アフガニスタンにおける今後の進展にイランは影響を与えることができるだろうか?
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2021年9月 6日 マスコミに載らない海外記事
2021年8月23日
ウラジーミル・ダニーロフ
New Eastern Outlook
アフガニスタンで(ロシアで禁止されている急進的運動)タリバンが権力の座に就き、外部の国々の対応と、今後のこの国の状況進展に対する影響力の可能性が、とりわけ重要になっている。この文脈で、今後のイランとアフガニスタン関係の見通しを検討するのは興味深い。
アフガニスタンとイランは同じ言語、ダリー語(アフガン・ペルシア語、ペルシャ語のアフガニスタン方言)話し、両国の国境は921キロの長さにおよぶ。イランには非常に控え目に見積もって、約250万人と推定される世界最大のアフガニスタン人のコミュニティーがある。テヘランは新しい難民を受け入れる準備があるとは言え、イランは、この人数が増えるのを望んでいない。これらの状況は、テヘランは隣国との貿易で黒字なので、イランにとって、経済的なものを含め、今後のアフガニスタンとの関係見通しは非常に重要だ。
イランとアフガニスタンの間の国交は、両国が君主体制だった1935年(アフガニスタンの君主はザーヒル・シャーで、イランでは、パフラヴィー皇帝だった)に確立された。一般に、関係は4月の(共産主義)革命がアフガニスタンで起きた1978年まで、かなり良く発展し、一年後の1979年、イランで、イスラム革命が権力を奪取した。当時、両国で権力の座についた政治勢力には、共通基盤がなく、従って、アフガニスタンからのソ連部隊の撤退後も、イランは北部同盟を支援し、タリバンに対する国際治安支援部隊(ISAF)の合同作戦に参加した。
テヘランのタリバンとの関係は、あいまいだ。イラン外交の歴史で最も悲しい瞬間の一つは、11人のイラン人外交官がアフガニスタン・イスラム首長国の領事館で亡くなった1998年だ。これは、少なくともタリバンが承知の上で起きた。当然、2002年まで、イランはタリバンを敵と見なしていた。
2001年、イラン特殊部隊「ゴドス軍団」は、アフガニスタン侵略中、タリバンを打倒する上で、実際にアメリカ合州国を支援したが、2002年1月29日、第43代アメリカ大統領、ジョージ・W・ブッシュが、議会演説で、世界的な「悪の枢軸」に、アフガニスタンとイラクでアメリカを支援したイランを入れて、状況は劇的に変化した。言い換えれば、ホワイトハウスは、アメリカに協力していたイランを、タリバン同等扱いしたのだ。
イランはワシントンのこの姿勢を受け入れるよう強いられ、タリバンと共に、アメリカ合州国に対して、敵対的なポジションをとるよう強いられて、このアフガンのプロジェクトのために、マシュハドに本拠を置く専門的なアンサール部隊さえ作った。2005年、マムード・アフマディネジャドがイランで権力の座についた後、反米感情は、カーブルとテヘランを更に結び付け、2014年、イスラム革命防衛隊は、タリバンのため、マシュハドに司令センターを開設し、そこで彼らが訓練され、資金さえ受けていると報じられている。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アフガニスタンの中級指揮官は、イランからライフル銃、弾薬と月580ドルの給料を受け取っていたとされている。
イランが近年、中東で追求している戦略目的の一つは、アメリカ軍の完全な最終撤退であるにもかかわらず、アフガニスタンを去ることで、ワシントンは、イスラム共和国にとって、今までの招かれざるアメリカ駐留の単純な不都合より遥かに大きい問題を生み出したのだ。まず第一に、これは(ロシアで活動禁止されている)ダーイシュ・テロ集団の、現在のアフガニスタンの出来事に対する反応や、その「アフガニスタン支部」が、アフガニスタンでの権力再配分で、どのような役割を果たすのかが予想できないことで、この支部は、その意思についてまだ発言していないのだ。結局、ダーイシュ登場の必要条件となったアフガニスタンの社会的、経済的、宗教的問題は消えていない。大多数のアフガニスタン住民がスンニ派イスラム教徒で、シーア派信徒は主にイランに支援されるハザラ族であることを忘れてはならない。そのため、イランの住民の圧倒的多数を構成するシーア派信徒に対するものを含め、分派の敵意を促進する過激派スンニ派組織の代表者は、以前から、アフガンのスンニ派の間で積極的に活動しており、今もそれを止めていない。
しかも、これら分派の矛盾は消えていない。更に、特定勢力が、テヘランとカブール間の協力の傾向が深まるのを阻止するため、これを利用しようとしている。それで、今年七月、イランの公式刊行物Jomhouri-eEslamiが、アフガニスタンのシーア派過激組織全てが、隣国領土で、タリバン戦士と対決するため増大していると、アフガニスタン状況を報じたため、両国は外交紛争の瀬戸際になった。特に、タリバンによる攻撃的行動の増大が、多数のアフガニスタンの郡が「怒るムラー」に降状した後、アフガニスタンのシーア派集団の急激な動員をもたらしたと報じられた。とりわけ、Jomhouri-eEslamiによれば、公式カーブルの武装反抗者を撃退し、軍を支援する用意があるHashd al-Shiaというシーア派集団の活動強化が指摘されていた。
イラン・メディアのこの情報は、それをイラン指導部によるアフガニスタンで本物のクーデター組織の試みと呼んだアシュラフ・ガニ大統領政権の注意を引き付けた。カーブル当局は、即座に、2019年、アフガン政権が非公認レベルで、シリアで、バッシャール・アル・アサド大統領側で戦った何千というシーア派戦士が帰国し、アフガニスタンに頭痛を引き起こしかねないという不安を表明したことを思い出したのだ。サウジアラビア通信社アッシャルクル・アウサトは、アフガンの警備機関が、かつてイラン士官に採用されたシーア派のハザラ族が、イランがアフガニスタンで立場の強化に使える良い政治手段になりかねない事実に注目していると報じた。
これら状況から判断して、カブール空港から最後の米空軍航空機離陸で、多くの勢力がアフガニスタンの紛争に戻ると予想される。ネットワーク構造から、自身の準国家状態を生み出す実際の試みへと変われる(ロシアで禁止されているテロ集団)ダーイシュやアルカイダのような、前内戦の「ベテラン」を含め。疑いなく、名称は以前のものとは異なり、近年、どこでも、黒い旗と露骨なテロと結び付いた「全国解放運動」として自身を位置づけようとするかもしれない。だが、アフガニスタンにおけるこのような進展は、必然的に、ダーイシュとアルカイダ両方が明白な敵であるタリバンとテヘランの結びつきの強化を招くだろう。いずれにせよ、イラン外務省が7月19日に公式発表した通り、テヘランは隣接するアフガニスタンで、おき得る混乱を我慢するまい。
テヘランはタリバンが今アフガニスタンの不可欠な部分で、支配的な勢力であることを認めている。そのため、今日イランは、多くの他の国々にとって、そうであるように、アフガニスタンの最近の出来事に関心を持っており、慎重にタリバンの行動を評価し、将来の両国関係のための新たな概念を進展させている。この点に関し、非常に長い休止後のイラン当局による現在のアフガニスタン政治情勢評価は注目すべきだ。特に、イランのイブラーヒム・ライ大統領は、テヘランは彼らの国における平和と発展を目指すアフガニスタンの全ての政治勢力と協力する用意があり、アフガニスタンの政治的安定と、この国における状況発展の予測可能性がイランにとって非常に重要だと指摘した。同時に、テロ集団のタリバンを、タリバン自身の呼称を使って「イスラム首長国」と呼んだイラン外務省の公式代表の声明に注意が引きつけられた。最近まで、テヘランは公式にタリバンをテロ組織以外何ものでもないと呼んでいたのだ。
だからタリバンに対するイラン当局の見解は大きく変化していると我々は想定できる。
ウラジーミル・ダニーロフは政治評論家、オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/08/23/can-iran-influence-further-developments-in-afghanistan/
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