EUとロシアが天然ガスを通じて関係を強化することを阻止しようと必死の米国
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2020.09.05 櫻井ジャーナル
EU諸国とアメリカとの間で深刻な利害の対立が存在する。その象徴がロシアからEUへ天然ガスを運ぶため、2012年から稼働しているノードストリームに並行する形で建設中のパイプライン、ノード・ストリーム2。ロシアやEUの会社が建設で合意したのは2015年である。
アメリカは2014年にウクライナでネオ・ナチを使ってクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除している。ウクライナではヨーロッパへの憧れが強い人びとが西部に住み、ロシアへの親近感が強人びとが東部や南部に住んでいる。東部や南部の人びとに支持されていたのがヤヌコビッチだ。
アメリカにとって、ウクライナを属国化する大きな意味はふたつ。ひとつはロシアとの国境近くへアメリカの手先の軍隊を配置、軍事的なある力を強めること。ウクライナにも生物兵器の研究施設を作っていた。もうひとつはロシアからEUへ天然ガスなどエネルギー資源を運ぶパイプラインをコントロールすることでEUとロシアとの関係が強まることを防ぐことだ。バルト海を通るノード・ストリーム2の建設は、そうしたアメリカの作戦に背く行為にほかならない。
その後、アメリカはノード・ストリーム2の建設を止めるため、さまざまな圧力を加えてきた。建設に携わる会社は「制裁」の対象になっている。こうしたアメリカの経済戦争に対し、EU諸国は主権の侵害だと批判していた。
そうした中、ロシアでの支持率が2%にすぎないアレクセイ・ナワリヌイという反プーチン派の有名人が昏睡状態になったわけだ。本ブログではすでに書いたが、オムスクの病院の医師によると、昏睡状態になった原因は低血糖。彼は糖尿病を患っていることから、糖尿病性ショックとも呼ばれる重度の低血糖が原因だと見るのが常識的だろう。
それに対し、ナワリヌイの広報担当者は空港のバーで飲んだ紅茶の中に毒が入れられていたと主張したが、その紅茶を運んで来たのは、ナワリヌイと一緒に紅茶を飲んでいた人物。これは空港のCCTVで確認されている。
ナワリヌイ側はドイツへの搬送を強く要求、ドイツ軍の研究機関は証拠を示すことなく、軍事レベルの神経ガスが使われたと発表した。そうした猛毒の物質が使われたにもかかわらず、本人は命に別状がなく、周囲にいた人にも異常は見られない。この発表を受けてアンゲラ・メルケル首相はロシア政府を強く批判したが、そのメルケルに対し、アメリカの有力メディアはノードストリーム2の建設中止を強く求めている。
EU諸国とアメリカとの対立はNATO内部の不協和音にもつながる。先月、ドナルド・トランプ大統領がドイツに駐留しているアメリカ軍3万4500名の中から1万2000名を引き上げ、ポーランドに駐留する部隊を1000名増やすと発表した。この出来事でもアメリカとドイツとの関係は揺らいでいることがわかる。ナワリヌイの出来事が誰の利益になるかは言うまでもないだろう。