※2024年1月25日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2024年1月25日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
自民党首相一任「政治刷新」は体裁づけの抜け穴だらけ(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
「わが党として改めて襟を正さなければいけない。真剣に受け止めなければいけない」
24日の衆院予算委の閉会中審査。自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件について問われた岸田首相は、やや表情をこわばらせながらこう答弁。発言を受け、野党席からは「無理だよ」「解決していないよ」といったヤジが飛び交っていたが、無理もない話だろう。
岸田がどんな美辞麗句を並べて取り繕おうとも、自民党の「政治刷新本部」が23日了承した政治改革に向けた中間報告を見る限り、この党には自浄作用がないことがハッキリしたからだ。
政治刷新という看板のもとに本部長の岸田一任で急いだ報告の中身は抜け穴だらけ。
焦点だった派閥の全廃には踏み込まず、政治資金パーティーの開催禁止や夏と冬に活動資金として議員に配っていた「氷代」と「餅代」の廃止を明記しただけ。そのうえで、「(カネや人事の)イメージが染みつく派閥から脱却し、本来の政策集団に生まれ変わらねばならない」などと当たり前のことをエラソーに書いていたから唖然呆然ではないか。
閣僚人事などで推薦名簿提出などの働き掛けも行わない──と、党のガバナンスコード(統治指針)に記すともあったが、仮にルール違反をしても罰則規定はないから実効性は全く期待できないと言っていい。
世論批判をかわすための、その場しのぎの発想
「派閥はなくなるのか存続するのか。今までと何が変わるのか、よく分からない」(石破元幹事長)
「派閥解消と言っても、看板を書き換えて残るのでは意味がないとの声がある」(小泉元環境相)
そもそも、すでに党内から疑問の声が上がっている中間報告の一体、どこが「政治刷新」といえるのか。
<所属議員への「氷代・餅代」の支給禁止に関しても、党内には「花代にすればいい」(幹部)とうそぶく声があり、抜け道を探る動きが出そうだ>
24日付の読売新聞はこう報じていたが、これが事実であれば自民党議員の多くが中間報告に対して「意味なし」と思っている上、ハナから守ろうという気はないということ。ズバリの皮肉だ。
おそらく、今の自民党議員の頭にあるのは、いかに今回の裏金事件の論点をすり替え、小手先の改善策で世論をゴマカし、ほとぼりが冷めるのを待つか、ということだけ。
不祥事が起きるたびに繰り返し見せられてきた常套手段であり、今回も政治刷新というシュールな喜劇を国民が見せつけられているわけだ。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう言う。
「岸田政権が本気で政治とカネの問題に取り組むのであれば、中間とはいえ、たった2、3週間で報告をまとめられるはずがありません。過去にも繰り返されてきた問題でもあり、原因や背景をきちんと調査、分析した上で対策を立てる必要があるのです。世論批判をかわすためのその場しのぎの発想しかないため、抜け穴だらけのような案が出てくるのです」
岸田が叫ぶ政治刷新は国民に対する特殊詐欺
「大臣になるほどのカネを集めようと思った」
自民党の最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)のパーティー収入からキックバックされた4000万円超を政治資金収支報告書に記載せず、政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、辞職を表明した谷川衆院議員(長崎3区)はこう言っていたが、なるほど、自民党では裏金を集める力の多寡で役職が決まっていたということ。
どうりでパーティー券を大量に買ってくれる大企業などを優先し、庶民のことなど少しも考えない棄民政策が次々と出てくるわけだ。
驚くのは、谷川が会見で、こういう非常識な発言を臆面もなく答えていたことだ。正直者がバカを見るというより、バカが正直に本音を明かしたとも言えるのだが、言い換えれば裏金づくりに手を染めていたことを悪いと思っていなかったと白状したに等しいわけで、そんな盗人たちが政治刷新などと言い、ルール改定を話し合い、それを大メディアが大マジメに実況する茶番劇を見ていると、その倒錯に頭がおかしくなりそうだ。
これまで裏金についてダンマリを決め込んでいた別の安倍派の議員は、自分が逮捕、起訴される可能性がないと分かった途端、次々と自身のキックバックを明かし、「秘書に任せていた」などと釈明。これまたシレッと政治刷新を叫んでいるが、自分の手足となって汗を流してくれた秘書を“生贄”のごとく差し出すような政治家を信用できるはずもない。
繰り返すが、そんな連中が国家、国民のための政治刷新などを本気で考えるわけがないのだ。
群れの中で自分を守りたい小心者の岸田
それにしても、グダグダな「中間報告」から、あらためて分かったのは岸田のリーダーシップのなさだ。「派閥ありきの自民党から完全に脱却する。いわゆる派閥を解消する」「党再生に向けての第一歩だ。私自身が先頭に立って実行する」なんて結局、口先だけ。
岸田は党総裁なのだから、派閥についても「いわゆる解消」などとモゴモゴ言っていないで、「一切禁止だ」と党内所属の議員に対して明言すればいい。それなのに、あっちの顔色、こっちの顔色をうかがい、何も決められないのだ。
「(裏金事件の)政治責任について結論を得る」「政治資金の透明化に向けた取り組みとして、政治資金の銀行振り込みや収支報告書のオンライン提出を進める」「会計責任者が逮捕・起訴された議員を処分できるよう、党則を改正する」……なんて至極当然の内容で、これで「党再生の第一歩」なんてよくぞ言えたものだ。
論語に「群而不党」(優れた人物は徒党を組まない)との言葉があるが、岸田は正反対。小心者で器が小さいから、群れの中で自分を守りたがる。一政党の意見の取りまとめすらできないで、国のかじ取りを任せられるわけがない。そんな男が首相でいること自体が、まさに国民にとって不幸としか言いようがない。
安倍元首相の国葬、5年間で43兆円の防衛費増額、原発再稼働、異次元の少子化対策、税収増による減税……など、いずれも単なる思い付きとしか見えない愚策が次々と打ち出されたのも、すべては自分を守るため。首相の椅子に座り続けることを最優先で考えてきたからなのではないか。
政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「派閥解消など最初からできるはずもない。それなのに岸田首相は国民ウケを狙って風呂敷を広げた。今回の裏金問題は、自民党の長期政権に伴う緩み、おごりが出てきたのであり、その傲慢な姿勢に国民が怒っているということを岸田政権はいまだに理解していない。それでいて政治刷新などと言っているのですから、ある意味、国民に対する特殊詐欺のようです」
この期に及んでも国民を欺く自民党。有権者は選挙で鉄槌を食らわせるべきだ。
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