※2023年6月30日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2023年6月30日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
冷えきった関係(岸田首相と公明党の山口那津男代表)/(C)日刊ゲンダイ
「衆院解散は早ければ秋口といわれている。衆参補欠選挙が見込まれる10月22日が投開票日になるように衆院を解散するというのがもっぱらのウワサだ」
日本維新の会の馬場伸幸代表は25日、党会合でそう語っていたが、永田町では「ウワサ」の域を超え、もはや共通の想定認識となりつつある。9月下旬に召集される臨時国会冒頭で、岸田首相が解散に打って出ると踏んで皆、一斉に選挙の準備に動き出している。
先の通常国会終盤で岸田は解散権を散々もてあそんだ挙げ句、土壇場で自ら記者団の前に立ち、異例の「見送り」を表明。あれから2週間余りで「次なる解散日」をにらんでソワソワとは、永田町の住人はつくづく選挙のことしか考えていない。
「10月22日投開票」の可能性が高まっているのは、面倒くささが先に立っているからだ。5月に元地方創生相で衆院長崎4区選出の北村誠吾氏が死去。今月22日には参院徳島・高知選出で自民党の高野光二郎氏が元秘書への暴行問題で辞職した。10月22日には両選挙区で補選が行われるが、自民党内では衆院福岡9区の公認争いもくすぶっている。
自民の福岡県連は候補者を大家敏志・参院議員と三原朝利・北九州市議の2人に絞り、来月3日から党員による予備選を実施。12日の開票結果をもって公認候補を決める。どちらにせよ、敗れた方が次の衆院選に無所属で出るのは必至のようだ。
現職の大家は衆院鞍替えで「退路を断つ」姿勢を示すため、議員辞職も取り沙汰されている。となると、10月22日には参院福岡選挙区でも補選となりかねない。それが自民には「面倒」なのだ。
「もう面倒くさいから補選と衆院選を重ねちゃえ!」
議員が亡くなった衆院長崎4区はともかく、参院の2選挙区の補選実施は自民党の都合にほかならない。しかも、参院の補選は選挙区が広く莫大な税金がかかる。参院徳島・高知なんて秘書をブン殴ったスキャンダルで議員辞職、それに伴う補選に巨額の血税を投入するのだ。いくら民主主義のコストとはいえ、有権者もすんなり納得できないだろう。その批判は支持率急落にあえぐ岸田政権に向かう。
衆院の長崎も「『10増10減』の対象で、定数4から3に削減。その前に補選で新たな支部長を立てるのは厄介」(自民党関係者)との不都合が残る。だったら「もう面倒だから補選と衆院選を重ねちゃえ!」との理屈が勝り、「9月下旬解散、10月22日投開票」の選挙日程がリアリティーをもって語られているのだ。
ましてや、岸田にはこの先、上がり目なし。今秋を逃せば来年の自民党総裁選まで解散できない、と足元を見られているのも「9月下旬解散」説の大きな根拠である。
「GDP比2%の防衛費増額」や「次元の異なる少子化対策」など、何もかも先送りしてきたツケで年末には増税論議が待っている。間違いなく世論の反発は避けられず、解散どころではなくなる。
岸田が立て続けに外遊日程を詰め込んでいるのも「9月解散」へのシグナルだ。7月11〜14日にリトアニアとベルギーを訪問。NATO首脳会議に出席した後、EUとの首脳会談に臨む。16〜19日にはサウジ、UAE、カタールの中東3カ国を歴訪する。
さらに岸田は最近、北朝鮮の金正恩総書記との会談実現に向けたハイレベル協議への言及を繰り返している。北朝鮮側も「朝鮮中央通信」が「朝日両国が会えない理由はない」とする朴尚吉外務次官の談話を報じるなど、会談に前向きな姿勢とも伝えられている。
まさかのサプライズ外交で起死回生の得点稼ぎ、8月の内閣改造でフレッシュな顔ぶれをアピールして新閣僚のボロが出る前に一気に9月末解散──。こんな見立てがまことしやかに出回っているのは、そのタイミングを逸すれば岸田政権がレームダックになりかねないからだ。苦境の証拠に過ぎないのである。
保守層はウマの合う若い相手に乗り換えたい
姑息な外遊・解散戦略は笑止千万。国民はもう騙されないだろう。とりわけ岸田にとってキツイのは、自公両党の連立そのものに、有権者の不信感が高まっていることだ。
新設される東京28区に公明が候補者擁立を表明したことを機に「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」(公明の石井幹事長)として、自公は東京の選挙区での協力関係を解消。それから最近の世論調査では「自公連立」の評価に関する設問を設けているが、必ず「連立を解消すべきだ」が多数を占めている。
23〜25日実施の読売新聞の世論調査で「今後も自公が連立して政権を担うべきか」との問いには、ご多分に漏れず「思わない」が56%に達した。興味深いのは両党支持層の温度差だ。公明支持層の大半が「今後も連立政権を担うべきだと思う」と答えたのに対し、自民支持層は「そう思う」が49%、「思わない」が41%と評価が割れていた。
この結果に「自公連立はもともと、選挙目当ての『野合』。政略結婚の末に冷え込んだ熟年夫婦みたいなもので『すきま風』が如実に表れています」と評するのは、高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)だ。こう続ける。
「今の自民支持層の主流は、かなり右寄りの『コア保守』。伝統的家族観を重んじる宗教右派も含まれます。彼らにとって、女性部が中心の創価学会に支えられた公明は、まさに水と油の存在。直近の国政選挙で公明の集票力が落ち、党勢回復に向け『平和の党』のアイデンティティーを取り戻そうとするほど、コア保守は離れていく。勢いづく維新の方が連立相手として、よっぽど理想的です。明らかな改憲力だし、思想も近い。つべこべ口を挟む公明よりも維新と組みたい、という『コア保守』の願望が読売の調査から透けて見えます」
思い切り絶縁状を突きつけるべき
打算で結びついた“古女房”より、ウマの合う若いパートナーに乗り換えたいとは、いかにも右派らしい家父長制に基づくマッチョな発想だが、身勝手な支持層と違って政治家には目先の選挙が大事。公明の協力を失えば自民の東京選挙区は壊滅危機だし、公明も現職のいる大阪・兵庫の6選挙区で維新に候補を立てられて「常勝関西」は風前のともしびである。
自公両党は次期衆院選の選挙協力に関する合意文書を交わし、関係改善をアピール。公明の北側副代表は29日の会見で「基本合意に入っていないが、東京でも協力関係が構築できるよう、ぜひ一緒になればいい」と発言した。
これまで公明は候補擁立を決めた東京29区で自民の推薦を求めない方針だったが、自民は地元区議団を中心とする支援を検討して“誠意”を示している。「9月末解散」の現実味が増すごとに“元サヤ”の動きを強めるだろうが、末端の支持者同士はそのつどソッポを向き、「野合」の限界が露呈していく。見えてくるのは、岸田自民の空前のボロ負けだ。
「自公が連立を組んでから24年。公明はブレーキ役を担うどころか、自民の戦争国家路線に協力し、米国に日本を売り渡す売国政策を続けてきました。経済も低迷し、今や日本は世界から取り残されています。有権者の多数が自公連立の解消を求めているのは亡国の正体を見透かし、辟易しているからです。自公政権は早晩オシマイです。支持母体の組織力にかげりが見え、いずれ自民も“公明切り”に走るでしょう。公明は切られる前に自民との関係を断ち切るべきです。その方が日本の政治はスッキリします」(政治評論家・本澤二郎氏)
公明も本音では別れたがっている相手に固執する必要はない。「別れて困るのはアナタだ!」と思い切り岸田自民に離縁状を突きつけるべきだ。
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