※2024年5月14日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2024年5月14日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
「袖の下」が当たり前、自民党は「事故みたいなもの」程度にしか感じていない(オトガメなしの森元首相、議員辞職を迫られた塩谷立元文科相=右)/(C)日刊ゲンダイ
この連中の図太さ、無神経は一体何なのか。
自民党の裏金事件を巡り、離党に追い込まれた世耕前参院幹事長の地元で、森山総務会長が世耕を“ウルトラ擁護”だ。
和歌山市の自民党県連で11日に開催された「政治刷新車座対話」終了後、世耕が改選となる来年の参院選「和歌山選挙区」で、森山は自民党として対抗馬の擁立を見送る考えを示したのだ。あろうことか、世耕を「将来のある方だ」と持ち上げ、「県連の判断にゆだねるしかないが、個人的に申し上げるとしたら賢明な判断をお願いしたい」とまで言い放った。
はて? 世耕はそんなタマか。世耕は組織的な裏金づくりに手を染めた安倍派の参院議員グループの元トップ。4月上旬の党紀委員会で離党勧告処分を受けた。自民党から「クビ」を宣告されたはずなのに、なぜ森山は擁護するのか。和歌山選挙区はめぼしい野党候補がいない。自民党が対抗馬を立てなければ、世耕は当選確実。選挙での勝利を“禊”として、復党を許すつもりだろう。
結局、「離党勧告」なんて名ばかりで、建前に過ぎないわけだ。世耕は「人身御供」みたいなモンで、世論のほとぼりが冷めたら「自民党に戻ってこいよ」と言っているに等しい。ハナから世耕のクビを本気で切る気などサラサラなく、世耕本人も残ったクビの太さを実感しているはずだ。
この調子だと、1年間の党員資格停止処分を受けた西村前経産相や下村元文科相ら、安倍派幹部も実質「おとがめなし」。何食わぬ顔で、またフンゾリ返るに違いない。2021年、コロナ禍の緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブ通いが発覚し離党勧告処分を受けた松本純元国家公安委員長ら「銀座3兄弟」が、今やシレッと全員復党したことを忘れてはいけない。
自民党にかかれば、コロナ禍の銀座豪遊も裏金事件も似たような感覚で「ちょっとした事故みたいなもの」。「のど元過ぎれば」くらいにしか思っちゃいないのだ。世耕への対抗馬見送りに言及した森山のナメたセリフには、自民党の腐敗・堕落の全てが詰まっている。
自民党では「裏金は文化」
森山裕総務会長(右)は離党した世耕弘成前参院議長(左)をあり得ない“ウルトラ擁護”/(C)日刊ゲンダイ
自民党がここまで裏金事件に無反省でいられる理由は明白である。裏金で政治を回し、薄汚い金が飛び交うのが当たり前の組織だからだ。
中国新聞は9日から連日1面トップで、安倍元首相が13年の参院選で自民の公認候補に現ナマ100万円を渡した疑いを追及。当事者である候補が匿名を条件に、安倍から直接、個室で100万円入りの封筒を渡されたことを証言。政治資金収支報告書に記載がない裏金で、同紙は税金が原資の官房機密費から出た可能性を指摘している。
裏金をバラまいて選挙に勝てば、業界団体から巨額のカネが転がってくる。それをまた裏金として党内で配り、仲間を増やす--、裏金をもとにして権力基盤を築き上げるのが、自民党の体質であり、文化なのだ。
昨年末、安倍派大臣の一斉更迭で辞任した鈴木淳司前総務相は退任会見で「裏金は文化」と明かしていたが、まさに的を射た発言だったわけだ。
「過去にも、河井克行元法相が19年参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で実刑判決を受け、最近では柿沢未途前法務副大臣が東京・江東区長選を巡る公選法違反の買収などの罪で有罪判決が確定しています。カネを配って権力基盤の強化を図ることは、自民党にとって当たり前の習慣と言えます。そのツールを奪われてはかなわないから、裏金スキームを手放すつもりはないのでしょう」(政治評論家・本澤二郎氏)
「袖の下」が当たり前の文化だから、自民党は裏金事件に反省どころか、「悪い」とすら思っちゃいないのだ。
悪しき伝統の“継承”にヤル気満々
そんな組織犯罪グループが目下、政治資金規正法改正に向けた議論を進めているが、チャンチャラおかしい。政治改革など、どだい無理な話。実際、自公両党が先週にまとめた与党案の概要はスカスカで生煮えだ。
実務者である自民党政治刷新本部座長の鈴木馨祐衆院議員もフザケている。12日のNHK「日曜討論」で、抜け穴だらけの与党案を野党議員に批判されると「視聴者の方はご理解いただくと思うんですけども、再発防止の話と、自民党の力をそぎたいという政局的な話がゴッチャになっている」と語ってみせた。全国放送で被害者ヅラだ。
さらに、「ファクトに基づいた議論をしっかりやっていくということが極めて大事」とか言っていたが、ある意味でこの発言は“ごもっとも”である。裏金の「ファクト」に基づく法改正の議論は確かに大事。本人は、野党の指摘が事実に基づかないものであると言いたげだったが、ひょうたんから駒である。
裏金の「ファクト」は明々白々だ。原資は、言わずもがなのパーティー券収入。購入者の大半は企業と業界団体である。事実上の「献金」であるパー券収入を通じた特定の企業・団体との癒着が、裏金事件の本質であり、「ファクト」だ。
この「ファクト」に基づけば、法改正を巡る与党案がいかにナンセンスかがよく分かる。パー券購入者の公開基準を引き下げたところで、政治資金パーティーそのものを禁じて原資を断たなければ、裏金づくりは根絶やしにはできない。要するに、自民党は悪しき伝統文化の温存に執着しているのである。
法の「抜け穴」づくりには積極的
だから、政治改革もやる気なし。伝統文化の“継承”のために、安倍派「5人衆」の面々と、お目付け役の森元首相が蠢いていたことも分かってきた。
月刊「文芸春秋」6月号のインタビューで、森は安倍派座長だった塩谷元文科相を人身御供にすべく動いた実態をゲロっていた。5人衆の総意を受けた森は、塩谷と面会し「ここはいったん議員辞職して次をねらったらどうかね。全責任を取るので仲間を救ってください、と申し出れば、君は立派だと光り輝くよ」などと迫ったそうだ。格好の身内を生け贄に差し出し、裏金文化の温存を画策。世耕の離党勧告に通底する手口で、やはり、森山のセリフには自民党の全てが詰まっている。
大手メディアは規正法改正案を巡る自民党の「消極姿勢」を批判しているが、むしろ彼らはヤル気満々だ。裏金文化を未来永劫残すためには、積極姿勢をムキ出しである。
「献金を通じて密接な関係を築いた企業・団体の利益のために政治を行うのが、自民党という政党の存在意義と言えます。だからこそ、事実上の企業・団体献金である政治資金パーティーの禁止には手を付けない。また、選挙の際のバラマキの原資になったと指摘される政策活動費についても、廃止してしまえば選挙での常勝が揺らいでしまう。企業・団体からの支持を失いかねません。すると、結果的に自分たちの存在意義がなくなるわけです。それが困るから、規正法改正案を巡る議論で、自民党は制度の抜け穴づくりに必死になっているのでしょう」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
こんな盗人集団に任せていたら、また同じ事件を起こすだけ。即刻、退場願うしかあるまい。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/352.html