※2021年6月15日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年6月15日 日刊ゲンダイ2面
【ウイルスが声明に従うのか】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 15, 2021
バカバカしい G7の五輪支持取り付け
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※文字起こし
G7サミット(先進7カ国首脳会議)は13日午後(日本時間同日夜)、首脳宣言を採択して閉幕した。
宣言では、中国が軍事的圧力を強める台湾に初めて言及。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した一方で、菅首相が意欲を見せる7月23日開幕の東京五輪開催について、「新型コロナウイルス克服に向けた世界の団結の象徴として、安全・安心な形で開催することへの支持を改めて表明する」との声明が盛り込まれた。
閉幕後、菅は声明に五輪支持が明記されたことに対し、「感染対策の徹底、安全・安心の大会について説明し、全首脳から大変力強い支持をいただいた」「(大会を)しっかりと開会し、成功に導かなければならないとの決意を新たにした」と上機嫌で語り、加藤官房長官も14日の会見で、「各国首脳から力強い支持をいただいた。関係者と緊密に連携し、大会に向けた準備を着実に行いたい」などと言っていたが、多くの国民はドッチラケというのが正直な感想ではないか。なぜなら、東京都の新型コロナウイルス新規感染者は約1カ月ぶりに増加に転じる傾向が見られ、感染力の強さが英国型の1・5倍、従来株の2倍とされるインド株の急拡大が国内外で懸念されているからだ。
そんな中で、G7の支持声明が一体、何の役に立つのか。ウイルスが声明に従うとでも言うのか。まったくバカバカしいったらありゃしない。
耳を傾けるべきはG7ではなく国民の声
そもそも冷静に考えれば、G7加盟国のフランスは次の2024年開催のパリ五輪を控えているため、東京五輪を中止しろ、などと主張するはずがない。アメリカやイギリスなども、東京五輪の開催時やその後に日本国内で新型コロナ感染がどんなに拡大しようが直接的な影響は少ないだろう。
いわば当事者意識に乏しい国々の首脳がそろって社交辞令的に「東京五輪頑張って。応援している」と言ったところで、何ら意味がないことは子どもでも分かるだろう。日本の首相として今、真摯に耳を傾けるべきは数人の他国の首脳の声ではない。コロナ禍で厳しい状況にあえぐ日本国民全体の声なのだ。
振り返れば、菅は7日の参院決算委で、東京五輪の開催について問われた際、「私自身は主催者ではない」と薄笑いを浮かべて受け流していた。国会質疑では、主催者ではないから五輪はよく分からない――などとトボケながら、今度はG7声明を「錦の御旗」のごとく掲げ、まるで自分が主催者のように「安全・安心の大会を成功に導かなければ」なんて大ハシャギしているのだからワケが分からない。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏がこう言う。
「声明に五輪支持が盛り込まれたと言っても、議論を踏まえたうえでの結果ではなく、日本政府の意向を酌んで文言が入ったという意味合いが強い。さらに言えば、菅首相の『安全・安心の大会』という前提の努力目標に対して、あえて反対する必要はないという立場を示した支持であり、限定的に解するべきでしょう」
首相がバカなのか、周囲が間抜けなのか分からないが、国民には五輪開催の意義すらマトモに説明できず、こんな無意味なことに血道を上げ、体裁だけを取り繕っているからスッカラカン総理などと揶揄されるのだ。
反中国とアジア分断の策謀に協力する代わりに五輪支持を得る愚 |
もっとも東京五輪をめぐる菅の詭弁は今に始まったことではない。
就任当初、菅は五輪開催の意義について、記者会見や国会で「人類がウイルスに打ち勝った証し」と繰り返してきた。
ところが、1月に緊急事態宣言を発令して以降、このフレーズは徐々に見られなくなり、4月のバイデン米大統領との日米首脳会談では、東京五輪は「世界の団結の象徴」に位置づけが変化。さらに「安全・安心な大会」も強調するようになり、首脳会談後は今回と同様、バイデンから「(五輪開催の)支持を得た」などと猛アピールしていたが、一体、「人類がウイルスに打ち勝った証し」はどこに消えたのか。全くいい加減な話で、菅の発言には意味も価値も感じられない。
おそらく五輪開催の意義がコロコロ変わるのは、すでにウイルスとの闘いに惨敗している状況から国民の目をそらせたい思いもあるのだろう。ただ、ハッキリしているのは、菅には多くの国民が抱いている、「なぜ、このコロナ禍において東京五輪を強行開催するのか」という当たり前の疑問や懸念に対する答えはもちろん、総理大臣として開催に至る確固たる信念もないということだ。
だから五輪開催を正当化するためにはバイデンやG7の「お墨付き」を得るしかない。相変わらず、すべてが後付けの屁理屈で、そうやって国民の目をゴマカシ、欺き続けるのが「スガ政治」の常套手段なのだ。
G7以外の国・地域は五輪支持に鼻白む
<G7 菅首相 議論を宣言に反映と評価 五輪開催「全首脳が支持」>(NHK)
<首相、五輪開催は「全首脳から支持」 G7声明でも言及>(朝日新聞)
そして、そんな五輪ありきの世論誘導といってもいい「G7声明」を大々的に報じる日本の大メディアもどうかしている。
五輪は「五輪憲章」で政治利用が厳しく禁じられている。それなのに菅は、G7という国際的な政治の舞台を利用して五輪支持を訴えたわけで、大メディアが取り上げるべきは「五輪支持」ではなく、菅の「五輪憲章」に触れるやり方ではないのか。
それに新型コロナで深刻な状況に陥っているのは、G7以外の国や地域が圧倒的多数を占める。そんな中で、日本を除いて、すでに国民の大半がワクチン接種を終えているG7のメンメンが「五輪支持」を叫んだところで、G7以外の国や地域は、鼻白んでしまうに違いない。
G7は1980年代後半に世界のGDP(国内総生産)の7割近くを占めていたが、今は中国などの台頭で4割程度に低下。影響力を含めた形骸化が著しく、今や政治ショーにもなりゃしないG7とはいえ、存在意義が問われる中でバカげた声明に付き合わされた各国首脳もいいツラの皮だろう。
政治評論家の森田実氏がこう言う。
「菅首相は、五輪をやりたいのであれば、自分の言葉ではっきりと意思表示すればいい。それなのに国会では思い出話ではぐらかすだけ。政治家としての覚悟がないのです。そして米英という落ち目の国が顔をそろえたG7の場で、反中国、アジア分断という策謀に協力する代わりに五輪支持を了承してもらったわけで、これは国益にとっては百害あって一利なしです」
政権維持と自分ファーストのために五輪に突き進む菅には一刻も早く退場を突き付けるしかない。
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<話を盛るなよ!菅首相>五輪開催「力強い支持」のマヤカシ G7首脳は塩対応だった(日刊ゲンダイ)
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