※2020年6月27日 朝日新聞 紙面クリック拡大
名古屋本社版朝刊一面トップ。 / リニア、27年開業困難に 静岡知事、準備工事認めず 品川―名古屋:朝日新聞デジタル https://t.co/rlu2tmU88h
— 三河人@いくじなし (@mikawa_1964) June 26, 2020
水だけの問題でしょうか。山(国立公園も含まれてる?)や市街地の地下にトンネル掘って、消費電力問題も抱え、49分時短になる事にどれほどのメリットがあるのでしょうか?デメリットの方が甚大です。リニア、27年開業困難に 静岡知事、準備工事認めず 品川―名古屋 https://t.co/P2tl9uZlgb
— kingyo (@catpeanuts) June 26, 2020
リニア、27年開業困難に 静岡知事、準備工事認めず 品川―名古屋
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14527976.html
2020年6月27日 5時00分 朝日新聞
リニア中央新幹線の南アルプストンネル工事について会談する静岡県の川勝平太知事(左)とJR東海の金子慎社長=26日、県庁、代表撮影
南アルプストンネル工事のイメージ
リニア中央新幹線の品川(東京)―名古屋間の2027年の開業が遅れる公算が大きくなった。JR東海が6月中の着手が必要としていた静岡県内の工事の準備について、川勝平太知事は26日、「認められない」と明言。環境問題をめぐって溝が埋まっていない。▼2面=見えぬ出口
大阪延伸、影響も
川勝知事とJR東海の金子慎社長は同日、県庁で同問題をめぐって初めて会談した。JR東海は準備工事に6月中に着手できなければ「27年開業が困難」と言及しており、トップ会談で打開を図ろうとしたが、平行線に終わった。
金子社長は会談で、トンネル工事に先立つ作業場整備などの準備工事に理解を求めた。トンネル掘削とその後の試験などを合わせ7年半ほどかかるため、「作業はぎりぎりのタイミングだ」と述べた。
南アルプスを貫くトンネルの静岡工区(8・9キロ)で、飲料水や工業用水に使う大井川水系の流量が減ることを県側が懸念し、着工に同意していない。工事には河川法にもとづき知事の同意が必要となる。同工区は屈指の難工事だが、計画より3年近く遅れている。
JR東海の求めに対し、川勝知事は、準備工事は県の条例に基づく環境保全のための協定を結ぶことが前提と表明。工事を認めるかどうかは条例に沿って判断するとして明確な回答を避けた。ただ、県によると、県の専門部会での議論などを経る必要があり、協定の月内の締結は不可能とした。
川勝知事は会談後の報道陣の取材にも、JR東海が求める工事の大部分は「本体工事と一体。認められない」と断言。この発言を受け、JR東海幹部は同日夜、開業が遅れる公算が大きいとの認識を示した。
双方の隔たりを埋めようと、国土交通省は4月、工事が大井川の水に与える影響などを検証する有識者会議を立ち上げ議論が続いている。トンネル本体の着工も先が見通せていない。
開業が遅れれば、総事業費9兆円の巨大インフラ事業は軌道修正を余儀なくされそうだ。最速で37年の大阪延伸開業の計画にも影響がでる可能性がある。
リニアは開業から半世紀余が経過した東海道新幹線を補完し、東京、名古屋、大阪の三大都市をつなぐ大動脈を二重にすることを掲げ、JR東海が14年に着工。最高時速約500キロで品川―名古屋間を最速40分で結ぶ。9兆円全額をJR東海が負担し、国も財政投融資から約3兆円を貸し付けた。(初見翔、宮川純一)
(時時刻刻)リニア、見えぬ出口 水保全、静岡県・JR東海の溝埋まらず
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14527888.html
2020年6月27日 5時00分 朝日新聞
リニア工事をめぐる静岡県側の懸念
JR東海のリニア中央新幹線の開業が、目標の2027年から遅れる見通しが強まった。総事業費は大阪まで含め9兆円。巨大事業に待ったをかけたのは、環境への悪影響を心配する静岡県や大井川流域の自治体だ。開業を待ち望む沿線や、後押しする政権にも誤算となりかねない。▼1面参照
リニア新幹線の「静岡工区」をめぐって初めて実現したJR東海と静岡県のトップ会談。2人きりで約1時間20分にわたってインターネットで生中継される異例の会談は、なごやかな雰囲気で始まった。
「大井川の水でつくられたお茶です」。途中、川勝平太・静岡県知事は金子慎・JR東海社長に県名産の茶を勧め、そう説明した。県は工事で大井川の水量が減ることに懸念が強いことを伝える演出だ。JR側の説明を一通り聞くと「水の問題をおろそかにしないと聞いて安心した」と述べたが、最後まで溝は埋まらなかった。金子社長は準備工事の着工を繰り返し求めたが、川勝知事は話題をそらすような場面も目立った。
終盤になってようやく、県の条例に基づく協定を結ぶことが着工の条件と説明。これをJR側は前向きな発言と受け止めた。金子社長は会談後、「大変有意義だった」。協定締結に向けた手続きについて「スムーズに進むようなら今日の目的はかなえられた」と歓迎した。
ところが会談後、報道陣の取材に対し、川勝知事は工事着手について「とんでもない」と認めない考えを明確にした。県の事務方も協定について「現時点で結べる状況ではない」として月内の着工は不可能と説明。「27年開業」を掲げてきたJR東海へ、事実上の「延期通告」となった。
静岡県の懸念は工事現場が水源と重なる大井川への影響だ。工事でわき出す水がトンネルを通じ県外に流出するのではと心配する。JR東海はトンネル貫通後は別に掘る導水路を使ってわき水を川へ戻すが、工事中は一部が県外へ流出してしまう期間がある。
下流域で飲料水や農業用水などに広く使われ、県人口の約6分の1にあたる62万人の暮らしに関わる。流域では1980年代にダムの影響で水量が減った地元住民が「水返せ運動」を展開した歴史がある。「水」に敏感にならざるをえない県民感情も川勝知事の姿勢を支える。
さらに、リニアが通る1都6県で駅がないのは静岡だけ。地元に「何のメリットもない」(川勝知事)。その工事を頼む立場なのに丁寧さに欠けるとして、県関係者は「JR東海には『迷惑をかける』という意識がない」とこぼす。
JR東海にとっては、東京―大阪の都市間輸送を2重化することは悲願でもあるが、沿線の地元対応をおろそかにしてきたとの見方もある。国土交通省幹部は「JR東海には新しい線路を引いた経験が組織になく、用地確保の苦労もわかっていない」。金子社長も「建設を早期に実現させたい気持ちが前に出て、(地元から)水の問題をきちんと考えているのかという気持ちを招いてしまった」と認める。(矢吹孝文、初見翔)
沿線の街、再開発にも影響
リニアがくる沿線の街では「27年」に照準を合わせた再開発が目白押しだ。開業が遅れれば、各地の計画にも影響が生じてくる。
始発駅となる品川駅。羽田空港にも近く、首都の新たな「玄関口」になるとの期待から複数の大規模計画が進む。今年4月には京浜急行電鉄が品川駅の西口で高層ビルをつくる再開発を発表。タッグを組むのは名古屋駅前にもオフィスを構えるトヨタ自動車だ。1千億円超を投じて27年度の完成をめざすとしている。
名古屋駅周辺でも高層ビルの建設ラッシュが続き、まちは変貌(へんぼう)する。名古屋鉄道はターミナルの駅ビル周辺を南北400メートルの1棟の高層ビルに建て替える計画で、27年完成が目標だ。
名古屋商工会議所の山本亜土会頭(名古屋鉄道会長)はこの日、「議論は平行線に終わったようで、率直に言って失望が大きい。お互いのメンツにこだわることなく、現実的な解決策を両者で考えてもらうことが一番大事だ」とのコメントを出した。
中間駅ができる山梨県の長崎幸太郎知事は会談を受けて取材に応じ、「静岡県とJR東海の話し合いの継続と、準備工事の早期着工という結論が得られることを期待する」と述べた。(竹山栄太郎)
巨額事業後押し、政権誤算
リニア中央新幹線計画をめぐる主な経緯
東海道新幹線の利用者は新型コロナウイルスの影響で一時、前年比で1割ほどに激減した。出張や旅行の手控えは今後も続く可能性がある。リニアの開業が遅れれば、JR東海の経営にとって「二重苦」になりかねない。旧国鉄から引き継いだ約5兆円の債務は2兆円を切るところまでいったん減らしたが、再び5兆円まで膨れている。
リニアを後押ししてきた政権にも誤算だ。安倍政権は2016年の経済対策で、3兆円の財政投融資をJR東海に貸し付けた。大阪までの全線開業を当初の45年から最速で37年に前倒しさせることを狙った。
JR東海は名古屋までの開業後は、8年ほどは経営体力の回復に専念してから大阪延伸の工事を始める予定だったが、関西の政財界を中心に前倒しを求める声が高まっていた。安倍晋三首相は「前倒しによる経済効果によって、税収が上がっていく」などと早期開業の利点を訴えていた。
後押しの是非が改めて問われかねない事態に官邸幹部は「正直、ここまでこじれるとは思っていなかった」と頭を抱える。(相原亮)