25日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
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世論調査では「首相は後退した方がいい」が72%に…(C)日刊ゲンダイ
あの数字には、自民党も真っ青になっているらしい。大手新聞が20日に発表した世論調査が政界に衝撃をあたえている。
毎日新聞が18、19日に実施した世論調査によると、「首相は交代した方がいい」が72%に達し、とうとう政党支持率まで自民と立憲が逆転したという。「自民17%」「立憲20%」だった。いま衆院選が行われた場合の比例の投票先も「立憲25%」「自民15%」と、自民党は10ポイントの差をつけられている。
朝日新聞が18、19日に実施した世論調査の結果も衝撃的だ。どのような政権を望むかの設問に対し、「自民党以外」54%が、「自民党中心」33%を上回った。前回4月調査では「自民党以外」48%、「自民党中心」39%と、政権交代を望む声がやや上回る程度だったのに、差が広がっているのだ。
さらに、政権寄りとみられがちな読売新聞の調査(17〜19日)でも、衆院選後に期待する政権は、「自民党中心の政権の継続」と「野党中心の政権」が、42%で並んでいる。
天下分け目といわれた4.28「衆院3補選」で自民党が3連敗した後も、有権者の「自民離れ」は加速しているということだ。3連敗した後、自民党議員は「ガス抜きになったんじゃないか」などと口にしていたが、ガス抜きどころか“自民嫌悪”のマグマは大きくなっている状況だ。
「いかに有権者の自民不信、自民嫌悪が強いのか、思い知らされたのが5月19日に投開票された小田原市長選です。自民党が支援した現職市長が落選してしまった。自民党は組織戦を展開し、地元・神奈川選出の河野太郎や小泉進次郎を応援弁士に送り込んだのに、初当選時より1万2000票も減らしてしまった。2期目を目指す現職は一番強いはずなのに落選したのだから、常識では考えられない話です。地殻変動が起きているのは間違いないでしょう」(政界関係者)
いま政界では、政権交代15年周期説が流布されている。自民党の1党支配が崩れて細川政権が誕生したのが1993年。ほぼ15年後の2009年に民主党政権が成立している。あれから、ちょうど15年後が2024年なのだ。衆院3補選の3連敗や、小田原市長選の敗北は、政権交代の予兆なのかもしれない。
選挙3敗でも懲りていない
「保守王国」島根1区で敗北(C)日刊ゲンダイ
有権者に嫌われ、票が逃げていくのは、自民党の自業自得だ。
組織ぐるみの裏金づくりが発覚し、あれだけ批判を浴びたのだから、普通は反省し、どこよりも厳しい法案をつくろうとするものだ。ところが、この期に及んで“不透明”なカネを温存しようとしているのだから、国民から愛想を尽かされるのも当然である。
なにしろ、自民党が国会に提出した「政治資金規正法改正案」は、国民をなめ切ったものだ。
批判が強い「政策活動費」も手放さないつもりだ。政党から政治家個人に支出され、使途公開の義務がない「政策活動費」は、裏金の温床となっている。だから野党は「廃止」を主張している。なのに、自民党案は、大まかな項目別の支出額を公開するだけで、領収書の保存義務も、公開義務も課していない。これではブラックボックスの実態は変わらない。
安倍派が裏金づくりに悪用していた「政治資金パーティー」も、やめるつもりがない。パー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「10万円超」に引き下げただけだ。なぜ、きっぱり「禁止」にしないのか。
もちろん、企業献金の廃止は触れてもいない。
国民の多くは、裏金事件を引き起こしながら、反省ゼロの自民党に呆れ返っているに違いない。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「衆院3補選に全敗したら、さすがに自民党も少しは反省するだろう、政界浄化に動くだろう、そう思った有権者もいたはずです。ところが、まったく懲りていなかった。現状を維持する法案を平然と提出してきた。しかも、岸田首相は、自民党案を『実効性のある再発防止策を提出できた』と自画自賛する始末です。恐らく、自民党には政治不信を深めた自覚もなく、どれほど国民が怒っているかということにもピンときていないのだと思う。さもないと、現行制度と大差のない改正案を提出しないですよ。衆院補選の3連敗は、自民党にはなんのクスリにもならなかった、ということです。衆院3補選以降も、有権者の自民離れが加速しているのは、『もう自民党には期待してもムダだ』と、国民が思いはじめているからでしょう」
衆院補選の3連敗は、ある意味、自民党が目を覚ます絶好のチャンスだった。なのに、有権者の“警告”を完全に無視している形だ。
「岸田おろし」も起きない末期
たとえ国民から批判されようが、これまで通り「政策活動費」と「政治資金パーティー」は温存する--とは、自民党は正気を失いはじめているのではないか。マトモな神経をしていたら、少しでも国民の支持を得ようとするはずである。
実際、自民党のやっていることは、自爆テロと変わらない。
衆院の政治倫理審査会(政倫審)が14日、改めて自民党の裏金議員44人に政倫審への出席を求めたが、誰一人、応じなかった。党内から「政倫審に出席すべきだ」との声も上がらなかった。
かと思うと、岸田首相は、1人4万円の減税を給与明細に明記するように強制し、国民の神経を逆なでする始末だ。
自民党が末期的なのは、ここまで岸田が国民の支持を失っているのに、それでも“顔”を代えようという動きが皆無なことだ。衆院補選で3連敗したら「岸田おろし」の号砲が鳴るといわれていたが、自民党内はシーンと静まり返っている。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「自民党の強みは、政権が国民の支持を失ったら、トップの顔を代えることで、あたかも政権が交代したかのように演出することでした。しかも、右から左へ、振り子のように違うタイプをトップに担ぐのが常套手段だった。中堅・若手が党刷新の声を上げるだけでも、国民には活発な党内議論があるように見えたものです。しょせん疑似政権交代ですが、リスタートすることで、国民もなんとなく納得してしまった。ところが、目の前の自民党は、岸田おろしのパワーさえ失っているように見えます。岸田首相の支持率が下落しているのは、“政治とカネ”だけの問題ではないと思う。これだけ物価が高騰すると、国民の多くは、生活が苦しくなっているに違いありません。なにしろ、実質賃金は24カ月連続のマイナスです。自民党の裏金事件への批判が強いのも、『国民は苦しい生活をしているのに、裏金とはどういうことだ』という憤りがあるからだと思う。経済問題が加わると、有権者の投票行動は大きく変わる。15年ぶりに政権交代が起きても不思議ではありません」
強烈なライバルが見当たらない岸田は、秋の総裁選も「無風再選」されると計算しているという。自民党は、崩壊に向かっているのではないか。
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