ネットにはびこる荒唐無稽の珍説まで信じ込む高齢者たち 高齢者はなぜネトウヨにはまるのか
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2019/04/19 日刊ゲンダイ 賛成多数でヘイトスピーチ抑止の条例が可決した大阪市議会(C)共同通信社 ネトウヨブログ「余命三年時事日記」の呼びかけで、懲戒請求を受けた弁護士が、「違法な懲戒請求をされた」として請求者に対して損害賠償を求めた裁判の1審判決が、先週、相次いであった。 懲戒請求された弁護士で訴訟を起こしているのは、長年差別問題に取り組んできた神原元弁護士のほか、佐々木亮、北周士、嶋ア量、小倉秀夫、金竜介、金哲敏の各弁護士7人で、これまでに判決が出たものもある。いずれも弁護士側の主張がおおむね認められ、それぞれ約30万円の賠償金支払いが命じられた。 弁護士によって提訴の理由はさまざまだが、大量懲戒請求をある種の社会問題として捉え、警鐘を鳴らそうとしている点では共通している。 わかっているだけで150人以上の弁護士がブログ主の勝手な“指定”によって不当な懲戒請求をされている。 神原氏はヘイトデモ問題に積極的に取り組んできたことが原因ではないかとみられる。悪質なのは金竜介氏と金哲夫氏のケースだ。名字で在日コリアンということがわかって狙われた。明らかな民族差別である。しかし、懲戒請求されたのは在日コリアン弁護士全員ではない。ここがブログ主の不可解なところだ。提訴に踏み切ったのが金竜介氏ら2人だった。 北氏と嶋ア氏はとばっちりだ。佐々木氏が不当な大量懲戒請求を受けていることに対して、ツイッターでねぎらいの言葉をかけただけなのだ。 北氏は<ささき先生とは政治的意見を全く異にする弁護士ですが、今回のささき先生に対する根拠ない懲戒請求は本当にひどいというか頭おかしいと思いますし、ささき先生に生じている損害の賠償は当然に認められるべきだと思っています> 嶋ア氏に至ってはたった一言<何で懲戒請求されているのか、ほんと謎です。酷い話だ>とつぶやいただけだった。 「余命ブログ」はこの2人の投稿が「共謀」だとして、懲戒請求をけしかけたのだ。 一方、最も早い段階から懲戒請求されている佐々木氏についてはブログとの“接点”が発見されている。それは、「余命ブログ」を書籍化している青林堂という出版社で起きた労働問題に関する訴訟で、佐々木氏が労働者側の代理人をやっているということだった。 ■北のミサイル発射を支配? ところが、佐々木氏がその事実をツイッターに投稿すると、ブログ主やその支援者は青林堂との関係を否定しつつ、佐々木氏が<日弁連会長や幹部以上の力をもっている>などと主張し始め、揚げ句の果てに佐々木氏が北朝鮮のミサイル発射を支配しているという珍説まで飛び出す始末だった。 問題は、こうした荒唐無稽な話を高齢者を中心とする読者が信じ込み、行動まで起こしてしまうということだ。その結果、懲戒請求された弁護士や事務職員が膨大な事務作業に忙殺されるということについてはまったく思いが至っていない。 三宅雪子 ルポライター 1965年3月5日、米国ワシントン生まれ。玉川学園女子短期大学、共立女子大学を卒業後、民放テレビ局に21年間勤務。元衆議院議員。 父は三宅和助元シンガポール大使、祖父は石田博英元官房長官。著書に「福祉と私 〜『支えあう社会』を国政の場から〜」
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