※2023年12月1日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2023年12月1日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
なぜ、即時停止を求めないのか(オスプレイ墜落事故について記者の質問に応じる岸田首相)/(C)共同通信社
オスプレイの墜落事故は、起こるべくして起きた事故だったのではないか。欠陥を抱えていることは、ハナから分かっていたからだ。
29日午後、鹿児島県・屋久島沖に墜落した米空軍輸送機オスプレイは、左のエンジンから火を噴き、真っ逆さまに墜落したという。まだ事故の原因は判明していないが、開発段階から墜落事故が相次ぎ「未亡人製造機」と呼ばれてきたのがオスプレイである。
プロペラを上に向けるとヘリのようになり、前に傾けると固定翼機のように高速で飛べる極めて特殊な構造となっている。だからか、開発段階から57人の米兵が命を落としている。
昨年6月にもアメリカで海兵隊の機体が墜落し、乗組員5人が死亡。日本国内でも危険を未然に防ぐための「予防着陸」が頻発している。これまで自民党政権は「オスプレイは安全だ」と説明し、事故が多いのは「操縦が難しいからだ」という解説もあったが、ここまで事故が相次ぐのは、オスプレイには構造的な欠陥があると考えるのが自然なのではないか。防衛ジャーナリストの半田滋氏はこう言う。
「昨年6月、アメリカで起きた墜落事故の原因について、米海兵隊は『エンジンとプロペラをつなぐクラッチの不具合』だったと発表しています。米国防総省国防研究所の元主任分析官も、『連結クラッチの設計に欠陥があった』としています。ただ、今回の墜落事故は、エンジンから出火しているので、クラッチの不具合ではないでしょう。
気になるのは今年8月、陸上自衛隊のオスプレイが静岡で予防着陸した時、エンジンを覆っているカバーとエンジンの間から金属片が見つかったことです。もし、金属片がエンジンにぶつかりつづけたら、エンジンから火を噴いてもおかしくなかった。オスプレイは、重い機体を小さなプロペラで浮揚させる必要があるため、想定以上の負荷がかかっている恐れがある。事故につながる要因が、複数ある可能性があるということです」
いま日本国内には、44機のオスプレイが配備されている。米軍横田基地に6機、米軍普天間基地に24機、陸自の木更津駐屯地には14機(最終的には17機)。
しかし、世界中でオスプレイを購入しているのは、アメリカと日本だけだ。どの国も兵士と国民の生命と安全を最優先し、欠陥機の購入は控えているのが実情である。アメリカでも陸軍はオスプレイを採用していない。
なのに、アメリカ追従の日本政府は、3600億円もアメリカに払って、欠陥機を17機も買っているのだから異常だ。
飛行停止を求めたのは事故翌日
いつ墜落してもおかしくない欠陥機が、44機も日本の上空を飛んでいるのだから、これほど恐ろしいことはないのではないか。いますぐ岸田政権は、米軍保有の30機を日本から撤去させ、日本が購入した17機についても、購入代金3600億円を返還させたうえで、アメリカに引き取ってもらうべきだろう。さもないと、日本国民は安心して暮らせない。
ところが、岸田首相は、事故があった当日夜、記者団からオスプレイの飛行停止をアメリカに求めるのかと聞かれて、「事故の実態を確認し、なにが必要か、なにが求められるかを検討した上で考えるべき課題だ」と、答えているのだから信じられない。
なぜ、即座に飛行停止を求めなかったのか。岸田政権がアメリカに飛行停止を求めたのは、事故から一夜あけた、30日の午前中である。アメリカに対して腰が引け、強く要求できなかったのは明らかだ。
そのため米軍は、事故の後、30日の朝7時まで、分かっているだけでも、14回もオスプレイを飛ばしつづけていた。いったい岸田政権は、日本国民の安全と、アメリカの都合のどちらが大事なのか。
「アメリカに対する岸田政権の対応を象徴していたのが、オスプレイの墜落を、当初『不時着水』と言いつづけ、あとから『墜落』に修正した一件です。その理由について木原防衛大臣は、『本日(30日)になって、アメリカ側から“墜落”という説明があった。29日はアメリカ側からは“不時着水”という説明があった』と、平然と答えている。誰が見たって、オスプレイは墜落でしょう。岸田政権には、アメリカに追随しているだけで、国家として自立した考えがないのでしょう」(半田滋氏=前出)
さすがに、ここまで情けない政権は、過去なかったのではないか。岸田外交は一事が万事、すべてこの調子だ。相も変わらぬアメリカ追従である。
もともと、GDP比1%だった防衛費の倍増を決めたのも、アメリカが日本を含む同盟国に対し「GDP比2%に増やしてほしい」と要請したからだ。防衛費を今後5年間で43兆円に増やす方針だって「数字ありき」である。計画策定時より円安が進んでいるのだから、本来、より多くの予算が必要になるはずなのに、岸田政権は「43兆円」の枠を変えていない。アメリカに増額を求められたから、金額だけ先に決めたのがミエミエである。
昨年末には、アメリカの要請に従って「安保関連3文書」を改定し、アメリカ製の“旧式ミサイル”トマホークの爆買いまで決めてしまった。
他国のシタタカ外交を見習え
オスプレイ事故の一件でも分かる通り、岸田政権はアメリカに従ってさえいれば、何とかなると思っているのだろう。しかし、いつまでもアメリカ一辺倒をつづけていては、日本は国益を損なうだけだ。
国力が低下したアメリカは、もはや「世界の警察官」ではなくなっている。いまどきアメリカにベッタリなのは世界で日本くらいのものだ。
国際社会ではどの国もシタタカな外交を展開している。フランスのマクロン大統領は、米中対立の火種になっている台湾問題について「欧州は米中に追従すべきではない」と発言。双方から独立した戦略を追求すべきだと訴えていた。東南アジア諸国だってアメリカと中国を天秤にかけ、どちらからも利を得ようとしている。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「本来、日本はもっと優位な立場でアメリカと交渉できるはずです。国力が低下しているアメリカは、ロシア、中国、中東と3正面での対応を迫られて余裕がなく、日本に協力を求めなければならない立場だからです。日本がアメリカの肩代わりをするために防衛力を強化するというなら、“不平等条約”の日米地位協定の見直しだって求められるはずです。
にもかかわらず、岸田首相はアメリカに対して要求ひとつできない。なぜ、オスプレイの飛行停止を即座に求めなかったのか。その一方、アメリカと一緒になって中国に拳を振り上げている。隣国であり、経済的なつながりが強いのだから、アメリカとは違う立場で中国と向き合うべきでしょう。岸田首相は冷戦時代の発想から抜け切れていないのではないか。考え方が古すぎます」
欠陥機のオスプレイの即時停止も求められない岸田政権がつづいても、百害あって一利なしだ。即刻、退場してもらう他あるまい。
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