※2021年7月13日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年7月13日 日刊ゲンダイ2面
【自業自得 すべてが狂った菅シナリオ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) July 13, 2021
五輪大コケ必至で総選挙先送りだとさ
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※文字起こし
政府は12日、新型コロナウイルスの感染再拡大が続く東京都に対し、特別措置法に基づく4度目の緊急事態宣言を発令した。
期間は8月22日までの6週間。感染リスクが高いとみている飲酒の規制を強化するため、酒類を提供する飲食店に再び休業を要請した。
11日が期限だった沖縄への緊急事態宣言と、埼玉、千葉、神奈川、大阪4府県への「まん延防止等重点措置」の期限も8月22日まで延長されたほか、沖縄は酒類を提供する飲食店への休業要請を継続。重点措置下の4府県でも酒類提供は原則停止となるものの、知事の判断で緩和できることに。北海道、愛知、京都、兵庫、福岡の5道府県を対象とした重点措置は11日をもって解除となった。
繰り返される緊急事態宣言だが、人流の大幅減少には必ずしもつながっていない。読売新聞はNTTドコモの「モバイル空間統計」のデータを利用し、12日午前8時台の都内の主要駅周辺の人出を調査。
それによると、1週間前の5日と比較して、東京駅は0・5%減、新宿駅は2・2%減、品川駅3・5%減で、ほぼ横ばい。3回目の宣言後初の月曜日(4月26日)と比べると、東京駅は4・3%増、新宿駅は1・3%増、品川駅は0・6%増で、いずれも人出に大きな変化はみられなかったという。
呪われた五輪ならぬ菅政治
世論調査で国民の多くが「中止」を求めていた東京五輪は予定通り、23日に開幕する予定だが、「あと10日」に迫る中でも、過去の五輪で見られたような歓迎ムードはほとんどみられない。むしろ、街中には五輪に対して誰も期待も興奮も示さず――といった冷ややかな雰囲気が静かに広がり続けるばかりだ。
くだらない延命策を考えるよりも退陣が国民のため |
こうした中、11日のNHK「日曜討論」に出演した東京五輪組織委員会の武藤事務総長は、無観客開催に伴う五輪ボランティアの扱いについて言及。「たとえ1日でも活動できるような工夫をしたい」と言っていたが、この発言には驚いてしまう。なぜなら、この直前の時期になっても、ボランティアの計画すら決まっていない、と明かしたに等しいからだ。
「これまでの五輪に見劣りするまがい物になるのは間違いない」
ニュース専門局「フランス24」は、無観客となった東京五輪をこう切り捨てていたが、これが海外のごく一般的な反応なのだろう。それも当然ではないか。
菅首相が「新型コロナに人類が打ち勝った証し」と繰り返し意義を強調していた東京五輪は結局、海外観客の受け入れを断念。国内の観客数も上限をめぐって判断が先送りされた揚げ句、ようやく「定員50%以内で最大1万人」で落ち着いたのかと思いきや、開幕2週間前になって無観客が決定するドタバタぶり。すでに来日している海外の選手団や大会関係者も仰天だったに違いない。開幕後の選手村や競技場の混乱は必至で、とてもじゃないが「安心、安全な大会」なんて程遠い話だ。コロナだけではなく、日本各地で豪雨災害が報告されている中、あらためて五輪どころじゃないだろう。
衆院事務局に30年余り勤めた元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。
「今の状況は、呪われた五輪ならぬ呪われた菅政治と言っていい。どの課題に対しても何一つ十分な対応ができない。今こそ、政治が国民生活に本気で向き合う仕組みづくりに変える必要がある。そんな状況下で、やれ五輪だ、お祭りだ、と能天気に騒いでいる場合ではないのは言うまでもありません」
これでは海外の要人が五輪開会式への出席を躊躇するのも当たり前で、開幕まで3週間を切った時点で出席を表明した首脳級は、2024年パリ五輪開催地となるフランスのマクロン大統領だけ。米国はバイデン大統領の妻ジル氏を派遣する方針と伝えられていたものの、ホワイトハウスのサキ報道官は8日の会見で、「まだ、見極めている」と言葉を濁していた。五輪開会式に出席した要人は12年のロンドンが約80人、16年のリオが約40人。このままだと、東京はジカウイルス感染症の流行で出席者が少なかったリオよりも少ない可能性があるというのだから、何ともお寒い限りだ。
菅官邸は「これでは五輪外交はムリ」と頭を抱えているらしいが、菅は五輪期間中に海外要人と会談して“成果”をアピールするつもりだったのだろう。そうすれば菅のメディア露出も増えるからだ。そこに日本人選手のメダルラッシュが続けば万々歳。日本中が祝福ムードに包まれる中で衆院選に突入すれば勝利は確実。自分も総裁選で再選できる――。おそらく、そんなシナリオを描いていたのだろうが、もはや、すべてが狂った。まっ、それもポンコツ首相の自業自得、すべてのもくろみが破綻したわけだが、そこで出てきたのが総選挙先送りとなる任期満了(10月21日)説だ。
世論調査は政権発足来最低の33%
菅はこれまで、総裁選前の衆院解散・総選挙を繰り返し示してきたが、自民党内では、都議選の敗北やコロナワクチン接種をめぐるハシゴ外し問題、五輪の大コケ必至予想を受け、このままでは「勝てない」との声が続出。そのため、出来得る限り選挙時期を遅らせる案が浮上しているのだ。
公選法は「任期満了による総選挙は任期が終わる日の前30日以内に行う」と定めている。この規定に当てはめると、任期満了選挙の投開票日は原則9月26日、10月3日、同10日、同17日の4パターンとなるのだが、同法では国会開会中であれば選挙日程を遅らせるとの規定もある。仮に任期満了日まで臨時国会を開き、最終日に解散した場合は11月28日の投開票も可能だ。自民党内では、そこまで選挙の時期を先送りできれば、「コロナ対策を任期満了までやり切った政権と国民にアピールできる」なんて声も出ているらしいが、冗談ではない。単純に選挙時期さえ先送りすれば勝てると思っているのだとしたら大間違いで、その浅はかさには改めて唖然としてしまう。
政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「国民世論は今、菅政権に対して一刻も早く解散してほしいと思っている。だから支持率がどんどん下がっているのです。最新のNHKの世論調査でも、菅内閣の支持率は政権発足以来最低の33%です。この状況で、先送りすれば勝てるかも、などと考えているとすれば、どうかしています。それよりも選挙時期をずらすほど、今以上に菅政権の姑息さが浮き彫りになるだけ。五輪開催中にクラスター(感染者集団)でも起これば『ほらみたことか』と、さらに世論批判が高まるでしょう。国民をバカにするのもいい加減にしてほしいと思います」
菅政権はくだらない延命策を考える暇があったら、さっさと退陣するのが国民のためなのだ。