アマゾンの「早い」「安い」神話は国内小売業の逆襲で崩壊するか
https://diamond.jp/articles/-/200798
2019.4.24 森山真二:流通ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
Photo:DOL
米アマゾン・ドット・コムの日本事業に対する包囲網が静かに築かれ始めている。アマゾンの強みは消費者の立場からすればその買いやすさと、さらに送料がかからず注文から短時間で配送される便利さだろう。いわば「早い、安い」だ。しかし、国内の大手小売業を中心に店舗での消費者の立ち居振る舞いの分析や、ウェブから店舗へのスムーズな誘導戦略が進んでおり、快適な購買体験が構築されようとしている。店舗の巻き返しが活発化する中、アマゾンはこれからも国内市場で高い成長が続けられるか。(流通ジャーナリスト 森山真二)
リテールAIカメラで
購買行動と棚の商品の動きをとらえる
「これまでは大量生産、大量消費の時代。『メーカーと流通が主導し“モノ”を作ったから買ってください』…こうだった。だからこそ、(店舗で)本当に(消費者が)欲しいモノを見つけやすくしたい」
九州を地盤に、ディスカウント型の小売り業態を展開するトライアルホールディングスのRetailAI社長・永田洋幸氏はこう強調する。
トライアルは4月19日に大型スーパー「メガセンタートライアル新宮店」を開いた。店舗には小売業に特化し独自開発した「リテールAIカメラ」を1500台も導入、このカメラで顧客の店内での購買行動と棚の商品の動きを逐次とらえようというのである。
永田社長は「欲しいモノがあらかじめ分かっている時にはEC(電子商取引)は便利。しかし、顧客の購買行動の80%は非計画購買(買うものを決めていない)。本来のマーケティングはワンツーワンであるべきで、人がどのように商品を買っているか、何に反応して何が欲しいのかを(リテールAIカメラで)とらえていく」と話す。
例えばECサイトでは、顧客がどこのページを閲覧しているかでレコメンドを発信、最終的にどのページでどういう商品を買ったかを分析する。ウェブでは当たり前のようにやっていることだ。しかし、店舗ではこうした分析はほとんど進んでいなかった。それを店舗でやろうというわけだ。
カートを押している客には
広告で箱買いできる商品を薦める
新宮店には棚にデジタルサイネージ(情報・広告媒体)が設置してあり、広告が表示されるようになっている。広告は顧客に応じて切り替えることができる。
リテールAIカメラで性別やカートを持っているか否かを識別し、カートを持っていない顧客には例えばビールの単品を電子広告で薦める。カートを押している顧客には勧める商品は同じだが、箱買いを薦めるという具合である。
このリテールAIカメラの開発に携わった最高技術責任者(CTO)の松下伸行取締役は、ソニーでデジタルカメラやスマートフォンのカメラの開発を手掛けた。
「広告を出したからといって買ってもらえるわけではないが、顧客が商品購買の際に悩んでいる時に薦める」のが効果的と言う。さらに「カメラとデジタルサイネージ、クーポンや店内放送などを立体的に組み合わせ」(同)販売促進を行っていくという。
AIカメラは販売機会の損失を防ぐことにも役立つ。リテールAIカメラは従来あるような天井から多くのカメラを吊り下げる方式ではなく、棚に値札のように設置、顧客の動きとともに棚にある商品を認識している。
どの商品が何個あるか、フェース数を認識することができる。さらに顧客は上から商品を取るのか、真ん中から取るのかという行動とともに、棚の状態をリアルタイムで把握する。10分に1回、1時間に1回程度認識し、品切れなどを本部や店舗が把握するのだ。
従来、カメラは高価で導入コストがかかり、二の足を踏む小売業も少なくなかったが、トライアルグループが開発したカメラはこうしたマルチな機能を搭載し、スマートフォンのために開発された技術を組み合わせることで低価格化して導入しやすくしており、今後、トライアルの店舗だけでなく、他の小売業にも導入を呼びかけていく。
楽天のポイントカードを導入する
国内の外食・流通企業が続々
ホームセンター大手のコーナン商事はネット通販大手の楽天のポイントカードを導入した。楽天はアマゾンの有力な対抗馬。その牙城死守のために現在、ポイントを軸とした経済圏を広げている。
楽天ポイントは現在、マクドナルドやくら寿司、さらにドラッグストアのツルハホールディングスといった、それぞれの業界の有力企業が導入しているが、コーナンもその1社となった。
店舗でもネットでも固定客化の有力なツールはやはりポイントである。楽天は1億以上という会員数の基盤をベースに楽天ポイントの参加企業が増え、経済圏が膨らめば膨らむほど、楽天ポイントが貯まりやすくなり利便性が高まるのだ。
コーナンは楽天のECサイト「楽天市場」にも17年から出店しており、今後、ポイントカードを活用して、ネットと店舗のオンライン・ツー・オフライン(ネットから店舗へ消費者を呼び込む)戦略を展開する。同社の疋田直太郎社長は「楽天のポイントカードの導入で若年層の取り込みなど客層の拡大を目指す」と話す。
しかもコーナンは、楽天ポイントカードの導入で獲得できる精度の高い顧客購買情報をマーケティングに活用する。
コーナンではポイントカードの導入で「POS(販売時点情報管理)システムでは判別できなった『誰がいつどこで何をいくつ使ったか』を“見える化”できるのが強み」と指摘する。
楽天としてもこの黄金の方程式で経済圏を広げていけば、楽天市場への集客が期待できるし、実店舗を持つ側としても相乗効果を生み出しやすい。いわばウィンウィンの関係が築けるわけだ。
店舗を持つ小売業が
デジタルで購買体験を広げる
店舗を持つ小売業は、顧客に店舗に来てもらわないことには話にならない。いかにネットから店舗へ来てもらうか、また逆に店舗で商品を確認してウェブで商品を購入してもらうか、という購買体験を築いていけるかが、ECが拡大しているなかで重要な課題であることは事実だろう。
アマゾンの日本事業の売上高は2018年12月期で約1兆5000億円、前年比で16%程度伸びている。これだけ分母が大きくなっても2ケタの成長をしていることは、取りも直さず購買のインフラになっている表れだろう。
しかし、店舗を持つ小売業がデジタルで購買体験を広げるという動きは、ジワリと浸透しつつある。ウェブで商品に関連した情報を発信し、ネットでも店舗でも購買できるという取り組み、さらにそこにポイントを絡め、固定客化を図るところも増えてきた。こうした動きが一段と広がれば少なくとも今後、アマゾンの独走も続かないだろう。米国では店舗を持つ小売業に「いつでもどこでも」というオムニ化の動きが広がり、アマゾンも押され気味だ。
アマゾンは国内の有料会員「プライム」の年会費を、従来の3900円から4900円に値上げした。国内の物流費高騰が収益を圧迫していることが主因とみられる。
「アマゾンの早い、安いという強みも揺らぎ始めている」(大手スーパー幹部)という指摘もある。国内小売業の逆襲で、アマゾンの今後の成長にも不透明感が出てきたかもしれない。
アマゾンの神話は国内小売業の逆襲で崩壊するか
— 長里 静思 (@tgmdt852) 2019年4月23日
客がリアル店舗で感じる苦痛はレジで並ばねばならない事だが、今のようなレジ形態で無人化するのではなく、今のレジプラス、キャッシュレスの無人化コーナーで精算できるものを追加すべきなのである、客の選択に任せる事だ https://t.co/7GGWN5Zck9
特化専門型なら復活出来るかもしれないけど、町の小売り屋さんは、無理だと思うの。
— u_rahigus (@u_rahigus) 2019年4月23日
アマゾンの「早い」「安い」神話は国内小売業の逆襲で崩壊するか https://t.co/6ITRC4mhfj
そうかなぁ・・・「店舗を持つ小売業がデジタルで購買体験を広げるという動きは、ジワリと浸透しつつある。そこにポイントを絡め、固定客化を図る、こうした動きが一段と広がれば少なくとも今後、アマゾンの独走も続かないだろう」 https://t.co/0YDJudnZ8K
— ニュース備忘録(フォロー返し無し) (@mambo2016) 2019年4月23日
最近は時々ヨドバシ・ドット・コムを利用しているが、確かにAmazonよりも迅速で安い❗夜10時過ぎに発注して翌朝朝イチで届いたりする。しかも条件なしに配達料は無料だ。たとえ数百円の商品でも無料なのには驚く。これで利益が出るのか心配だが、頑張ってほしい👏https://t.co/mi0Hd09Szj
— Takao Chikubu (@asktaka) 2019年4月23日
アマゾンの「早い」「安い」神話は国内小売業の逆襲で崩壊するか ダイヤモンド・オンライン 米アマゾン・ドット・コムの日本事業に対する包囲網が静かに築かれ始めている。アマゾンの強みは消費者の立場からすればその買いやすさと、さらに送料… https://t.co/6CVrKdKIvs
— 神話ガイド (@Kami_Guide) 2019年4月24日