アラン・ペッタション(またはペッテション)(Gustav Allan Pettersson, 1911 - 1980)
ワンアンドオンリーの独自に深められた精神世界を彷徨するような長大で重厚な交響曲を沢山書いた作曲家。その点では20世紀のブルックナーと呼びたいような存在。
交響曲
第1番 (1951年)※破棄され、断片のみが現存。
第2番 (1953年)
第3番 (1955年)
第4番 (1959年)
3.0点
純粋な精神世界の音楽である。叙景をほぼ感じさせない。ドロドロとした暗黒世界の中で現実的精神とも妄想か生み出した虚構ともつかないような純美の世界が展開される。調性はかなり明確な場面が多いが、場面展開は旋律的でなく動機を重ねたり音響的だったりする。もやもやとした黒い霧と渦巻く暗黒オーラが常に世界を覆っている。少しずつ押したり引いたりしながら場面は展開していくから十分に堪能出来る。しかし、まだまだこれからの深化の序章としての楽しみという感じで浅さと未成熟さが残っている。やりたい方向性は既に明確だが、明確に世界を確立しきっていない。
第5番 (1962年)
3.3点
4番よりもはるかに暗黒度合いが高く、曲への没入度合いも高い。音像の完成度が段違いであり、一段階の深みに達している。魂の底にへばりついて動かしていくような力がある。単なる精神世界ではなく、もっと異次元の何かの亜空間の世界の音楽である。現代音楽風ではあるものの、調性はだいたいあるにもかかわらず、ここまでの世界に到達しているのはすごい。ここからがペッテションの本領発揮であろう。
第6番 (1967年)
3.0点
エモーショナルなパワーが増強して、それとともに暗黒的な魔界の世界観もさらに濃密度を上げている。うんざりするような暗黒度合いである。劇的なパワーは楽しめる部分もあるのだが、後半の同じ和声の上で延々と音楽を続けるのはさすがにやりすぎではないだろうか。息抜きがないためいい加減ウンザリしてしまった。
第7番 (1967年)
3.0点
ネオクラシック的な明快すぎる線が気になる。亜空間のような異世界の中を目に見えないオーラが覆うようなオリジナリティーが薄れたことにより、独自の魅力が薄れたように感じてしまった。音楽が明快になったことで、楽章がないものの構成自体はかなりシンプルなことも分かりやすくなり過ぎたように思う。とはいえ、個別の場面がそれなりに魅力ある音楽だとは思うが。
第8番 (1969年)
3.0点
7番の単純さとは全然違う、割り切りができない音の様相が続く。そして暗黒的なオーラがかなり弱い。光が常に差し込んでおり、拡散して曖昧になりながらも光の力が強いため、そこに暗黒は登場しない。どうしたのか?と突っ込みたいくらいだ。その目新しさを楽しみ、雰囲気の複雑で少しずつ移り変わる様を楽しめる。そしてスクリャービン後期を連想するような神聖なる神秘的な秘蹟の音楽という感じは強くあるのが面白い。得意の執拗なコーダも不思議な浮遊感があり、重力に引っ張られるような重さが少ない。
第9番 (1970年)
3.3点
長尺の曲らしいゆったりした時間の流れの中で不思議な音楽が続く。執拗な繰り返しの中で、マーラーの6番のような過剰に劇的で起伏の激しい内面エネルギーのドラマが演出される。しかし、これはとても抽象的で独自の超越的な亜空間の中でエネルギーの粒子を主人公として産まれるドラマである。なかなか面白い音楽であり、8番を拡張して独自のものに仕立て上げている。しかし現代音楽のようなものではなく、効果音により書かれているものの調性的で聴きやすい。長いコーダが最後に平安と安息で美しく終わるのにドキッとする。
第10番 (1972年)
3.0点
順番に聴いていくと突如としてカオスの音響のるつぼの別の作曲家になったかのような音楽になって面喰らう。この曲まではシンプルで統制が取れていたが、急に各楽器がバラバラに自分の出したい音を自由に奏でているかのような不統一な世界になっている。ひたすら圧倒されるだけで終わるのだが、飽きる前に短く終わるので、まあいいかと思える。凄い曲という感想はないが。
第11番 (1973年)
3.3点
前半はペッタションにしてはあまりにも生ぬるい。えぐりがなく、ゆったりとした時間をフリージャズのように自由に声部が登場してやりたい事をやっては去っていく感じだ。しかし後半はボルテージか上がっていく。ユニゾンの強奏から浮遊感の中に浮かび上がる姿の見えない強大なラスボスのようなものが存在している感は、独特の楽しさである。斬新なとても新しくて楽しい音楽を聴いた満足感はなかなかだ。
第12番「広場の死者」 (1974年) 合唱付き
3.0点
カンタータ風の声楽中心の曲。独特の浮遊感の中での雲を掴むような感じの合唱が延々と続いていく。しかし、あまり面白くないというか、強く感じるものがない。曖昧さが合唱によりパンチが効かなくなりさらに曖昧になってしまっている。謎の音楽という感想は最後まで消えなかった。また、あまりに長すぎる。全く芯のようなものがつかめず歌唱の不思議な音の繋がりと異様なテンションに圧倒されっぱなしなのはよいのだが、それだけが永遠に続く感じだ。しかし最後の最後に綺麗に伸ばした音で終わった時は、一気に気分がスッキリして達成感も感じて急に良いものを聴いたような気持ちになって点を上げてしまった。
第13番 (1976年)
3.5点
これは最初の数10秒を聴けばすぐ分かることだが、総合性を備えた素晴らしい力作である。重厚感のある重さと異次元のような浮遊感を備えており、カオス性とフリージャズのような自由さとコントロールされた統一性を全て兼ね備えている。聴きごたえが非常にあり、濃密な時間が流れていく。深くえぐるようなダークな精神性を持ちながら、発想豊かで変化に富んだ面白さもある。エモーショナルな場面もある。大変な覚悟で臨んだ代表作なのが音だけでもよくわかるし、その挑戦は成功したように思われる。
第14番 (1978年)
3.5点
ペッタション流の交響曲による晩年らしい枯れた味わいのある曲。妙に人生の終焉の予感で感傷的になったり薄い音の枯れた雰囲気の場面が見え隠れするのだが、それほど単純化されているわけではなく、カオス性は存続していて面白い。晩年の音楽が好きという人は多いと思うのだが、そういう人にはぜひ試しに聴いてみてもらいたい。音の濃密さや変化の多彩さや壮大なスケール感などは13番を継承しており、聴きごたえも13番ほどではないがかなりある。泣けるほどに心を震わせてくれる場面もある。割り切れない無限の変容の繋がりは相変わらずだが、場面を切り出すと普通の交響曲のような時が増えているようにも思える。
第15番 (1978年)
3.3点
14番と同系統の音ではあるが、この曲はなんとも言えないバランスの良さである。14番の終焉感のような特徴の明確さはなく薄められていて、平衡感覚を保った作品になっている。時間が短くてコンパクトであるが、これにはどちらかというと深い深い底の部分までは到達されない物足りなさを感じる。音楽に翻弄されきった完了感がない。出来は良い気がするが、いろいろとインパクトが弱い曲と思った。
第16番 (1979年) アルト・サクソフォン独奏付き
3.5点
サクロフォーン協奏曲のような作品であり、ひたすら独奏を吹きまくる。これがペッタションの晩年の作品に奇跡的な相性の良さを見せており、何度も聴きたくなるような素晴らしさである。無限の変容と感傷的な雰囲気のなかで、サックスはまさに魂とは単一のものであることを表象しているかのように吹かれる。そして吹きすさぶ嵐の中を人生を回想しながらも強く自分を保持し、それでもナイーブな気分にもなったり、揺れ動く。独自の作風と晩年であることとサックスの奇跡の結合で、少なくともクラシック音楽の中で他では見つけられそうもないオンリーワンの魅力を放っている。
第17番 (1980年)※破棄され、断片のみが現存。
https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E5%8C%97%E6%AC%A7
グスタフ・アラン・ペッテション(またはペッタション)(Gustav Allan Pettersson, 1911年9月19日 - 1980年6月20日)は、スウェーデン出身の交響曲作曲家。17の交響曲のほか、いくつかの協奏曲や小品を残す。
暴力的でアルコール依存症な父と、病弱な母とともに4人兄弟の末子として幼年期を過ごす。1930年からはストックホルム王立音楽院でヴァイオリンとヴィオラを学び、後にストックホルム・フィルにヴィオラ奏者として入団。
1950年にパリへ留学し、オネゲルやミヨーと親交を結ぶ。1953年のスウェーデンへの帰国後は作曲家として活動するが関節炎を患い、後にはペンももてないほどになる。1980年、癌のため死去。
作品
交響曲
第1番 (1951)※補完版が存在。
第2番 (1952-53)
第3番 (1954-55)
第4番 (1958-59)
第5番 (1960-62)
第6番 (1963-66)
第7番 (1966-67)
第8番 (1968-69)
第9番 (1970)
第10番 (1972)
第11番 (1973)
第12番「広場の死者」 (1974) 合唱付き
第13番 (1976)
第14番 (1978)
第15番 (1978)
第16番 (1979) アルト・サクソフォン独奏付き
第17番 (1980)※未完
管弦楽曲等
弦楽のための協奏曲第1番 (1949-50) 弦楽合奏
弦楽のための協奏曲第2番 (1956) 弦楽合奏
弦楽のための協奏曲第3番 (1956-57) 弦楽合奏
交響的断章 (1973) 管弦楽
カンタータ「人類の声」 (1974) 弦楽合奏、独唱×4、合唱
ヴァイオリン協奏曲第2番 (1977-78) ヴァイオリン、管弦楽
ヴィオラ協奏曲 (1979) ヴィオラ、管弦楽
室内楽曲、器楽曲
2つのエレジー (1934) ヴァイオリン、ピアノ
幻想曲 (1936) ヴィオラ
4つの即興曲 (1936) ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ
アンダンテ・エクスプレッシーヴォ (1938) ヴァイオリン、ピアノ
ロマンス (1942) ヴァイオリン、ピアノ
嘆き (1945) ピアノ
フーガ ホ長調 (1948) オーボエ、クラリネット、ファゴット
ヴァイオリン協奏曲第1番 (1949) ヴァイオリン、弦楽四重奏
2台のヴァイオリンのための7つのソナタ (1951) ヴァイオリン×2
歌曲
6つの歌 (1935)
24の裸足の歌 (1943-45)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
http://www.asyura2.com/21/reki6/msg/731.html