中国との友好的関係を強化、朝鮮半島の安定化を図る文在寅政権への攻撃
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2020.12.07 櫻井ジャーナル
中国の王毅外交部長(外相)が11月24日から25日にかけて日本を、また25日から27日にかけて韓国を訪問した。日本はアメリカの属国として王外相の来日の直前、11月17日にオーストラリアと相互アクセス協定(RAA)で合意、その日からオーストラリアやインドとアラビア海で艦隊演習を実施して中国を軍事的に威嚇しているが、韓国は中国との関係を深めようとしてきた。
今回、王外相は康京和外相と会談して習近平国家主席の韓国訪問や朝鮮半島の非核化などについて話し合い、2021年から文化交流を準備して経済協力を促進することで合意した。さらに文在寅大統領を表敬訪問し、外務省や与党の幹部とも会っている。
文在寅大統領は朝鮮半島の軍事的な緊張を緩和し、東アジアを安定させようとしてきたのだが、そうした政策を世界に印象づける出来事が2018年4月27日にあった。文在寅大統領が朝鮮の金正恩委員長と板門店で会談したのだ。その直前、3月26日に金委員長は特別列車で北京へ入り、釣魚台国賓館で中国の習近平国家主席と会談している。その年の9月18日と19日、文大統領と金委員長は平壌で会談、年内に鉄道と道路を連結する工事の着工式を行うことで同意したという。
韓国、朝鮮、そして中国の動きの背景にはロシアの政策がある。ウラジミル・プーチン大統領には天然ガスを軸にして、物や人の交流を盛んにして地域を安定化させるというプランがあり、そのプランに従ってドミトリ・メドベージェフ首相は2011年にロ朝鮮の最高指導者だった金正日とシベリアで会い、110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると提案している。
ロシアは天然ガスのパイプラインや鉄道をシベリアから朝鮮半島の南端まで延ばす一方、朝鮮の地下に眠る資源を開発しようと考えていた。そのプロジェクトに金正日は同意するのだが、2011年12月17日に急死してしまう。列車で移動中に車内で急性心筋梗塞を起こしたと朝鮮の国営メディアは19日に伝えているが、韓国の情報機関であるNIS(国家情報院)の元世勲院長(2009年〜13年)は暗殺説を唱えていた。元院長によると、金正日が乗った列車はそのとき、平壌の竜城駅に停車していたという。
ところで、文在寅と金正恩の会談実現にアメリカは関与していない。東アジアにおけるアメリカの影響力が弱まっているわけだが、その現実を誤魔化すため、アメリカ政府はCIA長官だったマイク・ポンペオが金正恩委員長と握手している様子を撮影した写真を2018年4月26日に公開した。撮影日は中朝首脳会談の直後だ。
2019年2月27日から28日にかけてアメリカと朝鮮の首脳はベトナムのハノイで会談するが、合意に至らなかった。原因は国家安全保障補佐官だったジョン・ボルトンやマイク・ポンペオ国務長官にあると言われているが、歴史的にイギリスやアメリカの支配者は朝鮮半島を制圧、そこを橋頭堡として中国やロシアを攻める戦略を立てている。その戦略の中で日本人は傭兵と位置づけられているはずだ。
朝鮮側の説明によると、ハノイでの会談で朝鮮が制裁を部分解除する条件として核施設の廃棄を提示したのだが、アメリカはそれを拒否して核プログラムの完全的な廃棄を要求、さらに生物化学兵器も含めるように求めたのだとされている。全面降伏の要求であり、朝鮮側が受け入れるはずはない。
アメリカはイギリスと同じように中国やロシアを制圧し、世界の覇者になるという戦略を持っている。日本列島から台湾にかけてはそのための拠点であり、朝鮮半島は橋頭堡だ。朝鮮半島の平和はこの戦略にとって好ましくない。文在寅大統領は障害になる。
アメリカの支配者にとって好都合なことに、韓国の検察当局は文在寅の側近を攻撃、政権を揺さぶり始める。2019年9月9日に大統領に近い゙国が法務部長官に就任すると、検事総長だった尹錫悦に率いられたソウル東部地検刑事6部ばを起訴、゙は10月14日に辞任を表明した。ちなみに、尹は自他共に認める保守派で、ミルトン・フリードマンの新自由主義を信奉している人物だとされている。日本でも似たようなことがあった。
゙が大統領府民情首席秘書官を務めていた2017年、当時の金融委員会金融政策局長に対する監察を中断した疑いだが、゙本人は容疑を否定、「結論ありきの捜査」だと批判している。
また、やはり文在寅の側近と言われ、次期大統領候補だった慶尚南道知事の金慶洙が2020年11月6日、インターネット上での違法な世論操作に関わったとして懲役2年の判決を言い渡され、本人は「到底納得できない」として上告した。
アメリカには巨大金融資本の影響下にある情報機関がプロジェクトとして情報を操作、最近では情報機関と協力関係にあるインターネットやコンピュータ業界の大手企業が検閲作業を行っているが、その当事者が処罰されそうにはない。支配者が行っているからだ。勿論、日本でも情報操作はあるが、支配者によるものは問題にならない。
ところで、アメリカのスティーブン・ビーガン国務副長官が12月7日の週に韓国を訪問して政府高官と会うようだが、中国との合意を守るなと釘を刺すつもりだろう。