※2024年2月21日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2024年2月21日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
不信任決議案に反対の「青票」を投じた岸田首相(左)、芝居がかった盛山正仁文科相の平身低頭(C)日刊ゲンダイ
「宏池会のプリンス」と持ち上げられたのも今は昔。内閣支持率の下がり方といい、嫌われ方といい、岸田首相は「サメの脳みそ」と揶揄される森元首相に似てきた。生理的嫌悪感、というやつである。自民党派閥の裏金事件しかり、岸田派(宏池会)にも蔓延する旧統一教会(世界平和統一家庭連合)とのズブズブの関係しかり。やることなすこと理屈が通らない。空っぽなのに権力欲は人一倍、保身に日々邁進。つるべ落としの支持率に引きずられ、自民党の政党支持率も低迷している。雨が降ろうが槍が降ろうが、自民党を支えてきた岩盤支持層が離れているということだ。このありさまでは、蛇蝎のごとく嫌われるのも時間の問題だろう。
旧統一教会との癒着ひた隠しで火ダルマになっている盛山文科相に対し、立憲民主党が単独提出した不信任決議案は、20日の衆院本会議で自公与党や日本維新の会などの反対多数で否決された。言うまでもなく、文科相は宗教行政を所管する組織のトップ。これほど不適格な閣僚はいないにもかかわらず、だ。
「関連団体の行事に一度だけ出席した」としてきた盛山をめぐる疑惑はこうだ。比例復活で5選した2021年の衆院選公示2日前、教団の関連団体「世界平和連合」が地元の神戸市で主催した国政報告会に出席。「推薦状」を受け取り、事実上の政策協定である「推薦確認書」に署名。旧統一教会信者でもある世界平和連合の会員10〜20人が支持者獲得を狙う「電話作戦」を担い、選挙支援を受けていたと報じられ、国会で野党から厳しく追及されている。
しかし、一度たりとも正面から応じることはなく、「はっきりした記憶はございません」↓「うすうす思い出してきた」↓「まったく記憶がございません!」と答弁を変遷させ、はぐらかし。盛山疑惑で先行する朝日新聞(20日付朝刊)によると、地元事務所宛てに教団の政治団体「国際勝共連合」が発行する月刊誌「世界思想」が長年無料で送付されていることも判明した。
女衒と大差ない倫理観
岸田は「過去の関係はともかく、現時点では当該団体(旧統一教会)と一切関係ない、これを前提に任命した」とそれらしいことを言っているが、問われているのは、この期に及んでもゴマカシ答弁を繰り返す盛山の破廉恥だ。本会議で立憲民主の菊田真紀子議員が「都合の悪い旧統一教会との関係を隠したまま大臣の座にとどまろうとする人物が、文科相としてふさわしいわけがない」と訴えたものの、数の力に及ばず。「旧教会関係者のほうから盛んに揺さぶりをかけてきている、わたくしの立場からするともてあそばれている」とヌカしていた盛山が否決後、ぶら下がり取材で言ったことには、「私はまったく恥ずべき行為はしていないと最初から申し上げておりました」。「恥」とは一体何なのか。分からなくなってくる。
ダウンタウンの松本人志の性加害疑惑をめぐり、女衒の役回りだったと報じられたスピードワゴンの小沢一敬が所属するホリプロコムは当初、「スピードワゴン小沢一敬はこれまで通り活動を続けてまいります。なぜならば、小沢の行動には何ら恥じる点がないからであります」とする声明を出し、芸能活動を継続。そこからわずか4日で活動自粛に追い込まれた。日頃は選良だと大きな顔をしている自民党議員と、いじめ芸で業界の頂点に上り詰めたお笑い芸人の腰ぎんちゃく。倫理観の欠如に大差がないことを思い知らされる。
関係を隠しシラを切る構図は同じ
そうして反日カルト集団にバッジをつけてもらった盛山は続投。岸田は「盛山大臣のもとで(旧統一教会に対する)解散命令請求の手続きを行い、過料請求と解散命令請求の2つの手続きを進めてもらっている。引き続き解散と被害者救済に向けて責任を果たしてもらいたい」とも言っていたが、自身の説明責任すら果たせない人間に、ましてやカルトとベッタリの人間に、救済の任など果たせるものか。どちらを向いているか分かったもんじゃない。数多の被害者をナメるにも程がある。
法大大学院教授の白鳥浩氏(現代政治分析)はこう指摘する。
「再燃した旧統一教会との癒着、裏金事件が引き金となった『政治とカネ』。岸田政権は2つの大きな問題を抱えています。ここへきて岸田首相の身内に対する甘さや緩さが際立っているように見えますが、つまるところは問題人物を弾よけにしているだけ。岸田首相は教団との関わりについて『知る限り関係はない』とし、閣僚や自民党国会議員に点検や説明、関係の見直しを求める立場でした。ところが、政調会長時代に党本部で関連団体幹部と面会するなど、関わりを裏付けるような報道が相次いでいる。山際経済再生相を更迭したのに、盛山文科相を続投させるのは、守り通さなければ次に矢面に立たされるのが自分だからです。関係を隠し、シラを切っている構図はまったく同じ。延命のためにはなりふり構っていられないのでしょう」
反日カルト集団から選挙支援を受けていたくせに、イケシャーシャーと文科相として初入閣し、「記憶にない」とゴマカす鉄面皮をかばうダブルスタンダードのご都合主義。
岸田は錯乱しているわけではなく、マトモな判断力を最初から持ち合わせていないのだ。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「盛山文科相が旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取っていたと報じられたのは今月6日。官邸は当初、裏金事件から世間の目をそらせる材料になると踏んでいたようです。そうこうしているうちに林官房長官をめぐる疑惑も浮上し、岸田首相についても蒸し返された。盛山文科相の迷走答弁もやり過ぎた。その結果、否決したとはいえ、不信任案提出を招き、来年度予算案の審議日程はより窮屈になった。年度内の自然成立が確定する3月2日までに衆院を通過できるかどうか」
他人の犠牲は厭わない
与野党攻防の主戦場は、衆院政治倫理審査会(政倫審)の開催に移っている。野党は自民党の裏金議員82人のうち、衆院側51人全員の出席を要求。本丸は安倍派幹部の5人衆や二階派領袖の二階元幹事長らだが、人選を進める自民党側は「まったく悪びれていない二階さんは何を言い出すか分からない」(中堅議員)ため、国会議員最高齢の85歳となったことなどを理由に見送り。代わりに事務総長の武田良太元総務相と、安倍派から座長の塩谷立元文科相が出席すると野党側に伝達。5人衆の西村前経産相が出席意向だとも報じられている。
「裏金事件の追及で一枚岩になった野党は、不信任案への対応をめぐって再びバラバラになった。もう一度結束しなければ、自民党の思うツボです。裏金事件では、岸田派の元会計責任者の有罪が確定している。派閥会長だった岸田首相も当事者なのです。政倫審に二階元幹事長を出席させないのは、盛山文科相を弾よけにしたのと同じ理屈。自分に火の粉が降りかからないようにするためです。派閥を表向き解消したことで総裁権限が強まって焼け太り。野党は相変わらずの多弱で独り勝ち。だから国民の怒りはどこ吹く風なのです。自分を生かすためには他人の犠牲を厭わないリーダーを担いだままでいいのか、よくよく考える時です」(白鳥浩氏=前出)
岸田政権の末期症状は前代未聞の終わり方を予感させる。
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