台湾総統選選挙の結果を読み解く 台湾有事が遠のいたのは日本にとって幸い 日本外交と政治の正体
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2024/01/18 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
台湾総統選は与党・民進党の頼清徳氏が勝利するも過半数割れの40%だった(C)共同通信社
2024年の国際情勢は、@ウクライナ戦争が終結に向けて動くかAガザ戦争が中東の他地域に拡大するのかB台湾を巡り、軍事的紛争が発生するか──が最も懸念される要素である。
台湾を巡っては、1月13日に実施された総統選挙及び議会・立法院の選挙が今後の動静を左右する要因として注目された。
総統選挙では、与党・民進党から今の副総統の頼清徳氏、最大野党・国民党から新北市長の侯友宜氏、野党第2党・民衆党から前の台北市長の柯文哲氏が立候補した。このうち、頼清徳氏は台湾の独立を志向し、侯友宜氏と柯文哲氏が中国との協調を主張した。
結果は頼清徳氏が40%、侯友宜氏が33%、柯文哲氏が26%を獲得し、頼清徳氏が勝利した。ただ、候補者が3人だったこともあり、頼清徳氏の獲得は過半数に達していない。
問題は立法院である。立法院の選挙では、113議席のうち、国民党が52議席、民進党が51議席、民衆党が8議席を獲得した。民進党は改選前より、11議席減らして過半数を維持できなかった。
頼氏は米国からの武器購入で中国に対抗する態勢をつくることを意図していた。そのためには、立法院で法案や予算案の可決に必要な過半数を獲得しなければならない。
民進党が議会で少数与党政権へ転落したことで、軍事的に中国に対抗する態勢を取ることは困難になった。立法院で中国との関係改善を望む勢力が優位に立つ中、独立への動きは難しくなる。
今回の選挙における中国の反応を見ると、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は、頼清徳氏の得票率が40%だったことや、議会にあたる立法院の選挙で民進党が過半数を維持できなかったことを背景に、「台湾地区の2つの選挙結果は民進党が決して主流となっている民意を代表できないことを示している」とした。
中国もまた、独立に向けての動きは沈静化するとみている。
台湾が独立の動きをしなければ、中国がこの時期、軍事行動に出る可能性は低い。これまでも陰に陽に台湾の独立を支援してきた米国に関しては、バイデン大統領は選挙結果を踏まえ、「われわれは台湾の独立を支持しない」と述べている。
台湾総統選挙で、台湾有事が少し遠のいたことは、日本にとって幸いである。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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