米国によるウクライナへのクラスター爆弾供与で“人道的配慮”の姿勢も示せない日本 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/326268
2023/07/20 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
残酷で殺傷力の強いクラスター爆弾、日本は米国追従でいいのか(MSLRミサイルから出た信管を外されたクラスター爆弾を手に持つウクライナ軍兵士=ウクライナ・ハリコフ近郊)/(C)ロイター
クラスター爆弾は、大型弾体の中に多数の子弾を搭載した爆弾である。空中で破裂して子弾が散布され、爆発して広範囲の目標に損害を与える。
目標が不正確なので、一般市民も被害を受ける。不発弾が終戦後爆発し、住民に被害を与える場合もある。クラスター弾の開発、製造や取得、貯蔵、間接的・直接的によらない移譲を禁ずる条約が2010年に発効し、13年時点で、署名国が111カ国に達している。
主な生産・保有国の米国、中国、ロシア、イスラエル、韓国、北朝鮮などは署名していない。
ならば署名していない国が使用したらどうなるか。
22年2月28日、米大統領府のサキ報道官は「ロシアが使用したとの報告がある。これに米国はどう対応するか」を問われ、「ロシアの使用には確証がない。だが使用したとすれば戦争犯罪となる可能性がある」と答えていた。
今年7月9日、英BBCは「英国、カナダ、ニュージーランド、スペインはクラスター弾の使用に反対である」と報じた。
ベトナム戦争や内戦時の不発弾や地雷が今も残っているカンボジアのフン・セン首相は、ウクライナに対しクラスター弾を使用しないよう要求。ツイッターで、「(ウクライナ軍が)ロシアに占領されている地域でクラスター弾を使えば、長年あるいは長ければ100年にわたり、ウクライナの人々を重大な危険にさらすことになる」と投稿した。
なぜ、米国が「使用すれば戦争犯罪となる可能性がある」クラスター爆弾をウクライナに送ったのか。それはウクライナでの戦闘と関係がある。
ロシアとウクライナは今、激しい戦闘を繰り広げている。我々の想像を超える激しい戦いだ。
ウクライナ軍は弾薬不足とも
ウクライナ軍が1日当たり使う爆弾は、NATO諸国が生産する爆弾量を超えている。戦場では、ウクライナ軍が弾薬不足に苦しんでいるとも報じられてきた。クラスター弾であれ、何であれ、弾薬を送らないことには戦場で敗北する可能性すら出ているのである。
さて、その中で「平和愛好国家日本」はどのような立場をとっているのであろうか。おそらく、愚問であろう。
時事通信は、「松野官房長官、クラスター弾供与に理解」と報じていた。今の日本政府は、英国やカナダ、ドイツ、スペイン並みの人道的配慮すらできない国になった。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
http://www.asyura2.com/23/senkyo291/msg/225.html