※2023年12月14日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2023年12月14日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
求心力を完全喪失、人事もできない力量露呈の内向き他人事首相(昨13日、記者会見をする岸田首相)/(C)JMPA
第212臨時国会が13日、閉幕した。
10月20日に召集された今国会では、物価高への対応などを柱とする2023年度補正予算が成立。自民、公明、国民民主3党が提出した、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済に向けた特例法案と、国立大学法人法改正案も成立した。
自民党最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)の政治資金パーティー収入をめぐる裏金疑惑を踏まえ、立憲民主党は岸田内閣の不信任決議案を衆院に提出。本会議の採決で、日本維新の会や共産、国民民主、れいわ新選組、社民は賛成したものの、与党の反対多数で否決された。
「政治とカネ、自民党の派閥政治の根幹が問われている」「(岸田政権は)政治的にはずっと前から不信任だ」
不信任決議案の提出前、立憲の安住国対委員長はこう憤りをあらわにしていた自民党の裏金疑惑だが、13日夜の岸田首相の会見は驚くべきものだった。
「党全体として強い危機感を持って一致結束した対応を図る」「政治の信頼回復に向け自民党の体質を一新すべく先頭に立って戦う」「国民から疑念を持たれる事態を招いていることは極めて遺憾だ」と言うばかりで、まるで他人事だったからだ。
「令和のリクルート事件」「安倍派パー券疑獄」などと呼ばれる問題を受け、岸田は当初、同派所属の松野官房長官、西村経産相、鈴木総務相、宮下農相のほか、5人の副大臣と6人の政務官の計15人を交代させる方針を固めたはず、だった。
ところが、その後、「全員交代を求めることはできない」「疑惑への関わりを精査する。検察に立件される可能性が高いなら代える」などとトーンダウンしたからワケが分からない。
物事について判断も決断もできないのが岸田
「安倍派一掃」「安倍派斬り」の方針に対し、同派閥所属の議員から反対論が噴出。反発が強まれば逆に「政権が揺らぎかねない」と懸念したのだろう。そのため進退を「自主判断」させる案が浮上。これを受け、同派幹部の萩生田政調会長や世耕参院幹事長が辞任する見通しとなったわけだが、人事は本来、「総理総裁の専権事項」。それが、ちょっと反対の声が出たからといって右往左往するのは、ホント情けないし、みっともない。
もともと、求心力に乏しい男とはいえ、ますますダダ下がりになるのは確実だ。岸田は13日、首相官邸で内閣不信任案への対応について問われた際、「信じるところに従って粛々と対応すべく、与党と相談してまいります」とか言っていたが、この返答もヘタレぶりをよく表している。「信じるところに従って粛々と対応」するのであれば「俺はこうする。腹はもう決まっている」という意味だ。それでいて「与党と相談」とは一体何なのか。てんで意味不明だ。詰まるところ、決断力も信念もない「無定見」だと自ら白状しているに等しいだろう。
税収増の還元策をめぐっても、その方針が「給付」「減税」と二転三転し、「異次元の少子化対策」でも場当たり対応。挙げ句、人事もできないことを露呈したわけで、政権としては末期症状。支離滅裂政権の断末魔の叫び声が聞こえてくるようではないか。
元参院議員の平野貞夫氏はこう言う。
「物事について判断できない、決断できないという岸田首相の性格、政治姿勢が国民もよく分かったでしょう。全てが人の言いなりで、首相にふさわしくないのは言うまでもありません。パー券疑惑に対して“潔白”だと自信があるなら、佐藤内閣のように解散(1966年12月の黒い霧解散)すればいいのに、それもせず、適切に対応などと言うばかり。岸田首相、自民党の終わりの始まりが近いと思います」
カネ集めを政治と勘違いして罪とも思わない「安倍派強盗団」
ハッキリしたのは岸田も自民党にも保身しか頭にないことだ。
安倍派の政治資金パーティーをめぐる裏金は判明しているだけでも、5億円超などと報じられている。他の派閥と比べて規模も金額も桁違いで、政治資金収支報告書に記載しなかっただけ、という単なる形式犯では済まされないのは言うまでもない。
複数年にわたって裏金をプールし、派閥議員に渡していたというのだから当然、脱税の疑いが出てくる。それが「組織的」「常習的」に行われていたのだから、暴力団などの反社会的集団と変わらない。「週刊ポスト」(小学館・22日号)は、一連の問題について「安倍派強盗団」と大見出しで報じていたが、まさに今、憲政史上空前の混乱を迎えているわけだ。
岸田は人事について、「検察に立件される可能性が高いなら代える」などと能天気に言っているようだが、立件されなければOKというものではない。強盗や半グレが「逮捕されなければ何をやっても構わない」と言っているようなもので、これが許されるなら「自民党」は党名を「悪党」に変えるべきではないのか。
「アベ政治を許さない」というスローガンを思い出せ
とりわけ渦中の安倍派所属の議員に至っては、まさに救い難い。「安倍派というだけで罪人扱いか」「安倍派を狙い撃ちするのか」などと怒りの声を上げ、“被害者ヅラ”しているらしいが、冗談ではないだろう。
森友学園や加計学園の問題、「桜を見る会」前夜祭をめぐる公選法、政治資金規正法違反の疑い、明らかになった旧統一教会とズブズブの関係……。
国民はこれまで「安倍派」の傲慢な政治姿勢、悪行に散々、苦しめられ、我慢を強いられてきたのだ。それだけでも罪は重い。「アベ政治を許さない」というスローガンを忘れたわけじゃないだろう。「俺は裏金を受け取っていないから悪くない」と言いたいのだろうが、見て見ぬふりをしていただけ。強盗団のメンバーが「俺の役目は見張り番で、実行犯じゃない」と言い訳しているのと同じだ。
そもそも問題発覚以降、安倍派の所属議員は「事実関係を慎重に調査」「もう一度慎重に精査」と繰り返していたが、一体どれだけ時間がかかっているのか。自分の政治資金や裏金の把握もできない国会議員が、国家予算を扱えるはずがない。自ら進んで悪事に手を染めながら、「党として強い危機感」などと叫んでいるのだから支離滅裂。「信頼回復」も何も、心ある国民は最初から信頼していないのだ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「岸田首相はこの期に及んで一体誰の顔を見て政治をしているのか。捉え方によっては、今は、岸田首相にとって好機とも言える。安倍派議員らに遠慮して進めてきた軍拡などのタカ派政策を一転させられるからです。それなのに、いまだに安倍派の顔色をうかがっているのだからどうしようもない。政治的な判断ができず、リーダーシップもない。このまま総理の座に居続けていたら、国民が不幸になるだけです」
カネ集めを政治と勘違いし、それを罪と認識しないほど堕落した腐敗集団が自民党。さながら発展途上国並みの政治空白が続けば、国民生活に重大な影響が出るのは間違いない。
http://www.asyura2.com/23/senkyo292/msg/641.html