※2022年6月9日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2022年6月9日 日刊ゲンダイ2面
【すべての病根は自民党】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 9, 2022
この国のハレンチ政治とハレンチ議長
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※文字起こし
立憲民主党が8日提出した、岸田内閣に対する不信任決議案と、「週刊文春」でセクハラ疑惑が報じられた細田博之衆院議長への不信任決議案は9日午後の衆院本会議でそれぞれ採決が行われる。
岸田内閣に対する不信任案の提出前、立憲の泉健太代表は記者団に対し、「経済無策を看過できない」と説明する一方、不信任案の提出をめぐって野党の足並みがそろわず、与党内から「政権批判のポーズだけ」といった声が上がっていたことに対し、「採決の結果が分かっているからやらないとなると、全ての採決は与党多数なので不要になってしまう」などと意義を強調していた。
「ジェンダー平等」を掲げ、「女性候補者5割」を目指す立憲は、「セクハラの常習」と批判されている細田に対する不信任案を突き付けることで、自民党との体質の違いや対決姿勢を鮮明にする狙いがあるとみられるが、その細田への不信任案に対し、一部の大手メディアは「野党の意見が割れた」などと報じていたが、ちょっと待て。文春の報道が事実であれば、「意見が割れた」などとのんびり報じている場合じゃないだろう。
セクハラ疑惑で日本の国会の権威が失墜
国会は国権の最高機関であり、言うまでもなく衆院議長は首相、最高裁長官と並ぶ三権の長だ。
本来は最も公平・中立であることが求められる厳格な立場にもかかわらず、1票の格差を是正するための衆院選挙区「10増10減」の定数配分案に否定的な見方を示したかと思えば、議員歳費について「100万円しかない」などと言い放つ。その挙げ句がセクハラ疑惑なのだから言語道断なのは言うまでもない。
野党が再三求めていた、衆院議院運営委での説明にも応じず、逃げ回るばかりの細田。
衆院議長としてはもちろん、政治家としてのモラルもあったもんじゃない。説明責任を一体どう考えているのか。破廉恥にもホドがあるだろう。
2019年6月に「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律」(女性活躍推進法)が公布され、厚労省は職場などでのパワハラ、セクハラ防止に向けたガイドラインを公表。それによると、パワハラ、セクハラに当たる例として、<優越的な関係を利用>し、<相手の意に反して、言葉や文字、画像、身体的接触などにより、相手に性の本質な内容を行う行為や権利を侵す不快な行為>──などとある。
まさに総理大臣と並ぶ絶対的な権力者にある細田が「優越的な関係」を利用し、取材記者にセクハラしていた疑いが浮上しているわけで、一般企業ならば即アウトのケースだろう。
福田赳夫元首相の秘書を務めた中原義正氏がこう言う。
「国権の最高機関である国会の長にセクハラ疑惑。こんな破廉恥はあり得ない話だ。他国の政治家も呆れているに違いない。つまり、日本の国会の権威が失墜するということであり、議会人であるなら、自ら職を辞するべきだ。それなのに今も、あ〜だ、こ〜だと言い訳を続けているからみっともない。破廉恥議長のもとで、今後、まともな国会運営など期待できるはずがないだろう」
給付金詐欺よりも腐った自民党政治の方が問題
厚労省のガイドラインなどによると、こうしたパワハラ・セクハラを防ぐために<雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務><事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者及び行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずること>とある。つまり、細田からセクハラを受けたとされる女性記者が所属している大メディアは「事業主」として、この問題を「迅速かつ正確に確認」し、徹底的に調査する必要があるのは言うまでもない。
当然、細田に対しても厳しい姿勢で臨み、「再発防止」に向けて、検証記事などを掲載する「義務」があるだろう。少なくとも、それが「社会の木鐸」としてのメディアの役割というものだ。
ところが、どの大メディアも、細田のセクハラ疑惑について文春報道を引用する形でアリバイ程度に報じているだけ。被害者が「身内」にいるのに調べようともせず、まるで見て見ぬふりだから唖然呆然。大メディアがこんな体たらくだから、細田も「やれるもんならやってみな」とばかり議長に居座り続けているのであり、自民党もまたのうのうとしているのだろう。
コロナ対策をめぐる持続化給付金の詐欺が相次いで明らかになり、連日、新聞・テレビで大きく取り上げられているが、給付金詐欺の犯人を追及するぐらいの勢いで、なぜ、メディアは細田を厳しく糾弾しないのか。給付金詐欺も問題だが、衆院議長のセクハラ疑惑、腐った自民党政治の方が大問題ではないか。
ルールを守らず反則ありの自民党政治
衆院議長という重責の自覚が欠如しているのか、もともと国会議員としての資質がないのかはともかく、細田のセクハラ疑惑が示しているのは、落ちるところまで落ちた今の日本の政治の劣化、国会を愚弄している与党の姿勢、権力の横暴──の表れだということだ。
第2次安倍政権誕生以降、国会審議は形骸化し、嘘とゴマカシのオンパレード。歴代内閣が積み上げてきた法解釈を何の議論もないまま反故にし、閣議決定を乱発してやりたい放題。少数政党の意見にはまるで耳を貸さず、審議時間だけを費やしたら強行採決してシャンシャンという独裁。
憲法の規定に基づき、野党が臨時国会の召集を求めても無視し続け、あろうことか総理大臣が国会で118回も嘘をつく。「説明責任は私にある」「真摯に説明を尽くす姿勢が大事」とか言いながら口先だけで何もしない。そんな破廉恥政権をメディアはロクに批判もせず、提灯報道で嘘と詭弁を垂れ流す。
ワイドショー番組の中には「野党は批判ばかりだから支持が集まらない」などと、エラソーに解説しているコメンテーターもいるが、野党が苦戦を強いられているのは批判ばかりではなく、今の与党がメチャクチャだから。国会をスポーツに例えれば、安倍政権以降の自民党は試合のルールすら守らず、勝つためなら反則も当たり前。その上、審判も抱き込んでいるのだから、ルールにのっとって戦う野党が太刀打ちできる状況ではないのだ。
ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、国内では「無法者のプーチンを止めろ」といった声が出ているが、プーチンを止める前に、同じように無法者の政権、すべての病根である自民党を止める方が先だろう。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「安倍政権以降、加速している政権、与党の国会軽視の動きが、今の細田議長のセクハラ疑惑につながっていると言っても過言ではないでしょう。つまり、国会に対する権威や信頼など、どうでもいいという今の政権、与党の驕り高ぶりの表れ。全く冗談ではありません」
ハレンチ政治とハレンチ議長。この国の政治情勢は悪化する一方だ。
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