父の日の贈り物を呼びかける店内広告。父子の微妙な関係を表現した
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/582348より転写
<今年もきっと、忘れられてると思ってた。>
20日の「父の日」に向けて大丸京都店(京都市下京区)が打ち出した広告のコピーが買い物客たちのほほ笑みを誘っている。考案したのは、新型コロナウイルス禍で父のありがたさを感じたという京都芸術大の学生で、「父親に感謝を伝えられる日になればうれしい」と話す。
情報デザイン学科4年の一二三(ひふみ)菜月さん(22)。顔を見せずに素っ気なく差し出したプレゼントの紙袋を見て、新聞を広げたまま驚いて固まるお父さん―。親子の絶妙な距離感を表現したイラストとコピーが店内に掲示されている。
産学連携授業の一環で、同店が学生を対象に企画案を募った。一二三さんも父との関係はどこかぎこちなく、父の日にプレゼントしたことは「記憶にない」ほどだった。
一二三さんもコロナ禍で大学がオンライン授業中心になり、家族と過ごす時間が増えた。すると料理や掃除、洗濯、仕事に奮闘する父の姿を間近に感じるようになったという。日頃は言葉に表しにくい感謝の気持ちをきちんと伝えられればと、広告案をまとめた。
大丸京都店の最終審査で、審査員を務めた父親世代の男性幹部たちは一二三さんの発表に心を動かされた。その一人の営業推進部長松本健太さん(45)は、高校3年と中学3年の2人の娘がいるが、父の日にプレゼントをもらったことは「娘が小さい時以外はない」という。一二三さんの提案を「母の日に比べて影の薄い父の日を、逆転の発想で表現していて素晴らしい」と称賛する。
新型コロナの流行下で再び迎える今年の父の日商戦は、「巣ごもり」の在宅時間を快適にするパジャマやタンブラー、万年筆、インテリア時計などが売れ筋といい、同店は「父親との会話のきっかけにしてほしい」と呼び掛ける。一二三さんも今年は父にプレゼントを贈るつもりだ。