深層は米ロのウクライナ争奪戦
植草一秀氏ブログ「知られざる真実」
政治・社会2022年3月8日 14:20
NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、ウクライナ情勢について一方的なロシア批判だけでは解決できないと指摘した3月7日付の記事を紹介する。
米国のこれまでの行動とロシアの行動を比較したときに、一方を悪とし、一方を善と決めつけることはできない。
今回のロシアによる軍事作戦遂行を是認できない。武力による紛争の解決を遂行すべきでない。しかし、米国が正義の騎士であるかのように振る舞うのは噴飯もの。
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ヌーランドと極右勢力の真実
イラク戦争を再評価すべきだ。イラクの罪なき市民が、どれだけ犠牲になったのか。メディアは、イラクの市民生活を報道したか。イラクの街からの中継を連日行ったか。米軍の軍事侵攻を非難したか。
米国はイラクが大量破壊兵器を保持していると主張した。しかし、国連は軍事侵攻の前に踏むべきプロセスがあるとして、米国による軍事侵攻を是認しなかった。
しかし、米国は制止を振り切ってイラクに軍事侵攻した。イラク市民の犠牲者は数十万人に達した。現在のウクライナでの犠牲者数との比較を示すべきだろう。米国による軍事侵攻の後、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。単なる侵略戦争だったことが明らかになった。
ウクライナでは2004年と14年に2度、政権転覆が遂行されている。この2つの政権転覆の裏側に米国が位置している。米国が介入して政権を転覆させたのであれば、糾弾されるべき存在は米国である。
米国は「情報力」を駆使して、自らの行動を正当化してきた。しかし、その行動が「善」であるのか、「悪」であるのか、評価は定まっていない。
この問題を米国の著名映画監督であるオリバー・ストーン氏がドキュメンタリー映画にした。昨日も紹介した「ウクライナ・オン・ファイヤー」。画面に流れるコメントは簡単な操作で非表示にできる。
ウクライナ問題を考えるなら、必見の作品だ。オリバー・ストーン氏は自説を強要しない。淡々と事実を伝えてくれる。その事実をどう解釈するのかは視聴者に委ねられる。
しかし、米国がウクライナの極右勢力を温存し、対ロシア戦略に活用してきたことはよく理解できる。東欧カラー革命が類似した手法で遂行されてきたこともよくわかる。
ウクライナの反政府デモは当初、穏健な活動だった。デモ隊とヤヌコヴィッチ政権との間で大統領選の前倒し実施で合意も成立しかけた。しかし、平和な妥協が成立しては困る勢力が存在した。
平和なデモを暴力行為、流血の泥沼に移行させることを必要とした勢力が存在した。この「転換」を担ったのが米国と連携する極右勢力だった。彼らが採用したのが「偽旗作戦」である。
デモの最中に極右勢力がライフル銃などを用いて、故意にデモ隊に発砲し、死傷者を生み出し、それをヤヌコヴィッチ政権の治安部隊によるものであるとの情報を拡散する。この「偽旗作戦」によって民衆の行動を特定の方向に誘導するのである。
詰まるところ、暴力革命によって政権転覆を図る。これが14年政権転覆の基本図式である。
同時にウクライナ極右勢力は親ロシア勢力が支配権を持つ東部ドネツク州、ルガンスク州においても挑発行為を繰り返す。このことによって、一種の内戦状態が生み出された。
事態を収拾するために停戦協議が行われ、14年と15年に「ミンスク合意」が締結された。「ミンスク合意」は東部地区の自治を広範に認める内容を含んでいた。
ロシアにはロシアの主張がある。この点を含めて、早期に停戦が実現するように、すべての関係国が尽力するべきだ。一方的な非難、攻撃、追い込み戦術だけで問題を解決することはできない。
http://www.asyura2.com/10/nametoroku6/msg/15867.html