コロナショック、日本中で“20・30・40代”の「貧困」がヤバくなってきた!
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83344
2021.06.02 鈴木 貴博 現代ビジネス
【前編はこちらから】→『日本経済の「真実」…じつは“コロナ以前”から「ヤバすぎる不況」になっていた!』
日本経済の「低迷ぶり」が顕著になってきた。新型コロナウイルス危機の直撃を受けて、2020年度の日本のGDPはリーマンショックを超える「戦後最大の落ち込み」となり、いまだに浮上する気配すらない。一方で、日本経済は1年半以上の長きにわたる「戦後最大の不況」が進行しているはずなのに、日本国民がその「実感」を感じにくくなっているのはなぜか――。
著者はそこには「3つの要因」があって、1つには日本人口のうち3800万人を占める高齢者がコロナショックによる経済危機の影響をあまり受けていないことが背景にあるという。では残りの2つはなにか。そこから日本経済の「意外な真実」が浮かび上がってくるのだ。
経済危機に直面する「3分の1の人たち」
今回のコロナショック、日本に3800万人いる高齢者にとっては経済的なショックは、ほぼほぼ関係ありません。なにしろ年金はこれまでと同じ金額で振り込まれていて心配する必要がないからです。
では労働者はどうでしょうか。
日本の労働者人口の大半を占める雇用者人口のうち、3500万人が正規労働者、2200万人が非正規労働者です。そして今、経済的に一番のショックを受けているのがこの2200万人の非正規労働者層ということになります。
もちろん正規労働者の中にも会社の業績が悪化していてこの先の雇用が確保できない方も少なくないことは知っています。しかし一方で大企業のようにほぼほぼ雇用を失う心配のない企業に勤める正規労働者も少なくはない。
さらに言えば、コロナでも減収をまったく心配していないのが公務員や準公務員です。行政に関わっている職員の方々にとっては、コロナは日々の仕事を忙しくしている社会現象であって、雇用を奪うものではないのです。
こう考えると、本当に経済的に危機を感じているのは非正規労働者の大半と正規労働者のうちの3分の1程度。日本の成人人口を約1億人として全体で見れば、3分の1が経済危機を感じている一方で、感じていない人が3分の2もいる。
このような社会の分断状況ができあがっていることが分かります。
富裕層は「安泰」…?
要因2 株価が下がっていない |
経済としてのショックが小さいふたつめの理由として株価が下がっていないこと、むしろコロナショックが始まる直前と比べて日経平均が上がっているという要因があげられます。これは消費をけん引する富裕層の資産が安泰であることを意味しています。
コロナショック下で株価が上昇し続けた理由は日本銀行が上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REET)を買い続けていたからです。今、トヨタやソフトバンクグループ、ファーストリテイリングなど名だたる日本の大企業の第二位の株主が日本カストディ銀行口や日本マスター信託口となっています。
これはETFが株主だと言っているようなもので、ひいては日銀が第二位の大株主になっていることを暗示している可能性すらあるわけです。
これはある意味でリーマンショックから金融庁や日銀が学んだ危機回避策だと言えるわけですが、このような人工的な株式買いの結果、経済危機が表面化していないという事情があることは、それがいつか悪い方向に転じる可能性があることも、念頭においておいたほうがいいと思います。
いま世界で起きている「本当のこと」
要因3 グローバル経済は復活している |
さて、三番目の要因ですが、ワクチン接種が進んでいるアメリカやイギリスなど海外では経済が復活を始めています。特に重要なのは中国の経済が2020年のコロナ下ですら経済成長を維持していたことです。
実は昨年の今頃、私はコロナショックの最悪のシナリオとしてスタグフレーションを危惧していました。
不況でありながら生産力が低下することで物不足になって、結果として狂乱物価が起きるという最悪のシナリオです。
これは私のようにオイルショックを経験している世代にとっては恐怖そのものでしかないシナリオです。昨年、マスクやトイレットペーパーが不足したときのことを思い出していただけるといいのですが、必需品が手に入らないとなるとマスクひと箱5000円であってもみんなが買おうとして、一部商品の価格が高騰していたわけです。
それがマスクやトイレットペーパーだけでなく、グローバル経済がストップして豚肉や冷凍食品、日用品からガソリンまで、すべての財が足りなくなっていたとしたら、昨年、世界でスタグフレーションが起きていてもおかしくはなかったのです。
もちろん不足する商品もありましたが、幸いにしてコロナ禍の中でも世界経済は止まることがなく、おおむね生活物資は安定して手にすることができました。グローバル経済が止まらなかったことでコロナ不況は最悪の不況にはならなかったのです。
「コロナ貧困」が広がり始めている
結論 ではこれから何が起きるのか? |
このように数字面では戦後最大となる2020年度のコロナ不況ですが、それが体感的にはそれほどでもないと感じる人が少なくない理由があることはご理解いただけたでしょう。しかしこれから先、いったいどのようなことが起きるのでしょうか?
私は安心してはいけないと思います。
まず大きな問題は若い労働力として社会を支えている20代から40代の世代が経済的に疲弊していることです。この世代にさきほど述べた非正規労働者の層が多いことからも、事態の深刻さがわかります。
家計調査など消費の内訳がみられる統計を調べると、コロナ禍で消費が1割ほど抑えられている傾向をみることができます。それが社会全体の平均だとすると、所得の少ない層はさらに切り詰められるだけ生活を切り詰めていることが統計データからも読み取れます。
足元の経済状況を見ると、むしろ民間の在庫は積み増されています。いいかえると需要が少ないことの方が問題で、そこがこの先の不況の焦点となりそうです。要するにコロナ禍で貧困が広まり始めている。これは社会的に大きな問題です。そしてそれを好転させるには景気を回復させなければいけない。
たとえば飲食店が連日満席になったり、アパレルのお店が賑わったりして、企業がもっと人を雇わなければいけなくなる状況が必要です。
2021年、日本経済への「不安」
ところがコロナ禍の悪影響で、生活に余裕のある消費者もお金を使わない生活に慣れてきたという別の問題が生まれています。
私自身の状況を話しますと、コロナ以前は毎週3回ぐらい誰かと会食の予定が入るのが日常でした。そうやっていろいろな人と会い、食事をしながら情報収集、情報交換をする。それで経済のアイデアがうまれていく。これがコロナで激減しました。
特にコロナ下では会食自体が悪とされ、東京都の緊急事態宣言ではついに飲食店でのアルコール提供まで止まりました。仕事はリモートで自宅から、飲食店に行ってもアルコールは飲めないとなると外食は減るものです。私に限らずビジネスパーソンというものは、昼間出勤しているからこそ「帰りに新橋駅前で一杯やっていこう」という気になるのです。
そして人と会わなくなると服装も気にならなくなる。
今日、私はこの記事を書くにあたって久しぶりに新品のシャツをおろしてみました。ジル・サンダーの高級なシャツで、身に着けてみると気持ちは引き締まるのですが、いかんせん、誰に見せるわけでもない。やってみて改めてわかったことは、人に会わなければ別に服は新しくなくてもいい。そのような生活様式の変化が日本中で起きています。
結局のところ、人がたくさん動いて、それで世の中にカネが回りめぐるようにならないとコロナ不景気からの回復はままならない。そう考えると2021年の景気回復のカギは、オリンピックとGoToということになるのでしょうか。
言い換えるとこれまでの状況以上に、2021年のこれからの日本経済の先行きに私は不安です。
前回記事
日本経済の「意外な真実」…じつは“コロナ以前”から「ヤバすぎる不況」になっていた!(現代ビジネス)
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