消費者態度指数とクジラ
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/53126591.html
2019年08月29日 在野のアナリスト
8月消費者態度指数が0.7pt下落の37.1と、11ヶ月連続の低下です。こうした『良くなる』〜『悪くなる』を5段階に分けて聞いたアンケートの結果は、特に悪化が目立ちます。暮らし向き34.8(前月比-1.0pt)、収入の増え方39.5(0.0pt)、雇用環境42.2(-0.4pt)、耐久消費財の買い時判断31.7(-1.7pt)、資産価値38.8(-2.1pt)。ほとんどの指数がほぼ2018年初めをピークに、右肩下がりをつづけています。その中でも、暮らし向きと耐久消費財の買い時判断は、今年に入ってから急落という状況であり、増税が重しという人もいますが、明らかに世界経済の変調で展望がみえなくなり、期待がもてなくなったことによるものでしょう。 株価も下落し、資産価値も落ちる。安倍政権が成果をほこる雇用環境でさえ、2018年1月がピークです。つまり国民の感覚的には、2018年から後退に入っている、とみなすことが消費者態度指数からは分かるのです。しかもここで急落する指数があるように、まだ全く底がみえてこない。反転する兆しすら見当たらないのですから深刻です。マインド系の指数の悪化、これはまだまだつづいてしまうのでしょう。 日経新聞が『円高の防衛にクジラ活用』という記事をだしました。GPIFの年金基金を活用し、円売りを仕掛けるというのですが、日経が記事をだしたことからも、実はGPIFも限界を迎えたことを示しています。運用比率で外国株25%の目標に対し、現状は26%。外国債券は15%に対し、18%。これ以上、GPIFが円売りをだして外国の株や債券を買えば、比率を大きく超えてしまうことになる。それは政治的にも説明が必要です。 日本では場がひらく9時から、するすると円安に向かうことが多々ありましたが、GPIFのような機械的な運用をすると、こうしたことが起こり易い。上記の比率は3月末であり、5ヶ月でさらに目標から乖離していると考えられる。つまり限界、だから日経が報じ、円安期待を生じさせて国民に円売りをださせよう、というのが一連の流れでしょう。米国債の金利低下がつづく中、円高圧力を回避するには新たな円売り投資家を呼び込まないといけない。つまり国民を騙してでも、円売りをする資金を確保したい、ということにもなります。 日本ではすでに長短金利は逆転しており、通常の認識に従えば、景気後退入りの予兆となります。ただ、それを促しているのが外国人投資家による日本国債買いであり、無理に円安に抑えようとしてきたことから、マイナス金利でも為替と組み合わせれば彼らは収益をだせる。なので、さらに国債を買って金利を低下する、という構図がつづいています。日本の金融機関は、すでに貸出金利などゼロに近く、今以上に下げるような圧力でもなければ、現状のマイナス金利に静観の構えです。すでに国債市場のメインプレイヤーでもなく、金融機関は声も上げない。だから景気後退だと騒がない。ただし困るのは、YCCが崩れかかった日銀です。 日銀は金利水準のカーブをコントロールする政策をとっています。このままいけば、日銀が抑えたいカーブには嵌らなくなる。そのとき、日銀の手腕にも疑問符がつき、次の政策ですら効果を失う可能性が高まります。国債市場のメインプレイヤーが外国人投資家になり、睨みも利かない今、手の打ちようもありません。しかも、日銀がその動きを抑制しようとすると、ますます円高に進み易くなる。YCCの健全性確保か、円高抑制か、日銀にとって非常に悩ましいことになってきた、といえるのです。だから日経がクジラの記事を書いた、とも言えるのでしょう。ただ、年金の財政検証でも分かる通り、最悪のシナリオだと運用原資が枯渇することになる。まさにマイナス成長でそうなるのであれば、景気後退入りの予兆が現実味を帯びたとき、そうなるということでもあるのです。商業捕鯨も再開されましたが、日本のクジラは絶滅危機に陥りつつあり、ダイオウイカを追って深海までもぐっていると、浮上できなくなる日も近いのでしょうね。 |