アメリカ風アジア版NATOは、どれほど永続的か?
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2020年11月 6日 マスコミに載らない海外記事
2020年10月30日
ウラジーミル・オディンツォフ
New Eastern Outlook
アメリカは、世界中の様々な地域で戦争の炎を煽り、全世界を、アメリカだけに従属する軍事ブロックと武力連合に巻き込むのに専念しており、近年、ワシントンの命令に従うことを拒否する国々に対する軍事同盟を意図的に作る取り組みを始めた。
特にこのために、2018年、アメリカは、その主目的がイランとの対決の、いわゆる「アラブNATO」を作ることを思いついた。ホワイトハウス戦略家に策定された計画によれば、この種の新軍事ブロック- 中東戦略的提携(MESA)- の顔ぶれは、ペルシャ湾岸の六カ国を含むはずだった。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、オマーンと、エジプトとヨルダンと、バーレーン。アラブ諸国のこの広い連合を構成するという考えは、いわゆる「アラブの春」の後、2011年に、ホワイトハウスで始まり、このプロジェクトは、アメリカとイラン間関係のさらにもう一つの燃え上がりを背景に、再び重要なものとなった。だがアメリカが計画したMESAメンバー間での、イランの脅威に対する異なった姿勢ゆえ、このホワイトハウス「プロジェクト」はまだ発展し始めていない。
そこで、一年前に、ドナルド・トランプ大統領が行った、NATOは、ロシアだけ監視するのではなく、中国も監視すべきだという主張の実行として、ホワイトハウスは、最近いわゆる「アジアNATO」を作る積極対策を始めた。これは特に、最近のアメリカ・インド・フォーラムで、スティーブン・ビーガン国務副長官が、アジア太平洋地域に強力な集団を作る計画を発表した。ワシントンの考えでは、それは最初は、アメリカ、日本、オーストラリアとインドを含み、後に韓国、ニュージーランドとベトナムも含むのだ。アメリカ当局者が言った通り)「未来の連合は価値観と利害関係を共有する国々を含むことになり」それは、ビーガンの計画によれば、この軍事ブロックは、インド-太平洋地域のみならず、世界中からより多くの国々を参加するよう惹きつけられるはずだ。
10月4-6日東京で開催された、対中国の話題が支配的だった4カ国戦略対話で、アメリカのマーク・エスパー国防長官が「アジアNATO」のアイデアを実務レベルで実現する試みをした。この「対話」はアメリカ、インド、オーストラリアと日本で構成され、元々、2007年、中国との関係危機の際、日本の安倍晋三首相が始めたものだ。最近、この「対話」の反中国の狙いが復活したが、今それは日本より、アメリカに推進されている。東京の会談に出席したマイク・ポンペオ国務長官は「アメリカ・パートナーを、中国による搾取、汚職と強要から守るため、協力が今までより一層重要だ」と述べた。
シンガポールの国際戦略研究所IISS、アジア太平洋安全保障の上級研究員アレクサンダー・ネイルは、この種の反中国ブロックを作る必要性に関するアジア太平洋地域での団結の欠如を考えれば、ワシントンが、それほどあからさまではないものの、この話題を4カ国対話で議論したがった理由の一つは、インドを、この発想支持に引き込みたいと望んだことだと述べている。だがインドは、政治でも軍事、技術問題に関して、そして協力でも、その結びつきを多様化するつもりなので、デリーがこれを必要とするかどうかは決して確実ではない。そしてそれゆえ、インドはアメリカからだけではなく、ロシアからも積極的に兵器を購入しており、アジアで軍事ブロックを組織するというワシントンの考えに対する一方的支持は、デリーが既得権を持っている軍事分野を含め、ロシア-インドの結びつきに悪影響があるのは確実だ。
だが、ホワイトハウスによるこの計画の進路を阻む他の重大な障害がある。それらは既に菅義偉新首相により、インドネシアで10月21日に公式に示された。特に、日本は北大西洋条約機構(NATO)のアジア版を作るつもりかと問われて、菅首相はこう述べた。「南シナ海の我々の行動は、特定の国を対象にしたものではない」。
時々地域での北京の活動に対する東南アジアのある特定の政治家の演説で聞かれる批判にもかかわらず、彼らは概して、アメリカか中国か選択をしなければならない可能性を避けようとしている。シンガポールのリー・シェンロン首相が、ずっと昔に、これについて、はっきりと語っていた。「もし、人が、バリケードの反対側にある二つの国々の友人なら、時に彼らの両方と仲良くやれる。一方に加担しないで済むのが最良だと私は思う。」
更に、新「アジアNATO」のレベルで軍事協力をするには、アメリカが軍と阻止手段を近代化し、核軍縮プロセスを終わらせ、新しい使用可能な/戦術弾道ミサイルのための資金を増やす必要があるが、それはこれまでのところ起きていない。そしてこれはアジアで、反中国、親米軍事ブロックを作るという問題が未決定状態だという証拠だ。
確かに、ワシントンがこの考えを実行するのを抑制している要因の一つは、中国が、地域における最有力の立場と、近隣諸国との親密な貿易、商業的(一部の場所では、イデオロギー的、政治的な)絆を利用して、自身の「アジアNATO」を作る可能性があることだ。既に一年前、習近平は、アジア諸国の指導者に、地域の防衛力を強化するため、アジアで新安保体制を作るよう促した。だが、中国は、自国の行動の自由を奪い、アメリカの公然の敵対者に変えるので、どうやら誰かと反米協定を設立することに特に興味を持っていない。国際舞台においては、平和的言説が中国のイメージのままだが、北京は軍強化が重要な目的であり続ける事実を隠していない。
最近、世界中で、アメリカと、非アメリカ部分への分極化のプロセスが起きていることは誰にも明白で、中東だけでなく、ワシントンの軍事命令が、既に辛らつな批判を受けている他の地域でも、反米感情が益々強くなっている。だから、ユーラシアでは(世界中の多くの他の地域でも同じように)「アメリカ風民主主義」に賛同しない、ユーラシア大陸全体の国々を、孤立した国家から、統合戦略軍事ブロックへと変え、一種の大陸安全保障ベルトが最終的に作られるだろうと想定できる。そして、この多くが、正真正銘、今後数十年にわたり、アジア太平洋地域での国際政治情勢の調子を既定する能力を持っている北京に支持された政策に依存するのは確実だ。
ウラジーミル・オディンツォフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/10/30/how-enduring-is-the-american-style-asian-version-of-nato/
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