渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、そして日本の戦争映画批判…「日本人は過去と向き合うのが下手だ」
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2019.06.09 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争 リテラ
渡辺が出演する『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(公式サイトより)
現在公開中のハリウッド版『ゴジラ』映画の最新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に出演している渡辺謙。前作『GODZILLA ゴジラ』に引き続き、芹沢猪四郎博士を演じている渡辺が公開に合わせて、複数のメディアのインタビューに応じているが、そのなかで、社会問題に対する真摯な思いを語っている。
たとえば、「婦人公論」(中央公論新社)、2019年6月11日号のインタビューでは、今作がオリジナルの“昭和のゴジラ”に近く、人類や文明、環境問題が描かれているとしてこう語っていた。
「ゴジラをはじめ、怪獣たちの制御がきかなくなったら世界はどうなるんだろうという不安。これは今、われわれが直面している。たとえば自然災害のような人知の及ばないことや、人間にとっては有益なものであるはずのAIの制御がきかなくなったら人間を凌駕してしまうんじゃないかといった不安とも通じます。それは原子力なども同じ。どんなにテクノロジーが進んでも、未来に対する不安は、いつの時代にもあるものだと僕は思う。そういうテーマに僕ら俳優がきちんと向き合ったうえで、社会に一石を投じられるような力がその作品にあれば、やる意味があると思っています」
また、6月2日付朝日新聞デジタルのインタビューでも「単なるパニック映画には出たくなかった。エンタメだが、21世紀の科学が人類に何をもたらすのかという深い部分に切り込んだ脚本を読んで出演を決めた」と語ったうえ、自分がこうした考えをもつようになったきっかけについて語っている。
「東日本大震災後、このままの社会でいいのか、科学を信奉して未来はあるのかを考えてきた。ゴジラは怪獣映画でありながら、今日的な問題を含む」
たしかに、渡辺は東日本大震災後、熱心な被災地支援をしてきたのはもちろん、折に触れて、復興や原発事故の問題に踏み込んで発言するようになった。2019年2月11日付朝日新聞DIGITALのインタビューでも、「幹線道路の脇に、延々と置かれている除染土の黒いビニール袋をもう1回みんな見るべきじゃないかと思う。若い世代や、お子さんを持っている世代が戻れているかというと、なかなかそうではない。故郷を離れて、二度と戻れない人たちは少なくないのが現実でしょう」と、日本国民が忘れ去っている原発事故の被害の大きさを改めて強調。さらに東北が置いてきぼりにされたままオリンピックの準備が進められていく現状に苦言を呈した。
「2020年の東京五輪だって、復興五輪のはずなのに経済五輪になっているところが気になります。日本が復興していく姿を世界に見せていくんだというところに端を発しているはずなのに、経済効果だけを考えるオリンピックになっている気がします。東京だけ盛り上がって、東北が全然そっちのけっていうかね。遠い国の話みたいな感じなんじゃないかなあ」
■渡辺謙“戦争も原発も大半の人がやれ、といっていた、その歴史を受け止めるべき”
いや、震災や原発事故だけではない。渡辺は、この数年、憲法や戦争、平和についても積極的に発言するようになった。2015年、安倍政権が安保法制を強行しようとしていた時は、ツイッターで〈一人も兵士が戦死しないで70年を過ごしてきたこの国。どんな経緯で出来た憲法であれ僕は世界に誇れると思う、戦争はしないんだと!複雑で利害が異なる隣国とも、ポケットに忍ばせた拳や石ころよりも最大の抑止力は友人であることだと思う。その為に僕は世界に友人を増やしたい。絵空事と笑われても。〉(2015年8月1日)と護憲姿勢を鮮明にしたし、2016年10月、核兵器禁止条約に、日本が反対したときにはツイッターでこう批判していた。
〈核兵器禁止条約に日本が「反対」という信じられないニュースが流れました。いったいどうやってこの地球から無用な兵器を無くしていくつもりなのか? 核を持つ国に追従するだけで意見は無いのか。原爆だけでなく原発でも核の恐ろしさを体験したこの国はどこへ行こうとしているのか、何を発信したいのか〉
そして、6月2日朝日新聞デジタルのインタビューでは、「日本人は過去を検証して向き合うのが下手だ」として、日本映画で登場人物の大半が戦争をイヤだと考えているという設定になっていることに違和感を表明。「当時は大半の人が『戦争をやれ』と言っていたのではないか。原発もそうだ。そういう歴史を、ぼくらはちゃんと受け止めて、再びそういう流れになったときに食い止められるかが重要」と強調していたという。
政権批判につながるテーマやネトウヨの反発を買うような内容になると、一切口をつぐんでしまう日本の多くの芸能人とは対照的だが、こうした渡辺の骨太な姿勢は、やはり、俳優が政治的な問題にもきちんとコミットするハリウッドで仕事をしていることが大きいのだろう。
たとえば、トランプ大統領の人種差別的な政策や発言に対しては、ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ、サミュエル・L・ジャクソン、リチャード・ギア、ドン・チードル、クリス・エヴァンスなど、多くの俳優が直接的な言葉で徹底的に批判している。こうした発言で社会に影響を与えることも自分たちの仕事であると自覚しているハリウッドの俳優たちに、渡辺は強い影響を受けたのではないか。
■渡辺謙は「トランプ大統領に映画を観てほしいか」と聞かれ…
実際、渡辺は前掲「婦人公論」インタビューで、ハリウッドが映画のPR活動においても、哲学をきちんと観客に届けようとしていると指摘。それが、インタビューで撮影中の楽しいエピソードや失敗談を語るだけの日本との「一番の差だ」と語っている。
そして、「役者も、インタビューで撮影中の楽しいエピソードや失敗談を語るのではなく、その映画が現代とどうリンクするかを自分自身で考え伝えていく」ことが重要だと話し、「そのためには僕も日常生活の中で起きているさまざまな問題を常に意識している」と明かしている。
5月27日、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の公開前イベントが渡辺も参加するかたちで開かれたが、この日はちょうど、トランプ大統領の訪日最終日だった。案の定、渡辺は報道陣から「トランプ大統領にも映画を観てほしいか?」といった質問を受けたが、「観ないんじゃないかな。自分がキングだしね」と一蹴。逆に「3日前にロスから帰って来たのだけど、(トランプ大統領が来日した)一昨日じゃなくて良かった」と皮肉を飛ばしていた(5月27日付日刊スポーツ)
安倍首相の会食に呼ばれ、官邸で嬉しそうに記念写真を撮っているどこぞの俳優やタレントたちに、渡辺の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい、と思うのは本サイトだけではないだろう。
(編集部)
渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、そして日本の戦争映画批判…「日本人は過去と向き合うのが下手だ」|リテラ
— 但馬問屋 (@wanpakutenshi) 2019年6月9日
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「世界のケン-ワタナベ」と呼ばれる人物の頼もしい発言。離婚の時の対応に不信感を持ってたけど、以前から、こういう言動してたなら話は別だ🤔
— キラ (@tyokowithkira) 2019年6月9日
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