安倍元首相の国葬とエリザベス女王の葬儀 運命のいたずらか必然の皮肉か 日本外交と政治の正体
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2022/09/16 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
これぞ、国葬(ウェストミンスター宮殿に向けて、官庁街ホワイトホールを進むエリザベス女王の葬列=14日、英ロンドン)/(C)ロイター
英国のエリザベス女王が滞在先のバルモラル城で死去した。多くの英国人がバッキンガム宮殿やバルモラル城周辺、あるいはトラファルガー広場に集まり、弔意を表した。
夕暮れ時バッキンガム宮殿の上に虹がかかり、天もまた哀悼の意を表しているようであった。ロンドンのウェストミンスター寺院で国葬が営まれる予定である。21世紀前半の最大の世界的行事になるだろう。世界各地の国王や、大統領や首相らが国葬に参列するとみられる。日程過密としている米国バイデン大統領も参列の意向を表明している。
日本では安倍元首相の国葬が営まれる。準拠法がない状態で開催されるので、その葬儀を正当化するためにことさら「弔問外交」の意義が強調されたが、世界的に見て、日本の地位はどんどん後退している。
2000年の小渕恵三首相の葬儀の時にはクリントン米大統領、金大中韓国大統領(いずれも当時)に加え、ASEAN諸国からも大統領、首相らが参列したが、おそらく今回は、小渕元首相の葬儀の時よりも、参列者は格落ちするだろう。
米国からはハリス副大統領が訪問する予定という。ハリス副大統領の出席予定を報じた読売新聞は「バイデン政権としては、日程の調整がつかないバイデン大統領の代わりに副大統領が出席することで、安全保障関連法制定など日米同盟の強化に尽力した安倍氏の外交上の功績をたたえ、日米関係の重要性を改めて示す狙いがある」と報じた。
小渕元首相の葬儀の時にクリントン大統領が出席したにもかかわらず、今回は副大統領の出席となったが、それでも読売新聞は「日米関係の重要性を改めて示す狙いがある」と報じた。
バイデン大統領は確かに多忙である。だが多忙の中、エリザベス女王の葬儀には出席する意向を示した。安倍元首相の「国葬」はネットで「運命のいたずらか、必然の皮肉か? 伝統ある本物の国葬が、名ばかり国葬の直前に執り行われることになる」と揶揄された。
衆院議院運営委員会は8日、安倍元首相の国葬に関する閉会中審査を開いた。岸田首相は国葬実施の理由について「暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」ためだと説明したが、ネットでは、「民主主義を断固として守り抜くために、なぜ国民の過半数が反対している国葬をしなければならないのか」との声が出ていた。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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