※2023年11月22日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2023年11月22日 日刊ゲンダイ2面
※2023年11月21日 朝日新聞2面 時時刻刻 抜粋
※文字起こし
支持率が急落、過去最低を更新中(C)日刊ゲンダイ
さすがに自民党の重鎮も「底が抜けた感じがする。異常な数値だ」と驚きを隠せなかったそうだ。ただでさえ低迷していた岸田内閣の支持率が、また急落している。
朝日新聞の最新の調査によると、岸田内閣の「支持率」は25%。同じく毎日の調査も21%、読売も24%だった。
いずれも“危険水域”の20%台に突入し、過去最低を更新している。このままでは10%台突入も時間の問題なのではないか。自民党の重鎮が驚いたように、完全に底が抜けた状態だ。
しかし、首相本人にスキャンダルや不祥事があったわけでもないのに、ここまで支持率が下落するのは珍しいのではないか。
驚くのは、岸田首相の嫌われっぷりだ。「支持しない」が異常に高いのだ。朝日65%、毎日74%、読売62%となっている。日本人の場合、世論調査に「支持しない」と答えるのはよほどのことだ。強い意思の表れなのだろう。「その他」や「答えない」が少ないのだ。朝日新聞の調査では、「首相を信頼できない」も67%に達している。
首相肝いりの「減税」も、その狙いが国民に見透かされている。「減税は国民の生活を考えたからか、それとも政権の人気取りを考えたからか」との朝日新聞の問いに対し、76%が「人気取り」と答えているのだ。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「国民はよく見ていると思います。恐らく、岸田首相のことを、口先だけ、中身がないと思っているのだと思います。いまだに一国の総理として、何をやりたいのかを示さない。たとえ中身が空っぽでも国民に寄り添えばいいが、民意に対しても鈍感にみえる。これでは、支持しないが増えるのも当然です」
内閣支持率は、底が割れると、下落に拍車がかかりやすい。すでに自民党支持層まで「岸田離れ」を起こしているだけになおさらだ。毎日新聞の調査では「早く辞めてほしい」が55%に達している。もう、この政権は長く持たないのではないか。
国民と乖離している大手メディア
朝日新聞の調査で目を引いたのが「今、だれが首相にふさわしいか」という質問に対する回答だ。
自民党議員7人の名前を挙げて選んでもらった結果、断トツは「この中にはいない」の36%だった。小泉進次郎元環境相16%、石破茂元幹事長15%、河野太郎デジタル相13%を大きく引き離していた。
要するに、これは、大手メディアが名前を挙げるような政治家の中には、この国の舵取りを任せられる人物はいない、と国民は判断しているということなのだろう。
朝日新聞に限らず、大新聞・テレビは、相変わらず自民党議員の名前を挙げては「首相にふさわしいのは誰か」などと、愚にもつかない調査をしているが、この質問自体、もはや国民の意識と大きく乖離しているのではないか。
永田町の論理に染まった政治部記者が、「ポスト岸田はこの中から選ばれる」と判断しているのだろうが、朝日新聞の調査結果を見る限り、国民が望んでいるのは、大手メディアが考えるような候補たちによる「政権たらい回し」ではないということだ。これまた、国民の方が、よっぽど考えているということなのではないか。
そもそも、大手メディアは、進次郎が首相の任に堪えると本気で思っているのか。石破にしたって、この10年間、政界の中枢から離れているだけに、課題山積のいま、はたして首相が務まるのかどうか。河野にいたっては、問題続出のマイナカードを巡って、国民を混乱に陥れているような男だ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「人材が払底している自民党の議員の名を挙げて『誰が首相にふさわしいと思いますか』などと問うのは、ナンセンスです。大メディアは、幹部が総理と食事を共にするほどの関係です。高給取りのエリート集団でもあるから、政治家と同じ目線になり、国民目線を失ってしまっているのではないか。国民が怒りの声を上げた国会議員のボーナスアップ法を巡っても、本来なら法案提出時に追及すべきなのに、大騒ぎしたのは衆院を通過した後でした。感覚が鈍っているのだと思う。政務三役の醜聞だって、雑誌メディアがスクープしてから後追いしている。大手メディアより、よほど国民の方が岸田自民の正体を正確に見抜いていると思います」
選挙制度の見直しも急務
岸田内閣の支持率が20%台に下落し、自民党の中にも「次の首相」にふさわしい人物がいない。普通は、こういう状況になると、野党への政権交代を望む声が上がるものだ。なのに、野党第1党の立憲民主党をはじめ、野党の支持率は全く伸びていない。
なにしろ、この期に及んでも野党は、未来を提示するような対案さえ出せないありさまだ。
この状況を打破するには、もう日本の政治の仕組みを根本から変えるしかないのではないか。そのためには、現行の「小選挙区比例代表並立制」を見直す必要があるだろう。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「小選挙区制は政権交代が起こりやすい、というのが定説です。しかし、日本の小選挙区制は政権交代が起こりにくいシステムになっています。政権交代を実現させるためには、野党は共闘体制をつくって自民党と対峙する必要がありますが、小選挙区比例代表並立制が野党共闘を阻む原因になっている。比例区のボリュームが、それなりに大きく、小政党でも生き残れるため、どうしても全面協力は難しくなる。それに、比例票を掘り起こすためにも、小選挙区に候補を擁立した方が得策なので、各党が候補を乱立させることになってしまう。現行制度では政権交代の実現は困難だと思います」
自民党の腐敗堕落を正す上でも、選挙制度の見直しは重要だ。
「かつての自民党は多様性に富み、それなりに優秀な政治家がいた。やはり、1993年まで中選挙区制が採用されていたことも大きかったと思う。党の執行部が選挙の公認権と党のカネを一手に握る小選挙区制と違って、同じ選挙区から自民党候補が3〜5人出馬できる中選挙区制は、議員一人一人が自由に発言できた。中選挙区制だと派閥の力が強くなるという弊害はありますが、派閥は、ある意味、議員の育成機関になっていました。だから、今のようなロクでもない議員も少なかったのです」(金子勝氏=前出)
いつも「次の首相」候補として同じ名前しか出てこない与党と、バラバラで民意の「受け皿」になり切れない野党に、国民は辟易しているに違いない。
「だれが首相にふさわしいか」という世論調査に対する「この中にいない」は、絶望の声そのものではないか。
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