中国アメリカ貿易戦争は、イランにこう影響している
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2019年10月 1日 マスコミに載らない海外記事
2019年9月18日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
8月最後の週、中国製品に新たな関税を課す決定をしたアメリカへの報復として、中国は、アメリカからの原油輸入を、初めて関税リストに追加した。中国は石油の約6パーセントをアメリカから輸入している。益々原油輸入に頼っている経済にとって、この決定には様々な重みがある。中国はアメリカ自動車輸入にも高関税を課す準備をしており、貿易戦争は今後も続く可能性が高いが、極めて重要な疑問はこうだ。中国は、なぜその経済の命綱、石油輸入に関税を課すのだろう? 一部の最新の数値によれば、中国の輸入原油への依存は、既に70パーセントに急増し、ガスの場合は、50パーセントへと動いている。指導部が最初に代わりの石油供給源を確保していなければ、中国が決してこのような決定をしなかったのは間違いな。ここでイランと、その安い/関税なしのイラン石油が登場し、中国がアメリカに対して、三つのレベルで対抗することを可能にする広大な地政学チェス盤が活性化するのだ。
最初に、貿易戦争という点で、アメリカからの石油輸入に対する中国関税は、世界における「新チャンピオン産油国」としてのアメリカの立場を傷つけるだろう。第二に、地域の地政学という点で、イランからの石油輸入は、アメリカ制裁に直面しているイラン経済を後押しし、イラン経済が破綻させずに維持するのに役立つだろう。言うまでもなく、イランは中国の一帯一路構想が、アジアを越えて広がるための重要な領土リンクだ。第三に、もしアメリカと中国が貿易紛争で妥協に達し損ね、両国の経済的、政治的な関係が冷たいままとなれば、中国がアメリカ石油への依存を継続するのは大きな不利になるだろう。それゆえ、アメリカ石油から自由になることで、中国は、アメリカとの長期戦に準備しているか、少なくとも現在の紛争がすぐには解決しないと見ており、それ故、公然と抵抗することで、多様化に向かっての動いているのだ。
中国は最近、四川省での国産ガス生産を、現在の需要の約20パーセントから、約33パーセントまで増加することに決めたが、これは中国のような巨大経済には十分ではない。それ故、イランの巨大な制裁されているエネルギー部門に対し、中国投資を増やすのだ。
報道によれば、中国はイランの石油、ガスと石油化学製品部門に約2800億ドル投資する予定だ。この投資は、やがて中国が、イランのエネルギー製品を、アメリカ石油より確実に遥かに安い割引価格で購入するのを可能にするだろう。イラン石油購入に関与する中国企業をアメリカが制裁するリスクはあるが、中国はこれに対処する用意ができている。イランとの取り引きを始めるに当たり、イランとの経済的つながりがある企業や国に対して、アメリカが恫喝している「二次制裁」に、中国はおじけづかないと発表した。
中国の決定には、地政学上の大規模な波及効果がある。イランから石油とガスを輸入するため、中国はトルクメニスタン-中国ガスパイプラインを拡大して、利用することが可能で、新パイプライン構築さえ可能で、そうすれば好都合にも、エネルギー需要を満たすのみならず、多くのアメリカに友好的な中東の石油とガス供給元、すなわちUAEとサウジアラビアへの依存を大幅に減らすことが可能になる。
そこで中国は、イランの輸送・製造インフラにも約1200億ドル投資している。十分際立って、いくつかの経路で、中国が建設する、高速鉄道を含むこのイラン・インフラで、中国は、イランとトルコを経由するヨーロッパへの/からの陸路貿易と、イランの港を通した、中東、アフリカ、そして更に先との海路貿易のための追加経路を得られるのは重要だ。極めて興味深いことに、中国が注目している港町の一つはインドが築いたチャーバハール港だ。イランからの石油輸入をゼロにしろというアメリカの命令を、インドが完全に遵守しているため、インド・イラン関係がかなり悪化して、中国が入りこみ、場を占めることが可能になったのだ。
中国の投資には、中国軍隊のイラン現地駐留が伴っている。アメリカに対する明確なメッセージとなるが、ライバル諸国が支援する非国家主体や、直接、ライバル諸国による妨害工作の企みから守るため、約5,000人の中国治安要員がイランに配備される予定だ。イランにおけるこの治安部隊が、現在アメリカがイラクに、あるいは2020年に、国防総省がアフガニスタンに残そうと目指しているものと同じぐらい大きいことは重要だ。同様に、アメリカ軍によるイランに対する、いかなる大規模攻撃や行動も、中国人軍事要員に命中して、軍事的にも、経済的にもアメリカを攻撃する能力を持った核保有国との緊張を急増させるリスクがあるため、(イラクとアフガニスタンで見られるような)いかなるアメリカ冒険主義も阻止する狙いがあるのだ。それ故、イランと中国間での本当の戦略的パートナーシップ実現が益々重要になる。これを結束させる力は、もちろん中国とイランに対するアメリカによる制裁と貿易戦争だ。
同じ点を強調して、イラン外務大臣は環球時報の論説でこう書いた。「中国はイランの不可欠な経済パートナーになっており、両国は多くの活動領域で戦略的パートナーだ」、中国とイラン両国は「世界的な問題では多国主義を支持しているが、それは、これまで以上に攻撃されている」と述べた。アメリカを直接非難し、ザリーフは「中国とイランは、世界の公正なバランスがとれた通商関係を支持しているが、我々両国は、ポピュリストの単独行動主義の頑迷さによる海外の[アメリカ]敵意に直面している。」と指摘した。
中国のイランにおける本格的駐留とアメリカへの反抗をいとわない姿勢は、中国の一帯一路構想や他の地域結合計画、すなわちユーラシア経済連合や上海協力機構を巡って「アジアの秩序」を構築しようとしているロシアやトルコやシリアやパキスタンを含めた国々にとって強力な後押しだ。格言が言うように、新秩序が出現するには古い物は解体されなくてはならない。中国の大胆な抵抗は、新秩序に向かう大きな一歩を意味する。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの対外、国内問題の専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/09/18/here-is-how-china-us-trade-war-impacts-iran/
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