米国の情報統制はオバマ政権から強化されたが、日本政府も連動して「秘密保護」
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2019.04.16 櫻井ジャーナル
アメリカはシリアの東部へクルド系武装勢力に対する物資供給を進める一方、イラク西部へ軍事物資を運び込むために安全保障関連会社と契約を結んでいると報じられている。 シリア東部からイラク西部にかけての地域はアメリカなどの侵略国が傭兵として使っていたダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)が2014年から支配していた。 ダーイッシュの戦闘員はサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)とムスリム同胞団が中心。疑似宗教国家が出現したのだが、そうした事態を予測し、警告していた組織が存在する。アメリカ軍の情報機関DIAだ。 2012年8月にホワイトハウスへ提出した報告書の中でDIAはバラク・オバマ政権の反シリア政府軍支援政策はシリアの東部地域(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国を作ることになる可能性があるとしていた。そのときのDIA局長がマイケル・フリン中将だ。 オバマ政権はサラフ主義者による支配国を建設、シリアとイランを分断させようとしていた。両国の分断は1980年代からネオコンが主張していた戦略だ。シリア東部、ユーフラテス川流域には油断地帯が広がっているが、その利権もアメリカ支配層が支配し続けようとしている一因である。 DIAの警告は2014年にダーイッシュの出現という形で現実になった。この年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧される。その際にトヨタ製小型トラックのハイラックスの新車を連ねた「パレード」を行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられて広く知られるようになった。 アメリカの軍や情報機関は偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などで武装集団の動きを知っていたはず。それにもかかわらず、動かなかった。イラク軍の一部は武器や弾薬を残して「逃亡」し、そうした軍事物資をダーイッシュは手に入れたとも言われている。イラク政府は意図的に武器や弾薬を渡したのだとして責任者を処罰している。 オバマ大統領が中東や北アフリカを制圧するためにムスリム同胞団を使うと決めたのは2010年8月のことだった。PSD-11を承認したのだ。 アメリカ軍のヘリコプターがロイターの取材チームを含む非武装の人びとを銃撃、殺傷する様子を撮影した映像などの資料をウィキリークスが公表したのはその4カ月前。当時、イラクにある刑務所でアメリカ軍が拷問している実態も明らかにされていた。 拷問を明らかにした人びとをオバマ政権は厳しく処罰する一方、拷問した人びとは不問に付された。ウィキリークスに資料を提供したブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵は2010年5月に逮捕され、8月にはウィキリークスを創設したジュリアン・アッサンジはスウェーデンで事件の容疑者になる。 スウェーデン警察の求めに基づいて逮捕状が出され、タブロイド紙が警察のリーク情報に基づいて「レイプ事件」を報道、騒動が始まった。 しかし、その翌日には主任検事が令状を取り消してしまう。事件性はないと判断したのだが、その決定を検事局長が翻して捜査を再開を決める。9月27日にアッサンジはスウェーデンを離れた。スウェーデン当局は11月にアッサンジを国際手配するが、2017年に捜査を打ち切った。冤罪だと言うことを認めたのである。 その間にアッサンジはロンドンにあるエクアドル大使館へ逃げ込み、エクアドル政府は2012年6月に政治亡命を認めたが、アメリカの当局は2011年初めより前に彼を秘密裏に起訴していた。この情報は民間情報会社ストラトフォーの内部でやりとりされた電子メール(ウィキリークスが公表)の中に出てくるほか、アメリカのケレン・ドワイアー検事補が裁判官へ書いた文書の中でも記載されている。 アッサンジはドナルド・トランプ政権になって逮捕されたのだが、起訴されたのはオバマ政権の時代。情報の統制を強めたのはオバマ政権だ。 アメリカと共通の価値観を持っているという日本の支配層も情報の統制には熱心だ。アメリカの支配層がソ連に対する先制核攻撃の準備を進めていた1957年にアメリカを訪問した岸信介はジョン・フォスター・ダレス国務長官らから秘密保護に関する新法の制定が必要だとの要請を受けていたそうだが、岸の孫に当たる安倍晋三の政権は2013年12月に秘密保護法を公布している。オバマ政権の動きと連動しているように見えるが、ダレスらの要請を考えると根はさらに深い。 アメリカと日本の支配層は民から公的な情報へアクセスする権利を奪おうとしている。言論の自由、表現の自由は風前の灯火だ。いや、アッサンジに対する日本の反応を見ていると、すでにインテリやマスコミなどは言論の自由、表現の自由を放棄したのかもしれないと思える。 |