れいわ新選組・山本太郎の九州ツアー 宮崎での街頭記者会見(文字起こし)
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2019年10月16日 長周新聞
全国ツアーをおこなっているれいわ新選組の山本太郎代表は15日から、第2弾として九州行動を開始した。初日は宮崎市にある宮崎山形屋前で街頭記者会見をおこない、市内外から駆けつけた聴衆の意見や質問に答えながら対話形式で論議を展開した。日韓問題や次次に起きる大規模災害への対応、日米FTAや消費税増税など話題は多岐にわたった。また国益を売り飛ばし、困窮する国民生活を犠牲にして大企業の代弁者となっている政治の姿を暴く論点にはとくに強い共感が示された。聴衆のなかには幼い子どもを抱いた母親をはじめ仕事帰りの現役世代や学生などが目立ち、山本代表の発言に熱心に耳を傾けた。主な内容を紹介する。
山本代表 現在の政治を見て、また6年間の国会議員活動を通して、地方を犠牲にしたうえで大都市が繁栄する政治がずっとおこなわれていると感じたからこそ、地方を中心に足を運んでいる。みなさんがどんどん疲弊をしていくなか、大都市はどんどん大きくなる。こんなことが続くわけがない。大都市が存在できているのは、地方都市あっての話だ。20年以上デフレが続いているなかでみんなが将来に不安を持ち、お金を使わなくなり、消費が弱まる。消費が弱くなれば投資も弱る。人人も企業もお金を使わないなか、世の中に回るお金がどんどん減っている。
そこに加えて国がまちがった政策を推し進めている。たとえば消費増税。物を買うたびに罰金が上がるようになった。これによってより世の中にお金が回らない。あなたがお金を使えば、その原材料を作る人たちの賃金に回る。物価が下がれば、当然賃金も下がる。誰かの消費は誰かの所得に繋がる。この関係性のなかで物価が下がっていけば、デフレのスパイラルから出られなくなる。
本来なら景気がよくなり、賃金とともに物価が上がっていくというのが一番好ましいのだがそうはなっておらず、国は消費増税という形で強制的に物価を引き上げてきた。消費増税するたびに、この国の経済とみなさんの暮らしは確実に壊されていく。そんなことの連続によって全国どこを回っても地方は衰退している。国を強くするというのなら地方で暮らしても十分楽に暮らしていけるような状況を国が考えなければならない。
日本一物価が安いといわれる宮崎だが、物価が安いのは所得自体が低いからだ。最低賃金790円。中小零細に大きな打撃を与えない形での最低賃金の引き上げを、国が保障することをれいわ新選組は提言している。これができれば、わざわざ家賃の高い都会に住む必要はない。日照時間が一番長い、暮らしやすいといわれる宮崎で子育てをしようという人たちも増えてくるはずだ。企業側の利益となるように、いかに働く人を安く雇えるかということに力を費やしてきたのが今の政治だ。これを一歩一歩変えていくしかない。今日はこの場でみなさんから私に質問でも苦言でも提言でもなんでも結構だ。みなさんからの質問や苦言や提言が先先のれいわ新選組の政策に繋がっていくということにもなる。
アジア近隣国との新しい関係つくる
意見(男性) 歴史認識と、これからの日韓、日朝関係について質問したい。日本はこれまで朝鮮半島に対して踏みつけてきた歴史がある。今、韓国も北朝鮮も日本に対して怒っているなかで、山本代表として韓国、北朝鮮政府とどう対峙していくのか。
山本 歴史は決して修正してはいけないし、悲しい歴史はきちんと見つめる必要がある。当時の日本には言い分もあるが、間違った戦争に足を踏み入れてしまったことは確かだ。それだけでなく植民地支配もしている。「日本の植民地支配は他国の植民地支配とは違う」という意見もあるかもしれないが、そもそもそれぞれの国のスタイルで国を運営していくべきところに他国が入ってきて指図するなんてことはあってはならない。
「そんなことはなかった」などというのは、もう一度踏みつけるような行為を続けるのかという話だ。日本は加害者側だ。加害者が「そろそろいいだろう」などいえるはずがない。一方で戦勝国の米国には原爆についてなにもいわない。戦争はしてはならない。なぜなら戦争は一番非道なことをした人間が勝つからだ。加害者は被害者に対して反省を続けるということは絶対に必要であるし、少なくともその国国に対してそれまでの歴史認識をひっくり返すようなことをいうならば、世界に対する信頼も失うことになる。そんな国はリーダーとして認められるはずがない。
こういう話の内容に対してかなり反発する方方もいる。韓国が気に入らない、中国が気に入らないとう声を聞くこともあるが、「国益」という話から見てみると、そんな話は関係ない。なぜなら経済的には絶対に切っては切れない関係だからだ。個人的に他国に対して否定的な感情を持っていたとしても、国益という点から見れば平和的な話し合いを進めて、お互いが利益を得る道を進まなければならないのは当然のことだ。日本が輸出している国国を見てみると、トップはアメリカ、2位は中国、3位は韓国だ【地図参照】。
個人的な他国への嫌悪感を尊重するために6兆円近い利益を失うことはできない。アジア近隣諸国と平和外交を進めなければならないという話の入り口としては、このような提案がわかりやすいのではないかと思う。日本の輸入相手国を見ても中国が1位、韓国は4位だ。お互いになくてはならない存在であり、この関係性を壊すわけにはいかず、一個人の気分や感情などと同列の話ではない。この経済圏をより強固なものにしてアジアの繁栄に導いていくために日本は先頭に立たなければならない。そのために他国と紳士的に接していくことが外交のあり方だと思う。
文在寅政権との問題のなかで端を発しているのは徴用工の問題だ。植民地時代に徴用工として日本で働かされた韓国人四人が新日鉄住金に損害賠償を求め、韓国最高裁が賠償を命じる判決を出した。これに対して、安倍総理は「1965年の日韓請求権協定で、完全かつ最終的に解決しており、この判決は国際法に照らしてありえない判断」だといっている。外交上は持ち出さないという約束をしているという意味だ。
しかし見過ごしている問題は、日本政府は「(日韓請求並びに経済協力協定は)いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」(柳井俊二条約局長の答弁)としている。つまり個人の請求そのものを消滅させるような内容にはなっていない。個人の請求権を行使して司法に訴え、新日鉄住金に賠償命令が出ることは阻害できない。民事である今回の判決に対して、日本政府が文句をいうこと自体が間違っている。むしろ内政の問題点を隠したいという思惑が見て取れる。
2016年に官邸主導で、韓国側から訴えられた被告企業を経産省に呼に、政府の担当官が「賠償や和解に応じないように」と促している。韓国での判決後も説明会を開いて賠償や和解に応じないように被告企業に要請している。個人の請求権は消滅していないのにそんなことをしたら余計に問題がこじれ、外交にひびが入るのは当然だ。韓国側の対応もわかりにくいし問題がないわけではないと思うが、それは韓国側の話だ。少なくとも日本側の対応ははっきりいって恥ずかしい。日韓関係にとどまらず、アジアにおける不安定要素を自分から作り出してほしくない。よその国に対してこちら側は冷静でなければならず、国際社会の約束を尊重して紳士的な態度を示し続けなければならない。あくまでも「日本側がどう対応するのか」という問題のみが問われている。たとえ相手国に非があったとしても、あくまで紳士的に対応することが国際社会においてとるべき態度だ。
日本と韓国は隣国として相互に利益を得る関係にある。自国の内政がうまくいっていないことを隠すためにナショナリズムや愛国心を煽るようなことはお互いの国にあることだと思う。しかし、それを自制し、紳士的にふるまい続けられるのかどうかが、世界に対して信頼を得られるかどうかの分かれ道になると思う。ヨーロッパでリーダーとなったドイツも、第二次世界大戦のときにはナチスドイツとして迷惑な存在だった。だが、今も同じテンションで飛び跳ねたことをいっているか。それをしたら信頼が失墜して国益を損なうことがわかっている。
北朝鮮に対しても同じだ。2年前にトランプ大統領が北朝鮮に対して「ロケットマン」「完全に破壊する」といっていたが、安倍総理はその背後からアメリカに同調しながら「対話による問題解決の試みは一再ならず、無に帰した」「必要なのは、対話ではない。圧力です」といっていた。アメリカに加勢しながら北朝鮮側を攻撃する言動を続けるならば、日本と北朝鮮のよい関係は作っていけない。これまで解決に向かってこなかった拉致問題を考えるのなら、アメリカに加勢をして北朝鮮にいろいろいっている場合ではない。両国の間に入って関係をよくする外交を執りおこなうべきだ。
結局、米朝の協議も始まり日本だけが「蚊帳の外」になって話が進んでいる。アメリカに同調しても最終的にはハシゴを外され、平和協議にも入ることができていない。その原因は、立ち振る舞いがみっともないものだったからだ。国際社会のなかで日本はまだ保護観察の身であり、国連では今も厳然たる「敵国」として規定する条項に規定されている。そんな立場でありながらアメリカと同調して武力的な圧力さえも臭わすこと自体、紳士的でない。世界は見ている。常にそれを意識しなければ日本の国益は守れない。
国が保障すべき「住まいの権利」
意見(男性) 建築の仕事をしている。れいわ新選組は「住まいは権利」とうスローガンを掲げている。日本では個人住宅をほぼ住宅ローンで作っている。ローンはだいたい年収の30%くらいで組まれる。みんなが家を持つために住宅ローンを抱えるというのは、すごく負担が大きい社会の仕組みだ。ヨーロッパでは個人のリスクを社会でカバーしていくという考え方の国もある。オランダでは公的住宅が全住宅ストックの35%を占めているに対し、日本は少なすぎる。私は増やしていくべきだと思っているが、山本さんは住宅の社会保障についてどう思っているのか。また「住まい権利」についてなにか政策として考えがあるのか。
山本 日本で住まいを持つにはなかなかハードルが高い。都市部でその傾向が顕著だ。敷金や礼金、保証金があり、家賃だけでは借りられない。宮崎の賃貸を探してみたら、敷金礼金ゼロで入れる住居が数多く見つかってびっくりした。だが都市部ではそれ以外のお金を積まなければならない。これでは資産を持っている人、初期投資ができる人以外は自分の住まいを持つことがむずかしい。自分の住まいを望むのなら、一人一人が確実に実現できるようにしなければならない。国会議員ですら選挙に落ちれば1週間以内に議員宿舎を出て行かなければならなくなり、自分も住まいを失った。
なぜ「住まいは権利」と自分のなかで強く思うようになったのか。そこには国会議員になる前の経験がある。私は16歳から20年以上芸能界で活動してきた。転機は福島第一原発事故であり、この国に生きる一人の大人として自分の声をあげていこうと思った。だが、声をあげればあげるほど仕事はなくなった。なぜならテレビや映画は、スポンサーの広告料によって支えられており、企業側に唾なんて吐けない
企業側にマイナスになるようなことをいう者は仕事がなくなっていく。NHKドラマの台本にまで名前が書いてあったのに降ろされたこともあった。その経験をネットで発信したら全国各地の人人から「私の街にしゃべりに来てくれ」と声がかかるようになり、原発事故以後2年間くらいは、細く繋がった仕事をしながら全国あちこちを回っていた。被曝の問題からスタートして、全国を回るなかで繋がった人人から労働環境破壊の問題や、貧困問題などを教わってきた。その間ずっと安定した居住はなかったので、民泊でもホテルでも、いつもどこにいても「チェックアウト」の問題がついて回る。毎日そのことばかり考えるのは精神的ダメージが大きい。夜中に目が覚めて自分が今どこにいるのか確認しなければならないような生活を続けていた。
その後、選挙に出て議席をいただき、議員宿舎の畳に寝転んだときに大きな安心感を得た。そして6年後またチェックアウトしたわけだが。住まいの問題に苦しむ路上生活者を含む現場のいろんな生の声を聞いてきたこともあるが、私の根底にある「住まいは権利」は過去の自分の経験からくる部分が大きい。
今この国のなかでなにか支援してもらえるとしたら、仕事などスキルアップに繋がることはあるが、生活の根本的な部分を支えてくれる支援がなかなかない。すべてを失うことと引き替えに生活保護を受けるか、もっと究極をいえば刑務所だ。だが、もっと手前で自分の安定した住まいを持てることが大前提になければ生活は安定するはずがない。
日本に公的な住宅がどれほどあるのか。日本は全住宅に対して社会(公営)住宅は5・4%とあまりに少なすぎる【図参照】。住まいの問題は少子化問題とも繋がる。ずっと実家暮らしで結婚や子作りができるか。独立していなければむずかしい。また、住宅に自分の稼ぎの多くをつぎ込むなら生活は困窮化する。国が支援しなければならないし、住まいや少子化の問題を市場原理にさらしてはいけない。オーストリアでは全住宅に占める社会住宅の割合が20・1%。フィンランド14・0%、フランス17・4%と、日本とかなり数字に開きがある。
空きマンションや、中古マンション・中古アパート・中古住宅は日本中にたくさんある。これを国が買い上げることを前提に恒久的な制度にしていく必要がある。国が低廉な家賃で住める家を担保することで一人一人の生活が安定する。その基礎を国が作り、家賃に回さずに済むお金で経済活動に寄与してもらうことが重要なのではないかと思う。住まいの問題を解決することは、すべてのことを安定させていく基礎になる。
食料安保を投げ捨てる日米FTA
意見(女性) 今までまったく政治に関心がなかったが、今年7月に山本さんの話をユーチューブで見て始めて関心を持った。政治がこんなにおもしろいと思うことはなかった。私のような人は日本中にたくさんいると思う。私は3年前に日南市に引っ越してきたが、周りには空き家になって朽ちた家や、耕作放棄地がたくさんある。本当にもったいないし、なんとかならないかと感じている。
山本 空いている資産をどのように使うかということは非常に重要なことだ。今後、大規模農業のようなものがどんどん入ってくることが予想されるなかで、生産者はどんどん減っていくと思う。TPPや日米FTAもその流れだ。
TPPとは、あらゆる分野にある関税や非関税障壁、国独自のルールなどの障壁をとりのぞいて、環太平洋の国国で自由に貿易できるようにしようというものだ。「人・カネ・モノを自由に動かしましょう」といわれれば言葉の響きはいいように聞こえるが、そんなことをしたら国内産業が守れなくなり、力のないところから喰われていく。そんなTPPを「絶対にやってはならない」と言い続けてきたのが自民党だ。菅政権のTPP参加方針に対して「即時撤回を求める会」を作って対抗し、全自民党議員378人中236人が加わった。「TPPバスの終着駅は日本文明の墓場なのだ」(稲田朋美)、「TPPが通ればISD条項があるのだから訴訟を起こされたら日本は負ける。新しい法律の受益者が外資であったというのではお話にならない」(江藤拓)とまでいっていた。
それが政権をとったら手のひらを返した。そして「アメリカがいなければTPPは成立しない」といっていたのに、アメリカが抜けてもTPP締結にこだわり続けた。さらにアメリカとは二国間でやりとりをする話になった。
TPPのように各国とのやりとりであれば暴走して規制緩和を一気に進めることは難しいが、アメリカとの二国間でやるならば喰われるに決まっている。今までに断ったことがないのだから。それが日米FTAだ。
今国会で日米FTAを批准するという話も出ている。TPPは4年たたなければ中身が口供されない秘密協定だが、日米FTAは守秘義務は課されていないのにTPP以上に中身が隠されている。もっと大変なことになる可能性がある。
2019年5月にトランプ大統領は安倍首相との会談後、日米協議では「農業と牛肉が重点的な対象となっている」とツイートし、「日本の7月の選挙後まで多くを待つことになるだろうが、そこでは大きな数字が予想される」とのべている。ビッグプレゼントをあげるという密約を交わしている。はっきりいってこの国を切り売りするようなろくでなしだ。
そして合意内容を見てみると、日本は車に高関税をかけられたくないから、その他のほとんどを差し上げるということをやってしまった。22項目を譲るという約束で、たとえば農畜産物では関税撤廃によって7200億円もの旨みをアメリカ側に譲り、日本側は40億円程度のプラスしかない。これで「よく自動車の関税は守った」などといえると思う。まともな交渉はできていない。
この先の他の項目に関してもどんどん喰われていくことになる。政府は日米が交渉対象にしている物品等の項目も公表していない。この先は為替、つまり通貨の独自性まで規制される可能性もある。アメリカから自動車の関税と為替をゆすりのネタにされながら、いろいろなものを奪われていく危険性がある。
これで弱るのは間違いなく地方だ。海外から安い肉や野菜が入って来れば、日本国内で作り続けられない。ただでさえ食糧自給率が低いこの国で、海外から「食料を止める」といわれたらどうなるのか。安全保障問題といってアジア近隣国に対して威勢のいいことをいうが、根幹である食の安全保障についてまったく守る気がない。「保守」ではない。「売国」だ。
すべての規制緩和が悪だとは思わないが、国の基礎的な部分を守るためには緩和してはいけないものもある。特に食だ。食の安定性を守るために、今こそ生産者になれば生活が楽になる政策を打ち出していくべきときだ。食糧自給率100%を超えるような国にならなければ、いつまでも兵糧攻めという形でゆすられ続けることになる。安全保障は声高に叫ぶが、食の安全保障には興味もない。逆に差し出していく。自動車も大切かもしれないが、人人の命を守るはずの食を切り売りしていくような人間は政治の場から追い出さなければみんなの命は守れない。
「生産者に手厚く」は世界の常識だ。作った物は全部買い取るくらいの勢いがなければいけない。それをやっているのがアメリカだ。自分たちの国ではしっかりモノを作って他国からは生産する能力を奪い、そして食料でコントロールしていくという世界戦略のもとに、日本が最前列で踊らされている。そんな政治を続けて行けば将来はたいへんなことになってしまう。
被災地支援せず政治利用する政府
意見(女性) 台風19号でたいへんな被害が出て死者もまだ出ており、痛ましい大災害が日本では次次に起きている。今回は関東方面が被災したが、私たちも他人事ではない。あれだけの大災害が来ることに対して初動対応が遅く、災害に対しての防衛対策がまったくなっていない。大臣も他人事だ。国を司るリーダーが口先で「寄り添う」といいながらまったく国民の立場に立っていない。こうした対応についてどう思うか。
山本 毎年のように台風や豪雨災害が起きるのが当たり前になってる。だからこそ政府の対応からは、台風や豪雨災害のように毎年決まって起きるものに対して、あまり手厚く支援したくないという考えも透けて見える。地震災害に対してはすぐ動くが、豪雨や台風には非常に動きが遅い。
人人の生命や財産を守る政治がそういう態度では困る。非常災害対策本部も災害が起こってから立ち上げるので対応が遅い。今回は、気象庁がこれまでにない災害につながる恐れがあると事前に警鐘を鳴らし、上陸する前から冠水被害が出てさらに被害が広がることは予測されていた。非常対策本部などを事前に立ち上げることは、この国に暮らす人人に対して「国は手を差し延べる」という姿勢を示す宣言になる。だから台風が去った後でないと立ち上げられないというものではない。
今後は人人の生活再建が急がれるし、そこには人手が必要になる。自衛隊が私有地に関しても力を発揮できるように、法改正までしなくても緊急事態として動けるようにすることも考えないといけない。また、手が空いている全国の職人たちに日当を払って来てもらうことも必要だ。床上であろうが床下であろうが、浸水したら板を全部剥がして床下の泥を掻き出さないといけない。床板を剥がす作業だけでも職人が入ればずいぶん改善される。だが行政は私有地にはタッチしないという姿勢だ。そこに人を多く投入すればするほど生活再建も早くなる。一刻も早く生活再建が進まなければ経済的にも打撃が生まれる。災害に対して迅速に対応してお金をつぎ込むことを国がやるべきだと思う。
台風で被害の全貌が明らかになっていない今、なぜ予算委員会を開かなければならないのか。実際に各自治体からの要望が上がってくるのはこれからだ。できれば、そこで予算委員会を開いて野党側も与党側も政府に対して具体的に要望を上げ、政府が叶えていくという合理的な予算委員会を開催しなければならない。例えばゴミの堆積を少なくするためのパッカー車(ゴミ収集車)が必要になったり、各家のガレキを運ぶ車などいろんなものが必要になる。
すべての省庁が災害復旧に全力を投入するにあたって、すべての大臣が会議にとられるのは大きな痛手だ。今はすべてを災害復旧に投入しなければならない期間であるはずなのに、なぜ予算委員会を決めた通りに開くのか。これまでずっと予算委員会を開いていなかったのに今開くのは、一番忙しいときに開くことで、この先の余計な追及から逃れられるからだ。3・11大震災のときも決算期でありながら6日間は国会を閉じたが、昨年の西日本豪雨のときも、72時間以内の助けを待っている被災者がいる最中に国会ではカジノ法案を通すための議論を続けた。国会運営を見れば、人人の生命や財産を守る気がないのは一目瞭然だ。
企業のため国を切り売りする水道民営化、PFI法
意見(男性) 麻生太郎さんはどうしてあんなに威張っているのか。
山本 これは麻生さんに直接聞く以外ない。本人は偉そうにしているつもりはないと思う。でも「それがあの人の人柄だからね」という話で済ませてしまうことは質が違うことだと思う。金融庁の「老後資金2000万円」の報告書が問題になったとき「100歳まで生きる前提で退職金計算してみたことあるか?普通の人はないよ。そういったことを考えてきちんとしたものを今のうちから考えておかないかんのですよ」と最上段からコメントされていたが、最終的にはその報告書を受けとらないという話にした。「あるものをなかったことにした」といういつものやり口だ。大臣なんて所詮は期間限定の代理人でしかないのだが、おそらく自分のことをお殿様と思われているのではないかと思う。
それを如実に表しているのが、2013年4月におこなったワシントンのCSIS(戦略国際問題研究所)という(大企業側に有利な提言をする)シンクタンクでの水道民営化についての会見発言だ。
当時、水道民営化についてはほとんどマスコミはとりあげず、審議の内容もほとんど明かされないまま、話が決まる段階になってとりあげ始めた。なぜなら企業側のもうけにつながるような話に水を差すわけにはいかないからだ。「世界で一番企業が活躍できる国にする」と約束したのが安倍政権だが、まさにその約束を果たすために尽力している。多くの企業がバブルを超える利益をあげている。
そして麻生大臣は、国民に説明する前にわざわざ米国の一民間シンクタンクまで出向き、日本の水道について「この水道はすべて国営、もしくは市営、町営でできていて、こういったものをすべて民営化します」と公言した。ちょっと待ってほしい。日本中の水道は麻生さんがつくったのだろうか? みなさんの税金でつくられたものだ。勘違いも甚だしい。
さらに水道だけでなく、みなさんのお金で作った学校などの公的インフラを売り出す予定があると宣言した。「財政が厳しいなら民間に託した方が安くあがる」という話だがとんでもない。民間の大企業は、人人の命や暮らしやすさを考えて赤字覚悟でも事業を進めるようなことはしない。株主に対して利益を還元できない事業はやらない。水道を民営化して何が起きるか。水質が悪くなったり、補修が必要な水道管があっても、採算が合わなければほったらかし。そんなことが世界中でおこなわれた。だから民間に任せるのをやめて、公的な仕事は公的な機関に任せるという考え方に変わってきている。何周遅れのことをやっているのか。
これが形になったのが2018年に日本で通ったPFI法だ。私も委員として審議にかかわっていたが、日本ではまったく話題にもならなかった。旗振り役は竹中平蔵氏だ。企業側の代弁者みたいな人がどんどん国を切り売りするようなことを提言していく。
PFI法がどういったものに適用されようとしているのか見ていく。道路、鉄道、港湾、空港、河川、水道から人工衛星まで全部切り売りできる。少なくとも命に関わることをこんな扱いにしてはいけない。
「民間なら安く済む」といわれるが、イギリスの会計検査院が調査したところ、「納税者はPFI契約のために2000億ポンド(約30兆円)余計に支払うことになる」(2018年1月)と報道された。また「PFIを利用して建設した学校は、公的機関がやった場合よりも4割高く、病院では6割を超える費用が余計にかかる」(同)との報告もある。イギリスではPFIをやめていく方向性を打ち出しているのに、日本ではこれから進めるという。
こんなことはテレビでは流れない。テレビや新聞は、企業側が流れる情報までコントロールしている。この国でおこなわれることを動かしているのは政治家ではない。50%の有権者が票を棄てているなかで、一番選挙に熱心なのは企業側であり経団連だ。1000社以上も大きな企業が連なって自分たちの組織票や企業献金で、自分たちの息のかかった議員を作りだす。その議員が半数を超えれば、自分たちの好きなルールを作って好きなように変えられる。3割の有権者の力を集めさえすれば自分たちの思い通りの社会が作れる。それによって首が絞まったのはこの国に生きる多くの人人だ。
経団連が政府に対して「提言」という名の命令を出している。なぜ命令なのか?すべて通ったからだ。たとえば派遣法の改定。中曽根政権時代に「専門職だけ」という小さな穴を開け、小泉、竹中の時代に製造業にまで広がり、派遣法は改悪され続けた。それで喜んでいるのは誰か。竹中さんがいるパソナじゃないか。企業にとってのコストは、払う税金と働くあなただ。あなたの働き方を壊すことによって企業側がよりもうけられるということを担保し続けてきたのがこの数十年の政治だ。企業側の代弁者が多数国会に入っているから、働く側の労働環境を破壊し続けていく。経団連は今後も派遣法の改正を求めている。
外国人労働者にしても、あまりにも奴隷的な扱いだ。パスポートをとりあげられ、残業代は100円。国を出るときにもブローカーにむしりとられ、この国では朝早くから夜中まで働き、またむしりとられる。タコ部屋のような場所に詰め込まれて住居費込みで5万円もとられる。「技術移転のため」だなどとよくいえたものだ。安い労働者が大量にほしいから外国人を大量に入れようとしたのが研修生制度だ。アメリカの国務省からも、国連からも「人身売買だ」とずっといわれ続けているにもかかわらずだ。外国人労働の7割が法令に違反している。
こんな制度は破綻している。日本のことが大嫌いになる外国人の若者を作りだしており、安全保障上一番まずいことをやっている。この国に生きている人人でさえ労働環境が守られていないのに外国人の労働環境が守られるはずがない。さらに安い労働力を大量に入れるために昨年の国会で入管法の改正が通過した。これを求めたのも経団連をはじめとする企業たちだ。人の労働力や大切な権利を奪いとって私腹を肥やす泥棒だ。そういう人たちがこの国を動かしている現状を今変えなくてどうするのか。
しかし企業側だけが悪いとは思わない。彼らは彼らの論理で政治を動かしている。その政治を選んだのは、投票に行かなかったのは誰か。選挙で政治をコントロールすれば少しはましな世の中にできたはずなのに、ここまで破滅的な状況を作り出したのは誰か。それはこの私だ。福島原発が爆発するまでは、生きることと楽しむことに精一杯で、この国の現状を知らず無関心だった。ここまで悲惨な状況になっているのかと知ったとき、自分自身に怒りを感じた。だったら直接変える一人になろうではないかと思った。
こんな欲深い政治に焦点を当てず、同じ労働者同士がいがみ合い、衝突させられて終わりというような地獄が透けて見える。変えていくしかない。
経団連は、高度プロフェッショナル制度や働き方改革が出てくるずっと前の2005年から「ホワイトカラーエグゼンプション」で年収400万円以上の人には残業代なしが可能になるよう求めてきた。だが反発をくらったので看板を付けかえ、年収の上限を1075万円以上に設定した。だが、これで国民の多くに「自分には関係ない」と思わせておいて、実は国会の審議なしに年収条件を下げていける。もともと求めていたことが残業代という概念自体をぶち壊すことだ。政治はあなたの首をしめ、本気で殺しにきている。それに抗うのは当然だ。あなたを守らない政治ならば存在する理由などない。なんのために税金を払っているのか。
消費税増税後も社会保障費を圧縮
山本 消費税10%にしたが、8%でも首をくくらなければならない状態だった。この国のすべての企業のうちの99%が中小零細だ。税の滞納のうち6割が消費税だ。すでに税として終わっている。税のとり方を変えないといけない。
消費税が10%になったことで、年収が多くない人たちにとっては年間で1カ月分の収入がとられることになる。生活が楽になるはずがない。しかも消費税を上げた後、社会保障を1500億円以上圧縮すると発表があった。社会保障の充実をうたっているのになぜ圧縮するのか。この6年間で4兆円以上もの社会保障が圧縮されている。いいかげんにしろという話だ。
では、誰のために消費税が使われているのか。1989年に消費税が3%になってからの消費税収と法人税収の累計を見てみると、263兆円の消費税収に対し、法人税収は192・5兆円も減少している。つまり、消費税収の73%は法人税収の減少分に当てられていた。だから経団連も2025年までに消費税を19%に上げろと寝言をいっている。経済同友会も一緒だ。消費税は、生きることにかかる罰金だ。こんな税の取り方をして景気がよくなるはずがない。駆け込み需要さえ起こらない。誰かの消費は誰かの所得なのだから。
景気をよくするためには経済成長が必要だ。GDP(国内総生産)の一番大きなエンジンは個人消費であり、GDPの55〜60%を占めている。消費も投資も弱るなら、政府がお金を出す以外にない。そうしなければデフレからの脱却など不可能だ。
実際にお金を配ることと同じ効果を持つのが、消費税減税であり廃止だ。消費税をやめるのに20兆円以上必要になるが、その分物価が下がるのだからみんなに財政出動するのと同じだ。物価が下がれば物が売れる。そのために20兆円が必要なら、ないところからとるな、あるところからとれだ。
それが法人税の累進制度だ。もうかっていればもうかっているほど税率が高くなる。これが一番平等だ。さらに赤字でもとられる消費税をなくすことによって、中小零細企業は完全復活に向かって進むことができると思う。99%の企業が中小零細なのだから、そこに対して最大限活躍できるような政策を打たなければこの国が復活できるはずがない。衰退国家の仲間入りしている日本を救うためにも、消費税の廃止が一番必要なことだと思っている。政治が本気になれば、地獄も作り出せる。企業側が過去最高益をあげられる社会を作っている。人人が仕事によって過労で殺されるような社会を作っている。だとしたらその逆に、生きていてよかったと思える社会も作り出せる。それが政治だと私は思っている。
消費税を廃止して法人税に累進制度を導入したら、企業が海外に逃げるのではないかと思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。企業が求めているのは「モノが売れる」という現実だ。2014年に経産省が企業に対して海外に進出した理由を聞いている。上位にあるのは、「現地での製品需要が旺盛で、今後の需要が見込まれる」からという理由だ。まっとうに商売ができる海外に拠点を移すのは当たり前の話だ。「この国は終わっている」という感覚だから海外に拠点を移すのだ。税が安いからという話ではない。商売をしているのだからモノが売れなければ意味がない。GDPの6割が個人消費という内需国で、モノが売れるような体制を国が作るしかない。ちなみに、税制の優遇があるから海外に行くという企業は8・7%しかない。
社会を沈滞させてきた財政健全化論の欺瞞
山本 もう一つの財源として、新規国債の発行がある。政府の借金は1000兆円を超え、一人あたり900万円ずつ借金を抱えているという財務省のミスリードに洗脳されている人人が多い。家計と公会計の話を一緒くたにしてはいけない。テレビ新聞にだまされないでほしい。誰かの借金は誰かの資産であり、そうでなければお金は生まれない。特に国債のほとんどを国内銀行が買い取っている日本では政府の借金は国民の資産だ。表と裏の関係であり、当たり前の話だ。
日本銀行の資金循環統計というグラフがある。民間の貯蓄と政府の赤字との関係を見てみると、政府の赤字が増えているときには民間の貯蓄が増えている。誰かの借金が誰かの資産になるという原理が表れている。例えば、政府が20兆円の借金をして社会保障として20兆円支出すると、その20兆円はみなさんにとっての資産になる。
「これ以上借金を増やしたら破綻するではないか」という話があるが、果たして本当だろうか。破綻とは誰もお金を貸してくれなくなる状況だ。だが日本は日本円で借金をしている。日本円で借金をしていて、日本円を発行する能力を持っているのに、お金が払えなくなることがあるだろうか。ギリシャの借金が膨らみすぎて破綻しそうになったとき、自分でユーロを発行できなかった。ユーロを発行しているのがヨーロッパ中央銀行だからだ。自国通貨の発行権を持たない国は破綻する。一方、日本は日本円を発行する能力がある。これでは債務不履行(デフォルト)になりえない。だが、これは無限にできる訳ではない。悪性のインフレになるほど発行してしまうとお金の価値がなくなってしまう。
「ハイパーインフレになる」という懸念の声も聞くが、少し考えてみてほしい。そもそもまだ20年以上もちゃんとしたインフレにもなっていないのだ。ハイパーインフレになるには数々の条件がある。統計的に確認できるハイパーインフレは世界史に56件ある。
このなかの共通事項は3点ある。@大きな戦争などで国内の生産能力が破壊され、かつその再建に国際社会がきわめて非協力的な場合。A大革命が生じて、これまでの通貨体制が無効になるような事態が発生した場合。B何十年も二桁台のインフレが続き、国内産業の未来が絶望的で経済政策も失敗が続いた場合。日本にはすべて当てはまらない。
もしも日本が破綻するならば、国債の金利が暴騰してなければおかしい。信頼のない人にお金を貸すなら金利を高くするのは当然だ。だが、過去20年間の日本国債の金利の推移を見てみると、ずっと下がり続けている。破綻する気配など一切ない。世界は日本を財政的に問題ないと見ている。
厚生労働省の調べで、「生活が苦しい」という人たちは57・7%だ。また、子どもの約7人に1人が貧困、高齢者5人に1人が貧困、障害者4人に1人が貧困、単身女性3人に1人が貧困。こんな状況で日本に将来があると思えるだろうか。間違った経済政策によって20年以上この国に生きる人人を貧しくし続け、一方で企業側にはどんどんルールを変更し、労働環境を破壊して税金も下げて過去最高益を上げさせている。国はまったく責任を果たそうとしていない。「資本主義なんだから格差は開いても当然だ」「あなたの努力が足りない」くらいに開き直っている。
自助や共助のようなスタンスが政治の世界でまかり通るのなら政治なんてなくてもいい。税金を払う意味がない。国が力を尽くしてみんなをいかに幸せにできるかということに力を傾ける政治でなければ存在する意味がない。地盤沈下している多くの人人の生活をなんとか底上げしなければならない。
最後に、新規国債の発行で消費税をすべて廃止した場合なにが起きるかを話す。参議院調査情報担当室に消費税を8%から0%にした場合のシミュレーションをしてもらった。初年度には5%物価が下がる。その後、徐徐にまた上がって3年目にインフレ率のピークを迎えるが1・67%だ。2%にも満たない。それどころかインフレ率はまた落ちていく。つまり、消費税廃止だけではなく、奨学金の総貸与高9兆円を解消することもできる。そのほかにもやれることはたくさんある。今救わなくていつ救うのか。また、消費税を廃止にした場合、みんなの賃金がどれほど上がるのか。消費税廃止後6年目には一人あたりの年間賃金が44万円増加する。なぜならとられる罰金がなくなって、消費が増えれば誰かの賃金に変わるからだ。
今本腰を入れて集中的に変えるべきであるし、その手段が税なのか新規国債なのか、どちらでもいいと思う。景気が悪いときには金利が下がるので新規国債を使い、景気が良くなりインフレの上限に近づけば税で対応することもできる。みんなの生活の底上げは可能だ。政治は変えられる。決して悲観していない。政治をあきらめている50%の人たちと繋がればいい。わずか3割の有権者しか参加しないことで国が壊され続けている。世の中を壊すのが政治ならば、それを取り戻すことができるのも、新しい社会を作るのも政治だ。
私たちには、大企業からの献金はいっさいない。力を貸していただける方はポスター掲示や、設営やチラシ配布をおこなうボランティア、寄付に協力していただきたい。
山本太郎(れいわ新選組代表)街頭記者会見 宮崎市2019年10月15日