雑感。米減税検討と日本の増税
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2019年08月21日 在野のアナリスト
米紙WPが、トランプ政権が給与税減税を検討、と報じた後、トランプ大統領が給与税やキャピタルゲイン税の税率引き下げを検討、と明らかにしました。ただ、まだ政権内で練られていないとみられ、報道に触発されて発言したものとみられます。FRBに対して利下げ圧力をかけるトランプ氏ですが、金利低下が逆に米金融機関や、運用を前提とする年金、保険などを圧迫する。すでに政策金利より実質金利が低下してしまっているため、マイナス金利と同じような悪弊が襲っている米国ですから、国債増発による金利上昇といった政策も、視野にあるのかもしれません。但しそれは、将来的な国債借り換え時の負担増大となって襲うことになるでしょう。トランプ政権がここで減税の手を打てるのか? 財政健全化の道も遠のくことになるので、恐らく議会は大モメ、ただこうした楽観をばらまくのが、今のトランプ氏の目的ということなのでしょう。 日本では10月から消費税増税ですが、電子決済が広がらず、政府に焦りもみられます。高々9ヶ月の売り上げ維持のために導入したところで、その後は負担ばかりが重くなる。これは最近の携帯電話、インターネット接続料でも同じですが、今なら〇〇円、と表記されているものが多いですが、1年後には負担が重くなってしまう。そんなものが需要を喚起するはずもないのですが、最悪なのはその1年後の負担増という表記が非常に小さかったり、分かり難かったり、そもそも記載していなかったり、といった問題がある点です。同じように、電子決済も店舗側にとって9ヶ月を越えるとただ負担ばかり重くなる、といったことを報じないか、報じたとしても扱いの小さい点にある。騙されまい、として余計に中小小売りを委縮させる効果がでているのです。 そもそものギャップは、中小小売りの購入層は高齢者。その高齢者は電子決済などには後ろ向きです。仕組みがよく分からない、という点と、例えは悪いですが、もしボケても現金ならなくなれば買い物はできませんが、電子決済の場合、仕組みによっては後払いでどんどん買うことができてしまう。先行きを考えれば導入に二の足を踏む要素が多いのです。結局、日本で電子決済が広がらないのは、急速にすすむ少子高齢化により購買層の高齢化が問題、ということにもなるでしょう。安倍政権はこの問題を完全に読み違えています。 今週は、週末のバーナンキFRB議長によるジャクソンホールでの講演への期待が支えです。ただ緩和姿勢が強調されると、実質金利がさらに低下する可能性もあり、匙加減に失敗すると急変動を起こしやすくなります。今は、楽観し始めると悪材料でも相場は上昇することもありますが、8月初めから下落局面に入っている、とみなすとその逆が起こり易い。逆イールドで景気悪化という不安が高まるように、金利上昇が次に何を引き起こすかを冷静に判断するわけではなく、そのときの感覚で相場が右往左往してしまうことが多いのです。 コンビニが実質増税分を値下げ、という話もでてきた。売上の落ち込みは防げますが、コスト負担は増える。企業業績への期待を剥落させます。日韓外相会談でも、河野外相が相手の手を引き寄せ、康外相は険しい表情を崩さなかった。これで分かることは、「経済最優先」の旗を掲げる安倍政権にも焦りがでてきた。インバウンド消費が落ちこめば、辛うじて支えられていた内需さえ崩れかねない、との警戒です。だから韓国側を日本の議論に引き寄せたい、というところでしょう。しかし文政権も支持率が上がっており、退くつもりはない。米中貿易戦争と同じで、日韓外交戦争も長期化すれば、実は弱点をかかえる日本へのダメージも無視できなくなります。結局、民主主義の体裁をとる国にとっては、選挙というタイミングで評価が下されるのであり、年末解散、総選挙を狙う安倍政権にとって、増税とインバウンド消費の減退が同時に起こることは、死活問題ともなってくるのでしょう。「経済最優先」どころか、「経済怪・憂患」となってきた安倍政権。トランプ政権のように『減税を検討」とも口にできない点が、リスクともなってきたのでしょうね。 |