スポーツ興行優先順位は命の問題より下
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2021年5月 1日 植草一秀の『知られざる真実』
“The situation is under control.” 2013年9月7日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されたIOC総会で安倍晋三氏がこう述べた。 「フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。 状況は、統御されています」 その福島原発事故の発生を受けて、2011年3月11日に 「原子力緊急事態宣言」 が発令された。 この「原子力緊急事態宣言」はいまなお解除されていない。 日本はいまなお「原子力緊急事態」の下に置かれている。 福島第一原発の1号機、2号機、3号機で原子炉が溶融した。 メルトダウンした。 1号機の核燃料はメルトダウンし、格納容器を突き破って地中に落下したと見られている。 映画『チャイナ・シンドローム』で描かれたメルトスルーだ。 原子炉格納容器には核燃料を冷却するための水の注入が続けられているが、格納容器が損傷して、大量の放射能汚染水が流出している。 その一部をくみ上げて原発敷地内のタンクに貯蔵しているが、まもなくタンクが一杯になる。 多くは外部流出し続ける状態にあると思われる。 菅内閣はストロンチウムなどを除去できていない放射能汚染水を太平洋に放出する方針を決めた。 このことについて安倍元首相は2013年9月7日にこう述べた。 「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされています」 「息を吐くようにウソをつく」 と表現されてきた安倍首相の言動。 「原発がアンダーコントロール」も「汚染水は完全にブロック」も真っ赤なウソ。 その日本でいま、コロナ感染症に関する「緊急事態宣言」が発令されている。 これも菅首相に言わせれば「アンダーコントロール」なのだろうか。 「緊急事態宣言」を発令しながら五輪聖火リレー実施を強行する。 五輪聖火リレーの実態は大手スポンサーの街宣大行進。 大音響を鳴り響かせて人為的に密集、密接を創出する。 コロナ感染は密集、密接、密閉の三密がそろわなくても拡大する。 一密も二密もリスクがある。 五輪開催のために感染抑制が重要と言いながら、感染拡大推進聖火リレーを強行する。 政府と組織委員会の知能が低すぎるのではないか。 大阪では医療崩壊が生じている。 大阪府知事のマネジメント能力不足が主因ではあるが、医療資源が不足して救える命を救えない状況が生まれている。 感染症拡大で国民の命と健康が重大リスクに晒されているときに、五輪に医療資源を融通する余裕はない。 組織委員会が五輪に看護師500人の派遣を要請して総スカンを食らっている。 当然の反応だ。 菅首相は「休んでいる人がたくさんいるから問題ない」と発言したが、休んでいる人が医療資源を提供できるなら、まずはコロナ対応に充当するのが当然だ。 欲ぼけで寝ぼけた発言をまき散らすのはやめた方がいい。 棚からぼた餅ではあっても、曲がりなりにも一国の首相である。 首相の第一の責務は国民の命と暮らしを守ること。 国民の命を犠牲にしてスポーツイベントにうつつを抜かすことの罪深さを自覚するべきだ。 日本は国民主権の国。 憲法でそのように定めた。 その主権者である国民の7割以上が東京五輪を中止または延期すべきと判断している。 感染状況は日を追うごとに悪化している。 緊急事態宣言もあまりにも中途半端だ。 中途半端ぶりが半端でない。 いい加減に目を覚まして五輪中止をアナウンスするべきだ。 |