国民だましは全て裏目 参院選“激戦区”でオセロ現象の予兆
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2019/06/19 日刊ゲンダイ 文字起こし 内閣支持率もジワリと後退(C)共同通信社 1カ月後に迫った参院選。つい最近まで余裕しゃくしゃくだった自民党が大慌てしている。 自民党が5月に実施した選挙情勢調査では、「自民勝利」「60議席」だったといわれている。ところが、状況が一変。自民党に逆風が吹きはじめているのだ。 原因は、「年金」「イージス・アショア」「日米貿易交渉」など、自民党の悪政が次々に表沙汰になったことだ。 とくに「年金問題」は決定的だった。なにしろ、あれだけ安倍自民党は「年金100年安心」などと喧伝していたのに、いまになって金融庁の審議会が<年金だけでは不十分だ><2000万円貯蓄しろ>などという報告書を作成したのだから、国民が怒るのも当然である。自民党議員の地元事務所には、抗議電話が殺到しているという。自民党議員が集まると「お年寄りから文句を言われたよ」と、愚痴をこぼし合っている状況だ。 内閣支持率もジワリと下がりはじめている。毎日新聞の調査では、支持率は43%→40%に3ポイントダウン。不支持率は31%→37%へ6ポイントもアップしている。 自民党が愚かだったのは、“火消し”どころか、隠蔽に走った結果、火に油をそそいだことだ。毎日新聞の調査でも、麻生財務相が金融庁の報告書の受け取りを拒否したことに対して、「納得できない」が68%に達している。「年金問題」をなかったことにするつもりだったのだろうが、完全に裏目に出た格好である。 政治評論家の森田実氏がこう言う。 「国民が怒るのは当たり前です。とくに麻生財務相のあの態度はなんですか。『金融庁の報告書は読んでいない』と堂々と答弁していた。国民生活に関心がないのは明らかです。しかも、いつもエラソーに上から目線です。国民の多くは、麻生財務相の姿に“安倍政治”の本質を見たのだと思う。本心では庶民をバカにし、都合が悪くなったら隠蔽すればいいと考えている。5年に1度、年金財源の健全性をチェックする“財政検証”の公表も参院選後に先送りを迫っている。国民が不信感を強めるのも当然でしょう。参院選を控える自民党候補は、有権者の怒りをヒシヒシと感じているはずです」 ただでさえ12年に1度、統一地方選と参院選が重なる「亥年選挙」では、自民党は苦戦を強いられている。12年前も、24年前も、参院選で大敗した。さすがに、安倍官邸も身構えているらしい。 大同団結が必要(国民民主・玉木代表と立憲民主・枝野代表)/(C)共同通信社
参院選は7月21日に行われる予定だ。 はたして、選挙情勢はどうなっているのか。勝敗を決するのは、32ある1人区の行方だ。6年前は<29勝2敗>と自民党が大勝、3年前も自民党の<21勝11敗>だった。 5月の自民党の調査結果は、自民党の<27勝4敗>だったとされる。ところが、いま政界では、衝撃的な予測が流れている。自民党が次々に取りこぼし、<17勝15敗>とほぼ互角となる可能性があるというのだ。 「年金問題」が起こる前から激戦が予想された長野、新潟、三重、滋賀、愛媛、沖縄に加え、東北の青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島の全6県、さらに山梨、大分、佐賀を失う可能性があるという。 1人区が大苦戦となったら、当然、比例区も数を減らすだろう。トータルで50議席を割り込んでもおかしくない。現有議席の66から16議席も減らすことになる。安倍首相の責任問題になるのは間違いない。即刻、退陣の可能性もある。 自民党の苦境を象徴するのが秋田県だ。もともと秋田は当選確実だった。ところが15日に岸田政調会長、16日に菅官房長官が秋田入りするなど、大慌てでテコ入れしている。防衛省は、秋田に「イージス・アショア」を設置すると決めているが、秋田を“適地”とした調査結果がデタラメだったことが発覚し県民が反発しているのだ。同じく、西日本の設置場所に指定された山口県でも批判の声が上がりはじめている。 オセロゲームのように、激戦区の勝敗が次々にひっくり返る予兆が日本各地で起きているのだ。 選挙情勢に詳しい政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。 「5月まで自民党内には楽観ムードが流れていました。衆参ダブル選の声が消えたのも“参院選単独でも勝てる”という判断が広がったからです。ところが年金問題の発生後、風向きが一変した。自民党内から再び“衆参ダブル選”を期待する声が上がりはじめている。参院選単独では勝てないと考えはじめている証拠です」 安倍自民党は、選挙の争点から「年金」を消すために、参院選では“外交の安倍”を訴えるつもりだったが、安倍のイラン訪問が“成果ゼロ”に終わったため、“外交の安倍”も訴えられなくなり、内心、途方に暮れているという。
年金問題が発生したことで、参院選は俄然、おもしろくなっている。 いま、安倍自民党が最も恐れているのは、「大票田」である高齢者が投票所に足を運び、怒りの一票を投じることだという。この世代が決起したら、自民党は50議席どころか、40議席という大惨敗を喫しかねないからだ。 65歳以上の高齢者は有権者の3割を占めるうえ、投票率も他の世代より高い。2016年の参院選では、60代の投票率は70%と全体より15ポイントも高かった。 17年の衆院選も72%と全体を18ポイント上回っている。高齢者の「投票力」はハンパじゃないのだ。 しかも、もともと高齢者は、若者と違って安倍への支持が高くない。日経新聞の5月の調査によると、20代は「支持」65%、「不支持」23%だったが、60歳以上は「支持」45%、「不支持」43%と拮抗している。 だから、日経新聞によると、安倍も「この人たちを変えるのはむずかしい。人生の不満が政権に向いている」と周辺に漏らしているという。 波乱が起きる要素は、いくつも重なっている。 12年前「年金問題」が争点になった参院選で自民党は大惨敗し、安倍首相は退陣に追い込まれている。あの時の再現はあるのか。 政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。 「12年前と決定的に違うのは、野党が政権批判の“受け皿”になりきれていないことです。もし、マトモな野党があったら、間違いなく雪崩現象が起きる。だから、いまからでも野党は小異を捨てて大同団結すべきです。新党結成は難しくても、小沢一郎氏が主張するように、少なくても比例区は統一名簿を作って戦うべきです。国民から一致協力していると見えるデモンストレーションも必要でしょう。なのに、立憲民主党の枝野幸男代表が結束を邪魔しているため、“受け皿”になりきれていない。参院選の争点は、消費税、年金、イージス・アショア、日米貿易交渉、安倍首相のイラン訪問……と、どれも自民党への批判が強いものばかりです。野党は、この参院選を千載一遇のチャンスだと考えるべきです」 安倍は参院選では、「悪夢のような民主党政権ができた。再びあの時代に戻すわけにはいかない」と訴えつづける方針だという。もはや、国民に訴える“実績”も“ビジョン”もない裏返しだ。 野党が腹をくくれば、劇的なことが起こるはずだ。
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