ポンペオ国務長官が東京で日本、インド、豪州の代表と会った目的
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2020.10.10 櫻井ジャーナル
アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は10月6日、東京で日本、インド、オーストラリアの代表と会い、中国との戦いについて話し合ったが、それに続いて8日には岸信夫防衛大臣が横田基地で在日米軍のケビン・シュネイダー司令官と会談した。
本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカは2018年5月、太平洋軍という名称をインド・太平洋軍へ変更、太平洋からインド洋にかけての海域を一体のものとして扱うことを明確にした。日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点にし、インドネシアが領海域をつなぐ構図になるという。
今回、ポンペオは日本とインドのほか、オーストラリアの代表と会っている。オーストラリアは1951年9月1日にサンフランシスコのプレシディオ(第6兵団が基地として使っていた)でニュージーランドやアメリカと軍事同盟を組織している。
言うまでもなく、この3カ国はアングロサクソン系。オーストラリア(A)、ニュージーランド(NZ)、アメリカ(US)をつなげてANZUSと呼ばれている。ちなみに、日本とアメリカは同じプレシディオで1951年9月8日に安保条約を締結した。
ANZUS構成国にカナダとイギリスを加え5カ国は情報活動を中心とする連合体を編成している。いわゆるファイブ・アイズだ。その起源はイギリスとアメリカとの間で1943年5月に結ばれたBRUSA協定。第2次世界大戦後、それを核とする電子情報活動を目的としてUKUSA協定が締結された。
UKUSA協定はUKとUSAの電子情報機関、つまりGCHQとNSAの連合体で、残りの3カ国の機関はその指揮下にある。つまりファイブ・アイズとは米英の支配者がカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの政府を監視する仕組みでもある。そのファイブ・アイズと協力関係を結びたいと河野太郎防衛大臣は8月12日に語った。すでにイスラエル軍の電子情報機関、8200部隊(ISNUとも呼ばれている)はファイブ・アイズと協力関係を結んでいる。
オーストラリア政府とニュージーランド政府はファイブ・アイズの犠牲になっている。そのひとりは1972年12月にオーストラリアの総選挙で勝利した労働党のゴウ・ウイットラム。
1973年9月11日にチリではCIAを後ろ盾とする軍事クーデターがあったが、それに関する情報を手にしていたウイットラムはASISがCIAに協力していたことを知っていた。そこで彼は自国の対外情報機関ASISに対し、CIAとの協力関係を断つように命令する。さらに同政権の司法長官は1973年3月、重要な情報を政府に隠しているという理由で対内情報機関ASIOの事務所を捜索させ、翌年8月には情報機関を調査するための委員会を設置している。(David Leigh, "The Wilson Plot," Pantheon, 1988)
そこで米英の情報機関はウィットラムの排除を決断。1975年11月にCIAはイギリス女王エリザベス2世の総督であるジョン・カー卿を動かし、ウイットラム首相を解任した。アメリカのジャーナリスト、ジョナサン・ウイットニーによると、カーは第2次世界大戦中にオーストラリア政府の命令でアメリカへ派遣され、CIAの前身であるOSS(戦略事務局)で活動している。(Jonathan Kwitny, "The Crimes of Patriots," Norton, 1987)工作の内容は女王にも報告されていたという。
また、ニュージーランドでは1984年7月に首相となった労働党のデイビッド・ラングが犠牲になっている。ラングは反核政策を掲げ、米英から嫌われていた。そのニュージーランドに停泊していたグリーンピースの船、レインボー・ウォリアーをフランスの情報機関DGSEは1985年7月に爆破したが、その情報を事前に入手していたにもかかわらず、UKUSAはニュージーランド政府に警告していない。(Nicky Hager, "Secret Power," Craig Potton, 1996)
現在、日本が巻き込まれている軍事戦略の動きは中心にアメリカとイギリスが存在している。この戦略は19世紀から続いているが、それを理論化したのはハルフォード・マッキンダー。この理論は1904年に発表されている。
彼は世界を3つに分け、ひとつはヨーロッパ、アジア、アフリカの「世界島」、ふたつめはイギリスや日本のような「沖合諸島」、そして最後に南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」と名付けた。世界島の中心がハートランドで、具体的にはロシアを指している。
世界を支配するためにユーラシア大陸の周辺部を支配、そこからロシア/ソ連や中国のような内陸国を締め上げていくという戦略で、日本列島は重要な拠点であり、日本人は重要な傭兵だ。
ユーラシアを囲む三日月帯はインド、東南アジア諸国、朝鮮半島を結ぶ。その西端がイギリスであり、東端が日本だ。その途中、中東に空白地帯があった。そこにイギリスはイスラエル(1948年)とサウジアラビア(1932年)を作っている。スエズ運河の重要性もわかるだろう。
ポンペオも日本政府もこの長期戦略に従って動いている。