※2024年1月29日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2024年1月29日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
派閥に頼って来たのに格好つけ(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
自民党がドロドロに溶け始めている。
派閥の裏金事件で、19日に東京地検特捜部が安倍派の会計責任者と二階派の元会計責任者を政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で在宅起訴。それまでノーマークだった岸田派も元会計責任者が略式起訴され、岸田首相が唐突に岸田派の解散を宣言したことで、次々と自民党の派閥が解散に追い込まれた。
岸田派、二階派、安倍派に続き、裏金事件で立件されなかった森山派も25日の総会で解散を決定。党の政治刷新本部が25日に取りまとめた中間報告には、派閥の解消は盛り込まれなかったが、党改革に向けた取り組みや党内議論を踏まえ、派閥の存在自体が国民理解を得られにくいと判断したという。
これで党内6派閥のうち4派閥が解散。さらには、派閥ではない有隣会(谷垣グループ)や、菅前首相の取り巻きグループ「ガネーシャの会」まで解散する意向を打ち出した。こうなると、存続を表明している茂木派と麻生派への解散圧力は高まるばかりだ。
茂木幹事長が率いる茂木派は退会が相次いでいる。口火を切ったのが小渕優子選対委員長で、関口昌一参院議員会長ら参院幹部3人と、「参院のドン」と呼ばれた故・青木幹雄元官房長官の長男である青木一彦参院議員が続いた。
「総理総裁を狙う茂木会長にとって派閥は命綱ですから、解散は避けたいでしょうが、経世会からのよりどころである竹下・小渕・青木の血脈を失った平成研(茂木派)は、もはや抜け殻です。形だけ維持しても結束力を保つことは難しい。足元がグラグラの茂木会長は、ますます麻生副総裁に依存し、派閥存続派の麻生さんに気を使って派閥を維持しようとするでしょうが、付いていく議員が何人いるでしょうか」(茂木派関係者)
岸田首相の派閥解散は「自爆テロ」
茂木派は30日にも会合を開いて今後について協議する。派閥事務所を閉鎖し、「政策集団」として存続するプランが有力視されているというが、政策集団に看板をかけ替えたところで、メンバーの退会は今後も続きそうだ。トップに人望がないとこうなる。ベテランの船田元・元経企庁長官も、茂木派が存続するなら「退会する」と明言している。
残る麻生派も、いつまでも派閥にしがみついていられなくなる。党内の大半が無派閥ということになれば、「俺らは派閥だ」と言い張ったところで「だから何?」という話だ。そもそも親分の麻生太郎の資金力と政権への影響力でもっているだけで、麻生が引退した途端に瓦解する。
「自民党内には、急に派閥解散を言い出した岸田首相を苦々しく思っている人もいる。これまで派閥に頼り、支えられてきた岸田首相が不意打ちのように派閥解散を決めたのは、自分だけが『ええかっこしい』で国民世論にアピールする狙いに見えるからです。党内では“自爆テロ”とも言われている。総裁選再選が念頭にあるのでしょうが、自分の権力を維持するために、場当たり的に派閥解散をブチ上げたものの、党内に敵を増やし、国民からも派閥解散はたいして支持されていない。今後も苦しい政権運営が続きます」(政治評論家・野上忠興氏)
日経新聞とテレビ東京が26〜28日に実施した1月の世論調査で、岸田内閣の支持率は前回12月調査から1ポイント増の27%と、ほぼ横ばいだった。派閥の解散については、59%が「評価する」と答えたが、支持率にはほとんどプラス効果がなかった。
地方議員から「岸田NO」の声が上がる可能性
国民からみれば、派閥は解散しないよりは解散した方がいいだろうが、それは「政治とカネ」の問題を解決する本質ではないと気づいている。裏金問題を派閥の話にスリ替えているようにしか見えないのだ。派閥解散は、自民党内の政局的な駆け引きに過ぎない。それが見えるから、ますます政治不信が進む。
きょう、衆参両院の予算委員会で「政治とカネ」の問題について集中審議が行われる。首相の施政方針演説より先に予算委が開かれるのは異例だが、それだけ今回の「政治とカネ」は重大な問題なのである。
自民党派閥の裏金は何に使われたのか。誰がいくら手にしていたのか。表に出せないカネが、もし選挙買収に使われていたら、政権党の正当性を揺るがす。民主主義の根幹である選挙が裏金で歪められていた可能性があるのだ。
立憲民主党の泉代表は「岸田首相は当事者で、自ら責任をとらなければならない。内閣総辞職ものだ」と批判。立憲の安住国対委員長も「裏金に何人関わったか聞かれて(首相が)『分からない』と言ったら質疑できない。真相を解明する責任が首相にある」と指摘。その通りだ。派閥解散でウヤムヤにされては困る。
ケタ違いの裏金をつくっていた安倍派では、地検の捜査が終結した後になって、2018年からの5年間で萩生田前政調会長が2700万円超、山谷えり子元国家公安委員長が2400万円超、堀井学衆院議員が約2200万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにした。もう訴追されることはないと安心して公表したのだろうが、安倍派で裏金に関わっていない議員がいるのか?
安倍派は派閥の政治資金収支報告書の訂正を29日に予定していたが、事務処理が間に合わず31日に延期するという。まさか、集中審議での追及を避けるためではないだろうが、全容を明らかにしない点では他の派閥も同罪だ。
まずは裏金の全容を明らかにすべし
「裏金の全容が明らかにならなければ、政治改革の議論もできません。岸田首相は自民党総裁として、派閥解散よりも先に全議員の裏金の有無を調査して公にし、相応の処分を下す必要があったのではないか。派閥が裏金づくりの温床になっていたのは確かですが、安易な派閥解消は、その場しのぎでしかありません。誰がいくらもらっていたかハッキリしないまま、問題にフタをしようとしているだけです。派閥を解消して、どうやって政権運営をしていくのかも見えない。混沌としています」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
派閥を介在し、カネとポストで結びついていたのが自民党政治だ。派閥が解散すれば、馬糞の川流れ。これまでは派閥のボスが話をつければ何とかなったが、党内の意見集約も難しくなる。皆が好き勝手言って収拾がつかないカオス状態が続く。それで岸田は長丁場の通常国会を乗り切れるのか。
「カネとポストを一元化すれば、官邸1強で求心力が高まると思っているのかもしれませんが、そもそも岸田首相が国民から支持されていない。全国の津々浦々まで自民不信、岸田不信は広がっています。まずは3月17日の自民党大会で、地方議員から『岸田NO』の狼煙が上がる可能性がある。無派閥議員が大半を占める党内では、それを収める術がない。派閥解散で烏合の衆になった自民党議員はガバナンスが利きません。派閥政治に代わる統治のあり方が見えない中で、4月の補選で惨敗すれば岸田退陣説が加速するでしょう。派閥解散など小手先の策を講じたところで、国民の信を得ていない政権が続くわけがないのです」(野上忠興氏=前出)
岸田政権がいつまでもつかではなく、自分の保身延命しか考えていない政権をこれ以上長くもたせてはいけない。岸田政権で一般庶民に何かいいことがあったか? 生活が苦しくなっただけだ。民主主義を揺るがす裏金事件もヘラヘラ笑ってやり過ごそうとする岸田が退陣することが、政治改革の第一歩だ。
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