※2024年2月27日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2024年2月27日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
国民不支持の政権が、軍拡化推し進め、ウクライナ舞台の代理戦争に全面加担で国を売る(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
自民党の裏金議員の弁明を聞く衆院政治倫理審査会の開催方式をめぐり、与野党が綱引きを続けている。28日から2日間の日程で開かれる予定だが、「原則通り全面非公開」で押し切ろうとする自民党と「全面公開」を求める野党が火花。自民党側は26日になって国会議員の傍聴に限って容認する譲歩案を提示したが、野党側が反発して折り合わなかった。
そりゃそうだ。26日の衆院予算委員会で岸田首相は、闇献金疑惑をめぐって1996年に加藤鉱一元幹事長を審査したケースを念頭に「完全非公開は長い歴史の中で1件しかない」とし、「国民に向けて説明する大変重要な場だ」と答弁していた。裏金議員の生弁明を国会議員だけしか聞けないのでは意味がない。国民から吸い上げた血税が原資でもある政治資金で裏金をつくり、脱税まで働いた疑いがあるのに、主権者への申し開きを避けるのは筋が通らない。
政治評論家の本澤二郎氏がこう指摘する。
「議会制民主主義では議事公開が原則です。にもかかわらず、政倫審は原則非公開という立て付けの上、嘘をついても罰則がない。裏金議員を引っ張り出したところで、言い逃れに終始するだけでしょう。偽証罪に問われる証人喚問でなければ真実には迫れない。政倫審の開催をめぐって駆け引きをしている間に、野党が交渉材料にしてきた来年度予算案の審議時間は積み上がり、採決の目安とされる70時間超は目前。なんだかんだで自民党のペースで進んでいます」
憲法の衆院優越規定により、予算案は参院送付から30日で自然成立する。3月2日がデッドラインで、自民党は前日の1日に衆院を通過させる構えだ。能登半島地震の復旧・復興費用なども盛り込んだ来年度予算案の成立が確実になれば、後は野となれ山となれ。裏金事件に頬かむりするのは目に見えている。
米国隷従の果ての兵器ロンダリング
もっとも、レームダックの岸田政権が抱える問題は「政治とカネ」にとどまらない。悪政の一面に過ぎない。首相を含む岸田派と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との癒着もくすぶり続けている。内閣支持率が下落する要因には事欠かず、国民は「早く辞めろ」の大合唱なのに、デクノボー首相はどこ吹く風だ。支持率1割台の国民から見捨てられている政権にもかかわらず、お墨付きを与えてくれる米国の歓心を買うために軍拡をどんどん推進。ウクライナを舞台とした代理戦争に全面加担する危うさをぷんぷんさせている。
予算案審議と同時並行、しかも急ピッチで進められているのが、防衛装備移転三原則の骨抜きだ。国際共同開発する防衛装備品の第三国輸出をめぐり、自公与党の協議が大詰めを迎えている。2月中に決着させるようハッパをかけているのは、他でもない岸田だ。なぜ急ぐのか。次期戦闘機の共同開発に向けた英国とイタリアとの3カ国協議が来月以降に本格化するため、それまでに第三国移転の方針が定まっていないと日本が不利になるというのである。現行ルールは開発相手国への移転しか認めていない。自公は昨年4月にルール緩和に関する実務者協議に着手し、7月には「容認」の方向で論点を整理したが、支持率が急落した11月あたりから政権の足元を見た公明党が慎重姿勢に転換。協議が停滞していた。この際、きっかけはどうであれ、「平和の党」の面目躍如は結構な話だ。
そうでなくても、岸田政権は昨年末に三原則の運用指針を見直し、殺傷能力のある武器輸出解禁に踏み切った。解禁第1弾は、ライセンス生産している地対空ミサイル「パトリオット」の米国への供与だ。新たな指針は殺傷能力のある武器について「現に戦闘が行われていると判断される国」を除外するとしているが、なし崩し。米国を通じ、武器・弾薬不足に苦しむウクライナへの間接供給が現実味を帯びている。事実上の兵器ロンダリングだ。一昨年末、防衛費倍増を書き込んだ安保関連3文書を閣議決定するにあたり、防衛省が必要量の6割しかパトリオットを確保できていないという試算を発表し、それを理由にしていたのは何だったのか。デタラメが浮き彫りである。
お手盛り有識者会議が「防衛費倍増」増額助言
第2次安倍政権が強行にまとめた安保法制で集団的自衛権の行使が容認され、この国は米国と一緒に戦争ができる国へと舵を切った。岸田政権の安保3文書は海洋進出を強める中国を口実に自衛隊の南西シフトも加速させている。台湾有事に備えた防衛拠点の構築などと解説されているが、実態は米軍と自衛隊の一体化だ。南西諸島に次々と自衛隊のミサイル部隊を配備し、将来的には敵基地攻撃能力を保有させる。危機にあって標的とされるのは火を見るよりも明らか。沖縄戦の悲劇を繰り返しかねないと反対する県民の声は無視されている。
「5年間で43兆円に積み上げた防衛予算に対し、政府お手盛りの有識者会議から早速物言いがついた。円安や物価高などを踏まえ、さらなる増額に向けた議論を促したのです。メンバーの母体は軍需企業がズラリで、元防衛次官や元駐米大使も名を連ねている。安倍政権の負の遺産をテコに、岸田政権が平和憲法をかなぐり捨てようとしているのは明白です。マイナンバーカードと保険証の一本化は、個人情報を集約して国民の管理を徹底するため。インボイス制度の導入は国民の財産を根こそぎ把握するため。異次元の少子化対策は戦前の『産めよ増やせよ』を想起させます。沿岸部に並び立つ原発にミサイルを1発でも撃ち込まれれば、日本は壊滅的な被害を受けるというのに、冗談じゃない。野党がボケッとしている間に、岸田政権は非常に危険な綱渡りをしているのです」(本澤二郎氏=前出)
国賓訪米でウクライナ支援肩代わり
日本の軍事大国化を歓迎するのは、言うまでもなく同盟国の米国だ。憲政史上最長政権を率い、米国隷従を徹底した安倍元首相に対する最高の接遇は国賓級だった。4月に予定される岸田訪米は国賓。仏印韓豪に続く5カ国目だという。何ら売り物がない岸田が外交での目くらましにシャカリキになっているのも危うさ満点だ。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「外交は派手で、やってる感を演出しやすい。昨年のG7広島サミットにウクライナのゼレンスキー大統領が電撃出席したことで支持率が上昇したように、一定程度の政権浮揚効果はある。ですが、この時期の訪米は間が悪い。新旧対決となる可能性が濃厚な大統領選はどう転ぶか分からない。ウクライナ支援に否定的なトランプ前大統領の影響下にある共和党は関連予算の成立を阻み、バイデン大統領を窮地に立たせている。岸田首相に肩代わりを求める可能性は大いにあるわけで、果たしてノーと言えるのか」
ここへきて、またぞろ電撃訪朝までが持ち上がっている。能登地震発生後、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が岸田宛てに「閣下」と敬称をつけた見舞い電報をよこし、妹の金与正副部長が「首相が平壌を訪問する日が来るかもしれない」とする談話を発表したのが秋波だというのだ。北朝鮮が解決済みと主張する拉致問題と核・ミサイル開発を横に置く前提付きなのだが、週刊現代(2月24日.3月2日合併号)によると、岸田は「訪朝できれば15%は支持率アップが期待できる。そうすれば秋の総裁選でも勝てる」と意欲満々だという。
明日にも倒れるか分からない政権と四つに組む指導者などいない。延命第一のスケベ心につけ込まれ、国を売る羽目になる。岸田に期待していいのは、一刻も早く退陣することだけだ。
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