※2024年3月9日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2024年3月9日 日刊ゲンダイ2面
「岸田降ろし?」「党内分裂?」 泥船が沈むのをただ待っている自民党
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/338674
2024/04/09 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
幕引きは望むべくもなし、逃げるように米国へ(岸田首相夫妻)/(C)共同通信社
自民党の裏金事件をめぐる党内処分で、岸田首相はますます男を下げた。全方位に禍根を残している。岸田派の元会計責任者も政治資金規正法違反の虚偽記載で有罪が確定したのに、会長の自分はおとがめナシ。立件を免れた現職では最多の3526万円の裏金をつくっていた二階俊博元幹事長についても、政界引退を表明して岸田に抜け道を与えた論功行賞で見逃した。弱き者や憎たらしいヤツには離党勧告し、再選を目指す9月の総裁選で敵に回したくない連中は総じてお目こぼし。公正もヘッタクレもありゃしない。
そのあたりは報道などを通じ、世間もお見通しだ。NHKの世論調査(5〜7日実施)では、裏金議員ら85人のうち、半数以下の39人しか処分されなかった大甘裁定に「どちらかといえば納得できない」が22%、「納得できない」が41%に上った。岸田と二階が無罪放免となったことについては、「妥当ではない」がそれぞれ61%、68%に達した。
当然、内閣支持率も下落。3月調査と比べ2ポイント減の23%に沈み、政権発足以降で最低だった昨年12月に並んだ。国民やメディアから総スカンを食う党内処分。幕引きは望むべくもないし、逃げるように米国へ向かった盤石ではない岸田が、「日米関係が盤石だということを確認したい。それを世界に発信する重要な機会になる」と意気込む姿はブラックジョークでしかない。
憲政史上最長政権を率い、米国隷従を徹底した安倍元首相に対する国賓級を超える国賓待遇だと持ち上げられているが、売国の見返りだ。2022年末の安保関連3文書の改定で防衛費を倍増させ、米国軍需産業にとってさらに太客となった。バイデン政権の要望通りに日韓関係を改善させ、日米韓の軍事的連携を深めた。そして、防衛装備移転三原則を骨抜きにする下地も整え、米国中心の西側軍事同盟にもいそいそと加わろうとしている。〈首相は得意の外交で支持率回復に努めたい考えとみられる〉(読売新聞8日付朝刊)などと解説されているが、保身第一で政権与党の腐敗を看過し、国を売りまくる亡国首相が浮揚する術はない。お花畑を満喫するのは、永田町を去ってからにしてほしい。
閣内「ポスト岸田」の静けさ
一方、あとの連中は何をやっているか。裏金づくりで最も悪質だった安倍派の座長の塩谷立元文科相は、離党勧告処分を決定した党紀委員会に「執行部の独裁的な党運営に断固として抗議する」などと怒りに震えた弁明書を提出し、再審査請求をチラつかせているが、支持する動きは広がらない。
諸悪の根源とも言える森喜朗元首相の覚えめでたい「5人衆」の萩生田光一前政調会長は、党の役職停止1年間でダメージはない上、政党支部の都連会長は続投だから無罪も同然だ。参院側の清風会会長として威張り散らしてきた世耕弘成前参院幹事長は、知らぬ存ぜぬを貫き通して離党に追い込まれたが、無所属になったのをいいことに鞍替えを画策。成功したら焼け太りである。転んでもただでは起きない厚顔無恥の面々に党内はイライラ。処分に文句タラタラのくせに、表立っては誰も動かない情けなさだ。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう指摘する。
「政治資金規正法改正が後半国会の焦点となることで、裏金事件への関心は徐々にしぼんでいく。岸田政権はそう踏んでいるのでしょう。平成の政治改革をめぐっても、自民党は『政治とカネ』の問題を選挙制度にすり替えて乗り切った成功体験がある。岸田首相が〈政治改革に向けた取り組みをご覧いただいた上で、最終的には国民、党員に判断してもらう〉などと発言したことから、通常国会が会期末を迎える6月解散シナリオがまたぞろ浮上していますが、世論の怒りはそう簡単には収まりません。首都圏の大半の選挙区、全国各地の1区では自民党に大逆風が吹き荒れている。衆院3補選(16日告示、28日投開票)で唯一の独自候補を擁立した島根1区を落とせば事実上の全敗で、お先真っ暗。かといって、ポスト岸田に意欲をみせる河野デジタル相や高市経済安保相は、閣内にいることを理由にほとんど発言しない。様子見する議員ばかりです」
「世論と結託」する絶好のチャンス
待望論にどう応える(石破茂元幹事長)/(C)日刊ゲンダイ
ここへきて待望論が高まっているのが、依然として国民人気の高い石破茂元幹事長だ。世論調査のいわゆる「次の首相にふさわしい人」の常連。月刊誌「ZAITEN」(3月号)の連載「佐高信の賛否両論」で、ホスト役を務める評論家の佐高信氏が、石破にこうハッパをかけていた。
〈私は『正言は反のごとし』という本で松村謙三さんと河野謙三さんのことを書きました。ご承知のように自民党の一部と野党が結託して河野さんが参議院議長になりました。当時、河野さんは野党と結託したと言われた。しかし、河野さんは「いや違う。自分は“世論と結託”したんだ」と言ったのです。石破さんが自民党の中で異端だと言われている中で、もう“世論との結託”をするしかないだろうと思います〉
〈そんなに時間は残されていないと思います。日本の時間も残されていないでしょう。自民党の時間はもっと残されていない。無責任にけしかけているわけではないですが、決起は必要です〉
こう畳みかけられても、石破は〈その“世論”が移ろいやすい、ということもありますが〉〈決起した時の挫折体験がすごいもので〉などと煮え切らない。
週刊誌「サンデー毎日」(4月14日号)は〈「政治とカネ」の闇を暴け!〉と題し、ジャーナリストの田原総一朗氏と青木理氏が石破と議論する座談会を企画。田原氏から「僕はあなたがいいと思うが支持者が少ない」「石破さんを野党から担ごうとする動きが出たらどうする?」などと水を向けられた石破は、「私は意外と自民党が好きなんです」とかわしていた。
政権交代か、またもや敵失か
自民党を割って出るかは横に置くとしても、このチャンスを逃せば石破は永遠に首相にはなれないゾ、という外野の声はそこかしこから聞こえてくる。散々ぱら「飛べない男」と揶揄された岸田は、今では羽が生えたように好き勝手している。もう一度だけ飛べないものか。
「石破氏にとって絶好のチャンス。党改革を強く訴え、党内や党員・党友をリードすれば、ポスト岸田レースで抜け出せる。河野氏や高市氏ができないことを今こそやるべきでしょう。安倍1強の恩恵で厳しい選挙を経験したことがない若手ほど浮足立っている。石破氏が覚悟を見せれば、勝ち馬に乗ろうとして雪崩を打つ展開は十分にあり得る」(角谷浩一氏=前出)
言うまでもなく、自民党は人材が決定的に枯渇している。「岸田おろし」のざわめきも、「党内分裂」の蠢きもない。泥舟が沈むのをただただ待っている。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「自民党内から岸田首相に取って代わろうという動きが出てこないのは、ある意味もっけの幸い。下手をすればもっと悪いヤツが出てきかねません。それほど自民党は劣化しています。こうした政治状況に至った要因は野党にもある。果たして国民の声を理解しているのか。衆院3補選では、自民党議員の逮捕者を2人も出した東京15区も注目選挙区です。野党系候補が乱立し、取りこぼしてしまう可能性がある。一本化して勝利を収めれば、政権交代のうねりをつくり出せるのに、何をやっているのか」
この流れで敵失なんてあり得ない。野党第1党の胆力が問われている。万年野党体質はもはや社会の敵だ。
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