無理をカネで封じる構造的闇 悪魔の原発、呪われる宿命
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2019/10/07 日刊ゲンダイ 文字起こし ※タイトルは紙面による
関電だけの問題ではない(C)日刊ゲンダイ
これは一企業の金銭スキャンダルで済ませていい話ではない。関西電力の原発マネー還流事件で、あらためてハッキリしたのは、原発の構造的な問題だ。
関電幹部らが福井県高浜町の元助役・森山栄治氏(故人)から約3億2000万円分もの金品を受け取っていた問題。調査報告書の公表後も、関電の子会社や地元の警察幹部にも金品が渡っていたことが次々と明らかになるなど、疑惑は底なしの様相だ。
2011年の東日本大震災と福島第1原発の事故で脱原発の機運が高まる中、世論を蹴散らすように原発再稼働に邁進してきたのが関電だった。すでに4基が再稼働し、残る3基も21年までに再稼働させる方針だ。
「早期再稼働が喫緊の課題となり、森山氏への対応の頻度が多くなった」と報告書には書かれていたが、それは“後づけ”に過ぎず、原発マネーの闇はもっと深いはずだ。関電が公表した3億2000万円相当の金品授受は、11年以降の7年間分でしかない。
森山氏が誘致に尽力した関電高浜原発3・4号機が運転を開始したのが1985年。その当時から「陰の町長」として力を振るっていたことが知られている。
「公表された何倍、何十倍ものカネが、動いていたはずです。原発は普通のビジネスではない。立地自治体には国からの交付金や電力会社からの寄付金など、巨額のカネが流れ込んでくる。表に出てこないカネも桁違いです。そして、全国の原発立地自治体に森山氏のような“原発フィクサー”が存在するのでしょう。政府も関電も“死人に口なし”のごとく森山氏を悪者にし、彼の特異な人間性に原因を矮小化しようとしていますが、これは、決して関電だけの特殊事情ではないのです」(政治評論家・本澤二郎氏)
原発マネーの原資は税金と電気料金
鳩山由紀夫元首相も10月4日、ツイッターにこう投稿していた。
<原発マネーが関西電力の幹部に福井県高浜町の森山元助役を通じて還流していた問題で、関電幹部は隠蔽、虚偽を繰り返しながら、責任を取ろうとしない体質が明らかになった。この体質は他の電力会社においても大同小異であろう。彼らがなぜ故に原発再稼働を求めるのか、こんな所にも理由があったのだ>
業者が巨額の工事を受注した見返りに、その一部を電力会社の幹部に還流する。一般的にキックバックと呼ばれる構図だが、原発マネーはそういう単純な話では終わらない。地元対策として住民にバラまかれるカネもあるし、政界や官界への根回しも当然ある。メディア対策としても広告費などで巨額のカネが注入されている。その原資は税金と電気料金だ。
ここで考えるべきなのは、なぜ原発の周囲ではこうも巨額のカネが動くのか、地元対策が必要なのかということだ。そこに原発問題の核心がある。
「皆が嫌がる原発施設を無理やり押し付けて、カネで黙らせる。そうやって表面だけ取り繕ってきたものの、地域振興だとかクリーンエネルギーなどと喧伝したところで、裏では薄汚いカネが飛び交っている。国民から徴収したカネが、原発を経由して地元の有力者や電力会社幹部、政治家の懐に入る仕組みは、国家ぐるみの利権漁りと言うほかなく、だからこそ国策で推進してきたのではないかという疑念も生まれる。そうしたひずみの一端が、今回こうして明るみに出たということです」(原発問題に詳しいジャーナリストの横田一氏)
それも、元助役が顧問を務めた建設会社「吉田開発」に国税局の調査が入ったから、たまたま露見しただけで、査察がなければ歴史の闇に埋もれていた可能性が高い。その証拠に、関電は昨年9月にまとめた金品授受の調査報告書を隠蔽し続け、社外取締役にも今月2日に開かれた臨時取締役会で初めて内容を明かしたという。黙っていればバレないとタカをくくっていたのだ。
原発事故の教訓はどこへ(防護服に身を固め、福島第1原発の視察をする安倍首相)/(C)共同通信社
「歴代首相にカネを渡してきた」 関電幹部証言の重み |
「長年築いてきた政・官・電力の関係に問題があった」――。
これは、関電の元副社長・内藤千百里氏の言葉だ。
2014年に朝日新聞で連載された「原発利権を追う 『関電の裏面史』独白」で、実名で政界工作を証言。少なくとも1972年から18年間、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登らの歴代首相7人に「盆暮れに1000万円ずつ渡してきた」という。
「具体的な目的で渡す汚いカネではないという意識だった」「漢方薬のように時間をかけて効果が出ることを期待していた」「通産省や建設省の事務次官とも飯を食ってた」と赤裸々な告白が続く。
そうした裏仕事も「天下国家のため」と信じてきたが、福島原発事故を経験して考えが変わり、実名で取材に応じることにしたのだという。連載の最後、こう話していた。
「高レベル放射性廃棄物の最終処分地のめどがたてば、原発を再稼働すればいい。そのめども立たないのに動かしたら、また高レベル廃棄物が出る。使用済み核燃料を積み重ねるんですか。どこに持っていくかや。放射能は何万年の話ですよ。子々孫々や。原子力はセキュリティーにかこつけて隠し事が多すぎる。もう1回考えないかん。電力会社だけでなく指導する役所も悪い。学者もいかん。『現状維持 イズ ベスト』ですねん。そんなんで進歩ありますか」(朝日新聞14年8月14日付)
森山氏とも昵懇だったという内藤氏の告発は、痛烈な自己批判でもある。
国民の命や安全より利権が大事か
今回の原発マネー還流事件を関電のワルのせいにするのは簡単だし、政府もそうしたいようで頬かむりを決め込んでいるが、原発そのものの可否をそろそろ国民が本気で考える必要があるのではないか。
「福島原発事故後で、原発の“安全神話”は崩壊したのに、政府は相変わらず原発を『重要なベースロード電源』と位置付けて、再稼働を進めてきた。安倍首相の最側近である今井秘書官は経産省の資源エネルギー庁次長を務めていたバリバリの原発推進派で、この内閣は“原子力ムラ内閣”と言っていい。核廃棄物の持って行き場はなく、原発事故による汚染水の処理もままならない現状で、無理やり原発を動かそうというのは、電力会社の都合や自分たちの利権を優先しているとしか思えません」(横田一氏=前出)
ようやく召集された秋の臨時国会で、野党は関電問題を追及すると息巻いているが、表層的な金銭スキャンダルで終わらせず、原発が抱える悪魔的な宿痾にも切り込むべきだ。
原発の「絶対安全」は、裁判所も否定している。福島原発事故における業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人を無罪にした9月19日の東京地裁判決は、地震や津波の安全対策の指針となる文科省の「長期評価」には「合理的な疑いが残る」とし、「津波についてあらゆる可能性を想定し、必要な措置を義務づければ、原発の運転はおよそ不可能になる」と指摘。要するに、絶対的な安全を求めれば原発は動かせないと言っているのだ。前出の本澤二郎氏が言う。
「東電幹部の無罪判決で、誰も責任を取らない原子力ムラの体質がまた露呈し、司法もメディアも電力会社に逆らえないことを知って、国民はやりきれない気持ちです。そこへ関電の原発マネー還流事件が発覚した。裏工作のお金まで国民が払わされ、一部の特権階級が原発マネーで私腹を肥やしていることには怒りを禁じ得ません。原子力ムラの連中は、国民の命や安全より原発マネーが大事なのです。これはもう国家ぐるみの疑獄事件です。福島の事故の反省や教訓はどこにもない。原発は存在そのものが呪われているとしか言いようがありません」
国民世論も脱原発が根強い。あれだけの過酷事故を目の当たりにすれば当然だ。原発に絶対的な安全はなく、安全なフリをするのに莫大なカネがかかる。そんな不経済をいつまで続けるのか。もう答えは出ているが、現政権が続くかぎり何も変わらない。やはり、国民全体が決起するしかないのだ。
日刊ゲンダイ
— 但馬問屋 (@wanpakuten) 2019年10月7日
【“もう自明ではないか”
原発という悪魔 呪われる宿命】
『無理をカネで通すからこうなる』
「関電のワルのせいにするのは簡単だが、そもそもなぜ地元対策が必要なのか」
「原発をこの期に及んで無理やり動かそうとしている安倍政権に国民全体の決起が必要」
#買って応援 pic.twitter.com/c0h52xpejR
宿命とか??危険なの分かりきって運営してるんだから犯罪だよ❗️賄賂もばら撒いて❗️
— pandapanda (@pandatigor) 2019年10月7日
無理をカネで封じる構造的闇 悪魔の原発、呪われる宿命 https://t.co/FRlHVn7D0c #日刊ゲンダイDIGITAL
— eiga323秋津島信 (@eiga323) 2019年10月7日
無理を金で通すからこうなる【もう自明ではないか 原発という悪魔 呪われる宿命】裁判所が絶対安全を否定し、廃棄物の処理もままならず、安全のフリに莫大なカネがかかり、存在そのものが呪われている原発をこの期に及んで無理やり動かそうとしている安倍政権に国民全体の決起が必要(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/9Mx3cUT35b
— KK (@Trapelus) 2019年10月7日