ノーベル経済学賞:バナジー、デュフロ、クレマーの米大教授3氏受賞
Veronica Ek、Hanna Hoikkala、Niklas Magnusson
2019年10月14日 20:56 JST
2019年のノーベル経済学賞は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のアビジッド・バナジー、エスター・デュフロ両教授、米ハーバード大のマイケル・クレマー教授の3氏に授与された。3氏は「世界的な貧困を減らすための実験的手法」が評価された。
スウェーデン王立科学アカデミーは14日の声明で「今年の受賞者が行った研究は世界的な貧困と闘う能力を大幅に向上させた。わずか20年間で実験に基づく3人の新たなアプローチは開発経済学を変革した。この分野の研究は今では盛んに行われている」と述べた。
バナジー氏とデュフロ氏は夫婦での受賞となった。
relates to ノーベル経済学賞:バナジー、デュフロ、クレマーの米大教授3氏受賞
原題:Duflo, Banerjee and Kremer Win 2019 Nobel Economics Prize (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZD1UDSYF01Y01?srnd=cojp-v2
A・V・バナジー E・デュフロ著 山形浩生訳
『貧乏人の経済学』
─もういちど貧困問題を根っこから考える─
『貧乏人の経済学』表紙
これまで貧困問題を解決するために、貧しい人々の人権を考慮しながら、資金や物資を支援したり、自由市場への参加の機会を与えたりする取り組みが、さまざまな主体により実施されてきた。しかし、本書は、こうした取り組みは、実は貧しい人々の生活や選択と乖離して、貧困問題の根本的な原因を見逃しているのではないかと指摘する。そこで、貧困に対する先入観によってではなく、貧困問題に対する施策を実施する場合としない場合の社会経済的な影響を比較する実証実験(ランダム化対照試行*)によって、貧しい人々の行動原理を分析し、貧困の原因を明らかにしている。そして、貧困問題を従来の理念や理論で考えるのではなく、貧しい人々の視点で考えることで彼らの選択の論理を理解することの重要性を提言している。
* 無作為化比較実験ともいわれる。研究の対象者をランダムに2つのグループに分け、一方にはある介入を行い(介入群)、もう片方には介入群と異なる介入を行うか、あるいは、何もしないままとし(対照群)、一定期間後に両群に生じた結果を比較し、介入の効果を検証する実証手法。たとえば、介入群の村では蚊帳を無償で配布し、対照群の村では有償で配布した場合のマラリアの罹患率を比較し、無償支援の効果を検証する。
以下に、本書の内容を概観する。
第1章では、「貧困の罠」を例に挙げ、貧困を削減するためには、「援助が必要である」と「援助は自立的な発展を妨げるので、市場に任すべきである」という相反対する二つの考えだけでは、いずれも問題を解決できないとし、具体的な課題とそれぞれの課題ごとの答えを考えることが重要だと指摘している。
第2章では、栄養摂取に関する「貧困の罠」について分析している。貧しい人々は、飢えのために生産性が低く「貧困の罠」から抜け出せないという紋切り型の考えに対して、実は貧しい人々でも成人のカロリーはほぼ足りているので、重要なのは量よりも質であると指摘し、幼児期の適切な栄養摂取が将来の収入増につながることを明らかにしている。
第3章では、健康による「貧困の罠」について分析している。貧しい人々は健康について十分な情報をもたず、また、問題を先送りする傾向があるため、将来の医療費を抑制する予防接種の効果を理解せず、罹患した際には必要性の低い高価な医療を信用し利用することで、結果としてより貧困になると考察している。
第4章では、教育による「貧困の罠」について分析している。開発途上国ではエリート志向の強い教育が行われるため、教師は落ちこぼれ生徒を無視し、親は子供の教育に関心を失い、子供自身も自分の能力を不当に低く評価することになり、貧しい人々が教育によって貧困から抜け出す機会を失うことを指摘している。
第5章では、貧しい人々が子だくさんである理由について明らかにしている。子だくさんなのは、自制心の欠如や社会規範の押しつけが原因ではなく、年金や医療など社会保障制度が整っていない開発途上国では子供は老後への備えであるため、貧しい人々はより大きな家族を必要とすると考察している。
第6章では、貧しい人々が保険を買わない理由を明らかにしている。貧しい人々にとっては日々の暮しのなかに存在する多くのリスクへの対処が重要であるが、市場が提供する保険は干ばつによる不作や大病による死亡など稀に発生する危機的な事象しか対象としないため、貧しい人々は保険を購入する意欲が低いと考察している。
第7章では、マイクロ融資は貧しい人々の生活を変えたのかという問いに答えている。マイクロ融資は貧しい人々への融資事業が成り立つことを実証したが、リスクの高い事業や利益が出るのに時間がかかる事業に投資したい人にとっては不向きな仕組みであり、貧困から抜け出すための革命的な変化をもたらしてはいないと指摘している。
第8章では、貧しい人々が貯蓄をしない理由を明らかにしている。金融機関の口座開設や預金の引き出しの費用が高いというためだけでなく、積立年金のように給与からの天引きによる自動的な貯蓄システムもないため、貧しい人々は確実に貯蓄することが難しいと考察している。
第9章では、グラミン銀行創設者ムハマド・ユヌスのいう「貧しい人々は天性の起業家だ」という考えに疑問を投げかけている。貧しい人々の事業規模は小さく、限界収益率は高いが総収益が低いため、事業規模を拡大することが難しいと分析している。このことから、事業を実施している多くの貧しい人々は起業家の資質が高いというわけではなく、他に生き抜くための選択肢がないため起業しているにすぎないと指摘している。
第10章では、制度は貧困を改善するかという問いに答えている。マクロな視点で制度をみるのではなく、細部に注目した貧しい人々の視点に立つ必要があると指摘している。そして、貧しい人々の動機と制約を理解すれば、運用の工夫次第で制度や政策を改善でき、多少なりとも貧困を削減することが可能であると述べている。
以上が本書の概要であるが、貧困問題を理解する視点として、「貧しい人々の意思決定」に注目しているところが興味深い。開発途上国に暮す貧しい人々は、どうすればきれいな水を入手できるのか、明日はどうやって食事にありつくことができるのか、病気や農作物の不作といった災厄に対して、どのように対処すればよいのか、老後の準備はどうすればよいのか、など、あらゆることに対し自分で意思決定を下さなければならない。しかも、問題解決について十分な情報をもっていないため、正しい判断ができていないことが多い。
一方、豊かな国に暮す我々といえば、蛇口をひねれば衛生的な水が流れ、病気に対しては公共の保険制度によって、安心して医者にかかることもできる。また、コンビニに行けば栄養バランスのとれた出来合いの食事にありつける。
さらに、貯蓄についても社会保障負担や積立年金の天引きなど貯蓄を後押しするシステムも存在する。我々は、こうしたサービスを当たり前のように享受し、充実した社会システムに取り込まれているため、自ら意思決定を下す必要がない。そのおかげで、我々は生きるためというよりも、生活を豊かにするために、自らの時間や労力を割けるのである。このことは、逆の見方をすれば、豊かな国の人々が貧困に陥らない理由を意思決定という視点で再考することが、貧困問題の解決策を探る一つの有用な方法になりうることを示唆している。
本書は、難しい経済理論を避け、貧困問題について貧しい人々の現実的な目線で説明を展開しているので、経済学に明るくない人にとっても読みやすく、開発途上国の貧困問題に関心のある方や援助関係者にもお薦めしたい1冊である。
なお、本書では「貧乏な人々」と訳されているが、本稿では「貧しい人々」とした。
独立行政法人 国際農林水産業研究センター 農村開発領域 研究員 羽佐田勝美
*みすず書房刊 本体価格 3000円
http://www.jiid.or.jp/ardec/ardec48/ard48-bookinfo.html
貧困研究は、ここまで進んだ!
食糧、医療、教育、家族、マイクロ融資、貯蓄……
世界の貧困問題をサイエンスする新・経済学。
W・イースタリーやJ・サックスらの図式的な見方(市場 vs 政府)を越えて、
ランダム化対照試行(RCT)といわれる、精緻なフィールド実験が、
丹念に解決策を明らかにしていきます。
「貧困の本質への驚くほど深い洞察に満ちた本」――A・セン
「世界の貧困に関心のある人の必読書。こんなに多くを教えてくれる本を読んだのは
久しぶりだ。経済学からの最高の贈り物だろう」――S・D・レヴィット(『ヤバい経済学』)
2011年Financial Times / Goldmann Sachsベストビジネス書賞受賞作。
『ガーディアン』2011年5月18日
「バナジーとデュフロの『貧乏人の経済学』は開発援助の世界に波乱を起こしつつある。この本
が他の本と違うのは、ランダム化対照試行に着目している点だけでなく、いままで開発援助の
世界で無視されることが多かった問題や、あてずっぽうで推測されていた問題に果敢に取り組ん
でいる点だ。それらは、貧乏な人の決定に潜んでいる論理性であり、貧乏な人たちが手持ちで
最もよい決定をしているのかどうか? そして政策担当者はそれにどのように答えるべきか? と
いった問題だ」
『エコノミスト』2011年4月22日
「この熟読必死の新刊で著者たちは、大胆な研究と個人的な体験談を織りまぜながら、1日0.99
ドル未満で暮らしている8億6500万人の人々の生活を描き出している」
『フィナンシャル・タイムズ』2011年4月30日
「数々の実験の創意工夫はもちろんだが、この本に溢れているのは、最貧困にある人たちの生
活を描き出す、優しい眼差しだ。本書は、貧困にある人たちがこのうえなく辛い環境のなかで洗
練された計算をしていることを示してくれる……本書はこれから進むべき道筋を提示している。
そしてこれらは間違いなく試してみるだけの価値がある実験だ」
『ニューヨーク・タイムズ』2011年5月19日
「ランダム化試行は貧困削減の闘いのための要注目手法だ。このすばらしい本で開発援助につ
いての重大な疑問への取り組みかたが変わる。それは〈どんな援助がもっとも効くのか〉という
疑問だ」
内容(「BOOK」データベースより)
貧困研究は、ここまで進んだ。単純な図式(市場vs政府)を越えて、現場での精緻な実証実験が明かす解決策。
著者について
アビジット・V・バナジー
Abhijit V. Banerjee
カルカッタ大学、ジャワハラル・ネルー大学、ハーバード大学で学び、現在はマサチュー
セッツ工科大学(MIT)で経済学のフォード財団国際教授を務める。
開発経済分析研究所(Bureau for Research and Economic Analysis of Development)
元所長、NBERの研究員、CEPR研究フェロー、キール研究所国際研究フェロー、全米芸術科学ア
カデミーおよび計量経済学会のフェロー。グッゲンハイム・フェロー、アルフレッド・P・スローン・フェ
ローも歴任。2009年初代インフォシス賞など受賞歴多数で、世界銀行やインド政府など多くの機関
の名誉顧問を歴任している。
エステル・デュフロ
Esther Duflo
マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部で貧困削減開発経済学担当のアブドゥル・ラティーフ・
ジャミール教授。パリの高等師範学校とMITで学び、博士号取得とともにMIT助教となって現在に
至る。
全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー。2010年には40歳以下で最高のアメリカ
の経済学者に授与されるジョン・ベイツ・クラークメダル、2009年にはマッカーサー「天才」フェロー
シップ、2010年初代カルヴォ・アルメンゴル国際賞(Calvo-Armengol International Prize)など
受賞歴多数。『エコノミスト』誌により若手経済学者ベスト8のひとりに選ばれ、2008年から4年連続
で『フォーリン・ポリシー』誌の影響力の高い思想家100人に選ばれ続け、2010年には『フォーチュ
ン』誌が選ぶ、最も影響力の高いビジネスリーダー「40歳以下の40人」にも選出。
山形浩生
やまがた・ひろお
1964年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびマサチューセッツ工科大学(MIT)
不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務、途上国援助業務のかたわら、翻訳およ
び各種の雑文書きに手を染める。 著書『たかがバロウズ本』(大村書店、2003)『新教養主義
宣言』(河出文庫、2007)『第三の産業革命――経済と労働の変化』(角川インターネット講座
10、2015)ほか。訳書 ウィーラン『経済学をまる裸にする』(日本経済新聞出版社、2014)ケ
ンリック『野蛮な進化心理学』(白揚社、2014、以上共訳)ケインズ『お金の改革論』(講談社学
術文庫、2014)メネズ『無敵の天才たち』(翔泳社、2014)バナジー/デュフロ『貧乏人の経済
学』(2012)シーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』(2014、共訳)ピケティ
『21世紀の資本』(2014、共訳、以上みすず書房)ほか。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
バナジー,アビジット V.
カルカッタ大学、ジャワハラル・ネルー大学、ハーバード大学で学び、現在はマサチューセット工科大学(MIT)で経済学のフォード財団国際教授を務める。開発経済分析研究所(Bureau for Research and Economic Analysis of Development)元所長、NBERの研究員、CEPR研究フェロー、キール研究所国際研究フェロー、全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー、グッゲンハイム・フェロー、アルフレッド・P・スローン・フェローも歴任
デュフロ,エスター
MIT経済学部で貧困削減開発経済学担当のアブドゥル・ラティーフ・ジャミール教授。パリの高等師範学校とMITで学び、博士号取得とともにMIT助教となって現在に至る。全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー。2010年には40歳以下で最高のアメリカの経済学者に授与されるジョン・ベイツ・クラークメダル、2009年にはマッカーサー「天才」フェローシップ、2010年初代カルヴォ・アルメンゴル国際賞(Calvo‐Armengol International Prize)など受賞歴多数
山形/浩生
1964年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務、途上国援助業務のかたわら、翻訳および各種の雑文書きに手を染める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
政策評価のための因果関係の見つけ方
エステル・デュフロ(マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学科教授) /著
レイチェル・グレナスター(英国国際開発省(DFID)チーフエコノミスト) /著
マイケル・クレーマー(ハーバード大学経済学部教授) /著
小林庸平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)経済政策部主任研究員)/監訳・解説
石川貴之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
井上領介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
名取淳(PwCコンサルティング合同会社 People & Organization シニアアソシエイト)/訳
経済学におけるランダム化比較試験のパイオニアであるエステル・デュフロ教授らによる、理論的解説と実践的ノウハウが凝縮。
監訳者である当社小林庸平主任研究員による解説は、難解な部分を直感的でわかりやすい解説で補いながら、近年注目されている「エビデンスに基づく政策形成(EBPM)」にランダム化比較試験をどう活かしていくかを展望。EBPM に関心のある人、経済学の実証研究に関心のある人、必見の1冊です。
書籍名 政策評価のための因果関係の見つけ方
著者 エステル・デュフロ(マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学科教授) /著
レイチェル・グレナスター(英国国際開発省(DFID)チーフエコノミスト) /著
マイケル・クレーマー(ハーバード大学経済学部教授) /著
小林庸平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)経済政策部主任研究員)/監訳・解説
石川貴之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
井上領介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
名取淳(PwCコンサルティング合同会社 People & Organization シニアアソシエイト)/訳
発行 日本評論社
発行年月 2019/07/25
価格 定価(本体2,300円+税)
お求め方法 一般書店で販売(オンラインストアを含む)
目次
第1章 はじめに
第2章 なぜランダム化が必要なのか?
2.1 因果推論の問題
2.2 ランダム化による選択バイアス問題の解決
2.3 選択バイアスを補正するその他の方法
2.4 実験的手法と非実験的手法の比較
2.5 出版バイアス
第3章 調査設計におけるランダム化比較試験の導入
3.1 パートナー
3.2 パイロットプロジェクト:プログラム評価からフィールド実験へ
3.3 特殊なRCTの例
第4章 サンプルサイズ、実験設計、検出力
4.1 基本原理
4.2 グループ化されたエラー
4.3 不完全コンプライアンス
4.4 制御変数
4.5 層化
4.6 実践的な検出力の計算
第5章 実際の調査設計と実施にあたっての留意事項
5.1 ランダム化の単位
5.2 横断的手法について
5.3 データ収集
第6章 「完全なランダム化」が行われない場合の分析
6.1 割当率が層別に異なる場合
6.2 不完全コンプライアンス
6.3 外部性
6.4 脱落
第7章 推論に関する問題
7.1 グループ化されたデータ
7.2 複数アウトカム
7.3 サブグループ化
7.4 共変量
第8章 外的妥当性とランダム化比較試験から得られた結果の一般化
8.1 部分均衡効果と一般均衡効果
8.2 ホーソン効果とジョンヘンリー効果
8.3 特定のプログラムやサンプルを越えての一般化
8.4 RCTの結果の一般化可能性に関するエビデンス
8.5 フィールド実験と理論モデル
解説 エビデンスに基づく政策形成の考え方と本書のエッセンス
https://honto.jp/netstore/pd-book_29705590.html
ノーベル経済学賞に米研究者3人 世界の貧困削減へ実験的手法
2019年10月14日 18時53分
ことしのノーベル経済学賞の受賞者に、世界的な貧困の削減のため、実験的な手法を取り入れた、いずれもアメリカの大学の研究者3人が選ばれました。
スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の午後7時前、ことしのノーベル経済学賞の受賞者を発表しました。
受賞したのは、
いずれもアメリカのマサチューセッツ工科大学の
▽アビジット・バナジ−氏と、
▽エスター・デュフロ氏、
それに、アメリカのハーバード大学の
▽マイケル・クレマー氏の3人です。
ノーベル経済学賞の選考委員会は、授賞の理由について、世界的な貧困の削減のために、途上国の実際のデータを使い、因果関係を分析する実験的なアプローチを取り入れたことを評価したとしています。
デュフロ氏「受賞は多くの研究者を代表するもの」
このうちデュフロ氏は46歳。ノーベル経済学賞としては、最年少の受賞者で、女性では2人目となります。
デュフロ氏は受賞が決まったあと電話会見に臨み「受賞できるとは思っておらず恐縮だ。3人の受賞は貧困問題に取り組むたくさんの研究者を代表するものだ」と喜びを語りました。
また「貧しい人たちは絶望的で怠惰だと考えられがちだが、私たちの研究のゴールは科学的な証拠に基づいて貧困に立ち向かうことだ」と述べました。
評価された「実験的なアプローチ」とは
ことしのノーベル経済学賞の受賞者に決まった3人が評価された「実験的なアプローチ」とは、実際に途上国の特定の町や村を実験のフィールドとして使い、そこにあるさまざまな社会的条件と貧困の緩和の因果関係を探る手法です。
たとえば、貧困を緩和するのに何が必要かを探るため、ビジネスを行う際に少額の資金を貸し出してもらった人と、資金の貸し出しを受けなかった人の両方のグループを観察し、結果にどのような違いが生じるか分析したということです。
その結果、資金の提供を受けたかどうかは、貧困の緩和に欠かせない人々の健康や教育、それに女性の社会参加などといった要素には、あまり影響を与えないことがわかったということです。
「貧困の削減 どういった政策が効果的か明らかに」
ことしのノーベル経済学賞に、世界の貧困の削減に関する研究を続けたアメリカの大学の研究者3人が選ばれたことについて、ノーベル経済学賞に詳しい慶應義塾大学の坂井豊貴教授は「3人は発展途上国で徹底したフィールドワークを行って、貧困を削減するにはどういった政策が効果的なのかを明らかにした。世界的に貧富の差が広がる中、こうした研究に光があたったのかもしれない」と評価しました。
一方、ノーベル賞の中で唯一、日本人受賞者がいないのが経済学賞です。これについて坂井教授は「ことしも日本人が受賞できなかったことは残念だが、不況に関する研究などで海外で活躍している研究者もいる。簡単に受賞できるとは思えないが、来年以降に期待したい」と話していました。
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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191014/k10012131111000.html
Indian-American Abhijit Banerjee, his wife Esther Duflo and Michael Kremer jointly won the 2019 Nobel Economics Prize on Monday "for their experimental approach to alleviating global poverty." Banerjee, 58, was educated at the University of Calcutta, Jawaharlal Nehru University and Harvard University, where he received his Ph.D in 1988. He is currently the Ford Foundation International Professor of Economics at the Massachusetts Institute of Technology, according to his profile on the MIT website.
https://economictimes.indiatimes.com/news/politics-and-nation/abhijit-banerjee-esther-duflo-michael-kremer-win-2019-nobel-economics-prize-for-study-on-poverty/videoshow/71581966.cms
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/382.html