舛添要一・元厚労相が指摘 ! 「緊急事態宣言は“3 つの不作為”のツケ」
安倍内閣の新型コロナウイルス対策の深層・真相は ?
(ww.nikkan-gendai.com:2020年4月20日 9時26分)
上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている
舛添 要一氏(元厚労相・前東京都知事):
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されてから10日。「人との接触機会8割削減」の掛け声の下、外出自粛が広がるが、東京都を中心に感染者は急増。8000人を突破し、死者も200人に迫ろうとしている。安倍政権の泥縄対策に怒りの声が上がる中、舌鋒鋭いのが舛添要一氏。厚労相として新型インフルに対応、都知事時代には東京五輪の準備作業にも携わった。政府と都の対応はどこがおかしいのか。
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◆政府の取り組みを厳しく批判しています。
英語に「too little, too late」という表現がありますが、すべてが後手後手。初動が遅すぎました。なぜ緊急事態宣言に至ったのか。3つの不作為のツケですよ。PCR検査を徹底しない不作為、医療機関でトリアージ(治療優先度の決定)を実施しない不作為、経済対策をキチンと打たない不作為。
この3つを実行せず、宣言を出すのはおかしい。2009年の新型インフル発生時、麻生内閣の厚労相として陣頭指揮を執りました。みな忘れていますが、トップは麻生首相で、現政権の副総理。なぜ新型インフルを参考に安倍首相と対応にあたらないのか。当時のことを全く覚えていないのか、存在感がないですよね。
◆パンデミック化した新型インフルは日本でも猛威を振るいました。
11年前はみんな死ぬぞ、ぐらいの大騒ぎで、成田空港などで乗客全員の機内検疫を実施したほどでした。経過を振り返ると、4月24日に北米でおかしなインフルが流行していると情報が入り、WHO(世界保健機関)が世界的流行の警戒水準をフェーズ4に引き上げたのを受け、28日に対策本部を設置し、専門家会議も立ち上げた。
中国との関係で言えば、08年前後に毒入りギョーザ事件が発生し、感染症や食の安全を担う厚労官僚を初めて在北京の日本大使館に外交官として派遣しました。それ以来、厚労官僚が中国に駐在しているはずで、彼らが震源地の武漢の状況を把握し、東京に情報を上げていれば迅速に対応できたのではないか。厚労相や官邸が情報を無視したのか。
◆官邸はなかなか本腰を入れませんでした。
武漢で新型コロナウイルスが確認されたのは昨年12月下旬。国内では1月中旬に感染1例目が判明しましたが、武漢滞在歴のある中国人男性だったせいか、他人事でした。1月下旬に都内の屋形船で集団感染が確認されても、政府は動かない。腰を上げたのが、2月13日に死亡した80代女性の感染判明後です。
政権が叩かれると考えたんでしょう。14日に専門家会議を設置し、16日に初会合。国内初の感染者が確認されて1カ月、何もやらなかった。そうした中、北海道で感染者が急増し、2月末に鈴木知事が法的根拠のない緊急事態宣言を出し、臨時休校に踏み切って国からマスクの優先配布を取りつけた。
◆鈴木知事の対応はおおむね高評価でした。
安倍首相は単細胞。鈴木知事が株を上げたから、同じことをやった。一斉休校の要請でパニックを起こして反発を食らい、次は宣言となったものの、官邸官僚が根拠法がないと進言したのでしょう。ならば法律を作れと、解釈で運用できるインフル特措法をいじくった。その上、アベノマスクで失笑を買っている。
■クラスター潰し拘泥で大失敗 !
――世論調査では宣言に7割が賛成しています。
宣言を出したところで、PCR検査を全然やらずにどうやって実態をつかむのか。クラスター対策に拘泥していたのが大失敗なんです。屋形船の関係者らを検査してクラスターを潰したとアピールしていますが、裏を返せば屋形船周辺しか検査しない。それで市中感染が広がり、検査不徹底で状況を把握できず、ほったらかし。
検査増は医療崩壊を招くとも主張していますが、有用性は海外の事例で明らか。消極的だったイタリアで医療崩壊が起き、徹底したドイツは死者を抑え込んでいる。米国でパンデミックが起きたのは、CDC(米疾病対策センター)のミスで検査を積み上げられなかったからです。
国内で感染が急増した途端にロックダウンだの、オーバーシュートだの、言葉を弄して国民を脅しているようにしか見えません。完全に大衆洗脳。ナチスのプロパガンダと同じ嘘八百を並べ立てているんです。
◆科学的根拠よりネトウヨ占い師の助言
――海外で高評価のドライブスルー方式にも及び腰です。
安倍政権の対策は疫学的根拠も科学的根拠もない。休校は専門家会議の意見によらず、安倍首相の政治判断。確かに、専門家会議は質が悪いと思います。新型インフル対応の際、東大の教え子だった医師たちのネットワークを使っていわゆるチームBをつくり、彼らの情報をもとに専門家や厚労官僚に対する疑問を潰していきました。
ところが、安倍首相はダメな専門家の話すら聞かず、古代中国の占い師に頼っているようなもの。占い師が誰かといえば、ネトウヨです。懇意の作家らと会食して力づけてもらっているでしょう。話になりません。
◆小池都知事はいかがですか ?
豊洲市場移転問題と同じ。喜々としてパフォーマンスに明け暮れています。3週間前はどうでした? 五輪実施をめぐってIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長、安倍首相、大会組織委員会の森会長と会談し、1年延期を勝ち取ったと誇っていた。
日本はコロナを抑え込んでいるとバッハ会長も褒めているが、海外で流行しているので1年延期する、という理屈だった。足元の感染急増をどう説明するのか。1年後に終息していなかったらどうするのか。
――森会長は「神頼みみたいなところはある」と言い、安倍首相も「ワクチン開発はできる、日本の技術は落ちていない」と発言したと報じられています。
科学的根拠は何もないんですよ。SARS(重症急性呼吸器症候群)とMERS(中東呼吸器症候群)はワクチン開発で失敗した。何千人もの臨床実験をこなし、副作用を99.99%程度まで抑え込まないと実用化できませんから。
■GDP500兆円の国が、12兆円出し渋るドケチ !
◆緊急経済対策はどうですか ?
30万円の直接給付は全世帯の8割が対象外、休業補償ナシで不満噴出です。(編集部注・このインタビューは4月8日に行われました)
首尾一貫性が全くない。仕事を休めと言うのなら、生活を保障しなければ政策として成り立ちません。アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいるようなもので、前に進まない。国民全員に一律10万円を給付すべきです。
GDP500兆円を1億人で割ると、平均500万円の富を生み出している計算になる。年収500万円の家庭で、子どもの学費に50万円が入り用となったら、何とか工面するでしょう。GDP500兆円の国が12兆円すら出し渋る。なんてバカなのか。
30万円の給付対象になっても計算は厄介、申請は煩雑。申請できない国民を切り捨て、予算を使い切らずに済ませようというドケチな発想ですよ。いっそ、アベノマスクと一緒に小切手を配布すればいい。
申請不要だから手続きゼロ、記名式だから不正も起こりにくい。国会議員や公務員ら所得に影響を受けない人は寄付すればいいだけの話でしょう。
――466億円も費やすアベノマスク配布よりも、給付対象の拡大やマスク増産に回してほしいとの声もあります。
極度のマスク不足にしたって、その気になれば台湾や韓国のような事実上の配給制が取れる。経産省が号令をかけて企業に生産を促し、消費者庁とも組んで流通網を整理する。マイナンバーを利用して、末尾0の人は10日など0が付く日を購入日に割り当て、購入実績はスマホなどで管理すればいい。
行列をつくる人が10分の1に減り、感染抑止につながります。要するに、安倍首相は危機のリーダーではないんです。危機管理はスピードがないとダメ。敵に攻め落とされ、全滅してから何をやっても無意味です。
◆政治資金問題で都知事を辞任して4年。
風当たりがある中、なぜ発信し続けているのですか ?
政府も都もあまりにも対策がひどい。新型インフルを曲がりなりにも抑えた経験が生かされていない。安倍内閣でも閣僚を務めたので、政治の現役だったら仕えた首相を悪く言えませんが、今は一個人。厚労相と都知事を経験したのは私しかいませんから、私がやるべきと思ってのことです。
(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)
▽ますぞえ・よういち:1948年11月29日生まれ、71歳。福岡県北九州市生まれ。東大法学部政治学科卒。東大法学部助手、パリ大現代国際関係史研究所客員研究員、東大教養学部政治学助教授などを経て、舛添政治経済研究所を設立。01年に参議院に初当選後、2期務め、安倍、福田、麻生政権で厚労相などを歴任。2014年2月に都知事就任、2016年6月辞任。
「都知事失格」「ヒトラーの正体」など著書多数。
(参考資料)
○3月の世界各国のPCR検査の人数とは ?
( www.covid19-yamanaka.comより抜粋・転載)
3 月20日の人数:韓国:316664人。イタリア:206886人。ロシア:143519人。
オーストリア:113615人。米国:103945人。日本:14901人(韓国並みなら772660人の検査をすべきであり、韓国と比べれば、約2 %の検査である)。
○十分なPCR検査の実施国では 新型コロナの死亡率が低い
死亡者数からは、西洋とアジアでは 感染の広がりは100 倍違う
(www.jiji.com :2020/04/21-11:15)
[国立大学法人千葉大学]
PCR検査数を増やすと、陽性数を検査数で除した陽性率が低下します。千葉大学大学院 薬学研究院および医学研究院の研究グループは、西洋の国々で陽性率が7%未満の国では、陽性率がそれ以上の国に比べて1日の死亡者の割合が15%でしかないとの解析結果を発表しました。
アジアの国々でも陽性率が7%以上の多くの国では感染者の増加が続いています。PCR検査はリスクの低い人に対し大量に実施しても、誤って陽性となる数が多くなるので検査の意味がなくなります。
必要な検査数を保つことが重要で、陽性率はその指標になります。日本の陽性率は4月10日現在7.8%で上昇傾向にあり、死亡者数を増加させないために陽性率を低下させるようにPCR検査能力を拡大することが急務と考えられます。
◆研究の背景
新型コロナ感染症が世界的に猛威をふるっていますが、現在はどこも自国での対応に精一杯で、他国との客観的な比較が十分ではありません。そこで、本研究グループでは入手可能な世界の情報を科学的に解析することで、感染症終息のための新たな戦略が見いだせると期待し研究にとりくみました。
研究成果 1:感染の広がり方には100倍程度の地域差
一般に世界の感染拡大は国ごとのPCR検査陽性者数の増加で報告されていますが、新型コロナ感染症では無症状の感染者が多くいることから、この数字は各国の検査の徹底度に影響されており、感染者数を正確には表していないと考えられます。
そこで、図1に示す1日の死亡者数をその国の人口で補正したデータを、その変化のパターンから地域ごとの予測を可能とする機械学習で解析しました。人口1億人あたりの1日の死亡者数は、世界の多くの国で感染拡大30日後にほぼ一定となり、その推定値(中央値)は西洋諸国(欧州、北米、オセアニアを含む)では1180人であるのに対し、中東では128人、ラテンアメリカでは97人、アジア(中東を除く)では7人でした。このように死亡者数から解析すると新型コロナ感染症の広がり方には、西洋とアジア地域では100倍程度の著しい地域差があります。
地域差の原因は、国の政策、高齢化の程度、BCGワクチン接種を含む厚生制度、医療環境、そして国民性などによる影響が考えられますが、民族の遺伝的要因(遺伝子配列の違い)による可能性もあります。遺伝的要因の候補としては、ウイルスの細胞への侵入に関わる蛋白質や、ウイルスから体を守る蛋白質の遺伝子の民族による違いなどが考えられています。新型コロナとの関連について、この分野の今後の研究が必要です。
―以下省略―