会長人事がらみかと怪情報 NHKで今何が起こっているのか
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2019/10/03 日刊ゲンダイ 文字起こし ※タイトルは紙面による
NHKをぶっ壊す悪相2人(左から、菅官房長官と鈴木康雄・日本郵政上級副社長)/(C)日刊ゲンダイ
おびただしい数の金品をもらいながら「預かった」と言い張り、あとは死人に口なし。全責任を今年3月に亡くなった原発立地地域のドンの「特異な人物像」に押しつけ、まるで被害者ヅラ。2日の関電トップの会見にはあきれたが、関電に劣らずグロテスクな闇を抱えているのが、NHKの内情だ。
かんぽ生命保険の不正販売問題をいち早く追及した「クローズアップ現代+」を巡り、NHK経営委員会が昨年10月、日本郵政グループの言いがかりを受け入れ、上田良一会長を厳重注意。さらに続編の放送も延期し、情報提供を呼びかける動画2本を削除した一件こそ、NHKに今、起きている恐るべき事態を象徴している。
9月26日朝刊のスクープ以降、毎日新聞は連日、この問題を追及しているが、徐々にNHKと日本郵政に横たわる闇にスポットが当たってきた。ズバリ、安倍政権の威を借りた露骨な言論統制である。
郵政側は昨年10月5日、経営委に宛てて「ガバナンス体制の検証」などを求める文書を送り付けた。これを承諾して経営委は同月23日、上田会長を厳重注意し、郵政側に「会長に厳しく伝え、注意した」とする文書を送付。同年11月6日には、上田会長が番組幹部の「番組制作と経営は分離されており、会長は番組制作に関与しない」とした編集権に関する説明を事実上謝罪する文書を郵政側に届けさせた。
毎日によると、郵政側に出向き、上田会長名の謝罪文書を渡したのは、木田幸紀放送総局長だ。放送部門の最高責任者である放送総局長が個別番組に絡む抗議に直接対応するのは異例だが、受け取ったのは日本郵政の鈴木康雄上級副社長。09年に放送行政を所管する総務省の事務次官にまで上り詰めた“天下り官僚”である。
官邸の威光を浴びた傍若無人な振る舞い
郵政側の窓口として暗躍した鈴木氏は、菅官房長官との結びつきが強い。第1次安倍政権で総務相を務めた菅は、情報通信政策局長だった鈴木氏を省内ナンバー2の総務審議官に抜擢。ともにNHK改革を目指した。今も2人は昵懇の間柄で、日本郵政のトップ人事について相談し合うほどツーカーの仲だという。
鈴木氏は上田会長の謝罪文を受け取ると、翌日にはNHK経営委宛てに「果断な措置を執っていただいた」と感謝する文書を送付。その中で総務省時代の経歴をこう強調していた。
「かつて放送行政に携わり、(NHKの)ガバナンス(統治)強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場から、幹部・経営陣による番組の最終確認など幅広いガバナンス体制の確立と強化が必要」
せっかくNHKが郵便局員の「信頼」を逆手に取り高齢者を「カモ」にした特殊詐欺さながらの悪事を食い止める機会を与えたのに、言いがかりをつけて会長に詫びを入れさせた揚げ句、説教まで垂れる――。
鈴木氏の盗人猛々しい傍若無人な振る舞いも、その背に菅の威光を浴びているからできたのではないか。
「いくら元総務次官とはいえ、鈴木氏ひとりの力だけでNHKにあれだけの恫喝は加えられません。やはり菅氏という後ろ盾が威力を発揮したと疑いたくなります。NHK側も鈴木氏と菅氏の仲を知らないはずがない。だからこそ、当初は外圧に抵抗していた上田会長も郵政側に屈したとみるのが妥当でしょう。上田会長はまだ1期目。恐らく任期を重ねたいとの意欲があり、政権に盾突くわけにはいかないとの意思が働いたとしても不思議ではありません」(法大名誉教授の須藤春夫氏=メディア論)
よりによって(C)日刊ゲンダイ
圧力への屈服に慣れきったイビツな構造 |
NHKの特ダネを通じて日本郵政の不祥事が広がれば、大株主の政権側に飛び火しかねない。ならば“悪い芽”は早めに摘むべきだ。菅べったりの鈴木氏には、そんな「忖度」もあったのかもしれないが、経営委を突いたのは、放送行政経験のなせる業だ。
NHK会長の人事権を握るのは経営委で、その経営委を任命するのは首相だ。衆参両院の同意が必要とはいえ、安倍1強の政治状況で人事は安倍首相のなすがまま。第2次政権以降、ブレーンである埼玉大の長谷川三千子名誉教授や、安倍の家庭教師だった本田勝彦元JT顧問、作家の百田尚樹氏など“お友だち”を送り込んだものだ。
現経営委員長の石原進JR九州相談役もJR東海の葛西敬之名誉会長につながる“安倍人脈”。数年前まで日本会議福岡の名誉顧問を務めるなど思想的にも近い。
「もはや経営委は、政権が派遣したNHKの監視役に成り果てています。間接的に人事権を握られた会長以下、副会長、理事らは政権との適度な距離を保ち、忖度しなければその地位は維持できない。政権がトップ人事を牛耳り、思い通りにNHKを操っている構図です」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
経営委は上田会長への厳重注意という重い処分を議事録に載せなかったが、批判を恐れて事実を伏せる手口も安倍政権そっくり。いくら“お友だち”でもそこまで似せる必要はないが、こうした情報統制により国民の知る権利は次第に奪われていく。前出の須藤春夫氏はこう言う。
「放送法1条は『健全な民主主義の発達に資する』ことが法の目的と定めています。そんな理念を百も承知で自分たちの都合の良い形でしか放送法4条の『政治的公平』の原則を解釈しないのが、今の政権です。どの時代も有利な形でメディアに介入するのが権力の常ですが、NHKは圧力への屈服に慣れ過ぎてしまった印象です。むしろ、受信料の不払いが問題になる中、政権の力を借りて強制徴収に踏み込もうとしているのではないか。だから長い物には巻かれろで、メディアのあるべき姿を捨てている気さえするのです」
もはや常態化した都合の悪い真実の隠蔽
上田会長の任期は来年1月で切れる。続投するつもりでも、この時期に日本郵政への詫び入れが発覚したことで、大きなミソをつけた。絶妙なタイミングで明るみに出たのは、来年の会長人事絡みなのか。上田会長は1期で政権に辞めさせられるのか。
今年4月には籾井会長時代に専務理事を務め、菅と太いパイプを築いた“官邸のイエスマン”こと板野裕爾氏が専務理事に復帰。官邸は次期会長に板野氏を本命視し、ますます支配を強めるのか。揣摩臆測が乱れ飛び、ただでさえ、独自取材の特ダネを潰されたNHKの現場は気が気じゃないだろう。
超が付く日本会議シンパの萩生田文科相が就任した途端、いきなり「表現の不自由展」への補助金を召し上げたのにも驚いたが、タガの外れた政権はもはや牙を隠さず、今後も表現の自由と報道にドンドン介入するに違いない。前出の五十嵐仁氏はこう言った。
「文化庁は不交付決定の際の議事録を作成していませんでした。この政権は国民の知る権利を度外視し、検証の術を失わせて都合の悪い真実を隠すことが常態化しています。長期政権の弊害で何をやっても大丈夫と国民を見くびっている証拠です。だから、高市早苗氏を平気で総務相に再任させる。彼女は前回の総務相時代に放送法4条をタテに取り、政治的公平性に欠く放送を繰り返したテレビ局への『電波停止』に国会で言及した危うい人物ですよ。今回のNHK問題でも『放送法に反しない』と経営委の肩を持つ発言が目立ちます。政権側の露骨な開き直りに対抗できるのは、国民のしかるべき批判しかありません。政治介入を押し返し、外れたタガをはめ直して表現・放送の自由やNHKの独立性を取り戻すしかありません」
いい加減、国民は言論統制政権の露骨な正体に気づくべきだ。
日刊ゲンダイ
— 但馬問屋 (@wanpakuten) 2019年10月3日
【NHKで今、恐るべきことが起きている】
『タガが外れた表現の自由と報道への介入』
「“表現の不自由度”の交付金召し上げにも驚いたが、NHKにドーカツをかけた日本郵政の裏にも関電顔負けのグロテスクな顔」
「もはや牙を隠そうともしない言論統制政権の露骨な正体」
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会長人事がらみかと怪情報 NHKで今何が起こっているのか https://t.co/2wMY2sdVwG #日刊ゲンダイDIGITAL
— projim (@projimsao) 2019年10月3日
【タガがはずれた表現の自由と報道への介入】NHKで今、恐るべきことが起きている 「表現の不自由展」への交付金召し上げにも驚いたが、NHKにドーカツをかけた日本郵政の裏にも関電顔負けのグロテスクな闇 NHK会長人事、管官房長官の思惑、高市総務相の起用など、もはや...(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/8rkXaqQbJ3
— KK (@Trapelus) 2019年10月3日