<5>もし僅差で負けたら…トランプが強行する3つのシナリオ 大混乱必至 11.3米大統領選直前リポート
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2020/10/24 日刊ゲンダイ
米国史に汚点(トランプ米大統領)/(C)ロイター
連載の最終回ではトランプ大統領が「負けた」ところから書き進めたい。米国時間11月3日、投開票日の夜になっても郵便投票の開票作業は終わらず、決着はついていないはずだ。だが早晩、民主党バイデン氏が当選に必要な選挙人過半数(270)を獲得することになるだろう。
この時、バイデン氏が激戦州をいくつも奪って圧勝すれば、トランプ氏は敗北を認めて政権移譲せざるを得なくなる。だが郵便投票の開票作業に手間取り、さらに僅差でのバイデン勝利になった場合、状況は複雑化する。というのも9月23日、トランプ氏は「以前から郵便投票には強く抗議している。郵便投票はやめてほしい。それでなければ移譲はないだろう。政権は続行する」と強気の発言をしているからだ。
ここから3つのシナリオを記したい。
1つ目は、民主党有権者の方が郵便投票を行う比率が高いため、トランプ氏が大統領権限を使って、開票作業を打ち切らせて、勝手に勝利宣言をしてしまうケースだ。
2つ目のシナリオは、トランプ氏が「郵便投票に不正があった」と訴えて、裁判所に選挙結果の無効を申し立てる場合である。共和党に考えが近いエイミー・バレット判事を最高裁判事に指名し、上院での承認手続きを急がせたのも、こうした背景があると考えられる。
3つ目のシナリオはトランプ・バイデン両氏が競り合い、両氏とも過半数の選挙人を取れなかった場合である。この時は憲法修正第12条の規定により、「連邦下院で投票を行って大統領を選出する」ことになる。この場合、下院議員435人に1票ずつが与えられるわけではない。50州に1票ずつが割り当てられて投票される。現在共和党が26州で過半数を維持しているため、同シナリオになった時はトランプ再選の可能性が高くなる。
居座りなら市民暴動も |
いずれにしても、トランプ氏の言動を見る限り、同大統領が素直に敗北を認めて政権を移譲する可能性は低いように思える。ただ、法を無視してホワイトハウスに居座り続けた場合、政府・議会からの反発だけでなく、市民暴動が勃発することも考えられる。いずれにしても第45代大統領(トランプ氏)は米国史に汚点を残した大統領ということになる。
(おわり)
堀田佳男 ジャーナリスト
1957年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業、アメリカン大学大学院国際関係課程修了。米情報調査会社などを経て1990年に独立。以来、ワシントンDCを拠点に政治、経済、社会問題など幅広い分野で取材・執筆。25年間の滞米生活を経て2007年帰国。国内外で精力的にジャーナリスト活動を続ける。著書に「大統領はカネで買えるか」「大統領のつくりかた」「エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明」など。