室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
室井佑月「大人がいない国」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190724-00000006-sasahi-pol
AERA dot. 7/25(木) 7:00配信 週刊朝日 2019年8月2日号 作家・室井佑月氏は、緊迫化するイラン情勢を前にしても、曖昧な外交姿勢を示す安倍政権に苦言を呈する。 * * * 7月11日の日本経済新聞電子版に、「米、日本に有志連合への協力打診 イラン沖で船舶護衛」という記事が載った。 「トランプ米政権が中東のイラン沖などを航行する民間船舶を護衛するために同盟国の軍などと有志連合の結成をめざし、日本政府に協力を打診したことが10日、分かった」 トランプさんにお願いをされ、安倍首相が断れると思う? そんなことができているならもうとっくにしているわ。 沖縄の民意を守れただろうし、いらない武器を大量買いしていないだろうし、米国にばかり有利なTAG(物品貿易協定)という名のFTA(自由貿易協定)交渉を断れたろう。 今回だってさ、もともとはイランと米国の仲介役をしたかったんではないの? だったら、安倍さんはついこの間イランへ行ってきたのだし、今こそ動くべきじゃんか。トランプ大統領に「米国が核合意に戻ればいいのでは」っていってみろ。それができてこその仲介役だ。それができてこその「外交の安倍」。 しかし、イランから帰国後、この件について安倍首相はあまり話をしようとしない。あたしも彼が米国とイランの仲介役を果たせるとは思っていない。 けどさ、イラン情勢が緊迫し、米国と同盟国のこの国も、多国籍軍としてホルムズ海峡にいかねばならんのだとしたら、その話は国民にしなくてはダメだ。 選挙後に話すのだろうか? 新聞によれば米国の打診が10日だったから、きちんとした返事はしていないまでも、方向性は決めていると思われる。 2015年、安倍政権は安保法制を強行採決した。法の解釈を捻じ曲げ、自衛隊を海外に派遣し戦争に参加できる国となった。 あたしは自公維支持者や、彼らを応援している有名人、そしてわかっているくせに物事の本質を我々に伝えようとせず、ただ強きに従ったメディア関係者にいっておきたい。 海外から帰ってきた、日の丸国旗をかけられた棺を見ても、あなた方はなにも思わないのかと。 いいや、彼らはそれをも利用するだろう。亡くなった人々を英雄扱いし、異を唱えると非国民扱いする。政治がしっかりしていれば、メディアが勇気を持って政権批判をしていれば、亡くならずに済んだ命もあった、という反省にはならない。 そして、国民は並べられた棺の映像にはじめは驚き、でもそのうち慣れてくる。芸能人のスキャンダルと同等のニュースとして捉えるようになる。選挙があれば、どれだけ不祥事が重なっても、巨大与党へ投票する。 かつて、田中角栄氏は、憲法9条を盾に、泥沼化するベトナム戦争への派兵要請を断った。それはつまり自分が盾になり、米国と戦う覚悟だったということだ。 そんな大人は少なくなった。この国は、見た目は大人の、グロテスクな子どもばかり。ちゃんと大人になろうじゃないか。 米、日本に有志連合への協力打診 イラン沖で船舶護衛 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47215960Q9A710C1MM8000/ 2019/7/11 2:00 日経新聞 トランプ米政権が中東のイラン沖などを航行する民間船舶を護衛するために同盟国の軍などと有志連合の結成をめざし、日本政府に協力を打診したことが10日、分かった。米国は他の同盟国にも呼びかけており、今後、数週間以内に参加国を決める方針だ。日本政府は米側の具体的な要請を見極めながら、参加の是非や参加する場合の法的な枠組みを判断する。
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