コラム2019年2月25日 / 12:41 / 2時間前更新
米企業の技術革新力に黄信号、収益動向と大きく乖離
Edward Hadas
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[ロンドン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米企業は、技術革新の面では弱体化しつつあるように見える。だが、収益面では状況はまったく異なる。
ノースウエスタン大学のエコノミスト、ロバート・ゴードン氏は、自身が「技術的フロンティア」と呼ぶ分野の減速を最初に指摘した1人だ。2012年、最先端のフロンティアである「コンピューター革命」からの恩恵が下火になりつつあるとの仮説を打ち出し、議論を呼んだ。
とはいえ、技術の成熟度を示す兆候の1つは、研究開発費の生産性低下だろう。あらゆる技術革新は、これまでに比べさらに多くの努力が必要となる。スタンフォード大の経済学者ニコラス・ブルーム氏らによる研究は、その生産性低下が現実に起きていることを示している。
彼らの研究は、米国での研究開発費と労働生産性の上昇を巡る関係を調べている。その結果は明解だ。同じペースで上昇を続けるためには、より多くの「燃料」が必要になる。正確には、単に労働生産性の低下を避けるだけでも、13年ごとに研究開発費を倍増させていく必要があると、ブルーム氏らは計算している。
実際、生産性の低下は回避できていない。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの2017年報告書によると、1987─2004年の米生産性の伸びは、年平均2.1%だった。その後の10年では同1.2%で、低下傾向が続いている。
もちろん、依然として躍進を続けている経済分野もある。例えば、ビッグデータは急速に利用しやすくなり、従って価値が増している。だが、こうした技術「最前線」の背後で、進歩ペースの鈍い「その他大勢」がますます増え続けている。
ブルーム氏らは、いくつかの重要産業に着目した生産高分析も行っており、その結果は典型的だ。「生産の伸びは、安定的または下落すらしている。だが生産拡大をもたらした研究の量は大きく増加している」
ゴードン氏を含めた一部の研究者は、技術革新の減速を嘆いている。だが、技術がどれほどの進歩を遂げてきたかを再認識することで納得できるだろう。先進国に住む人ならばすでに、長く、安全に、かつ快適で刺激的に生きられるだけのものを十分に手にしている。 これから先、進歩の速度が遅くなったとしても、今ある問題を解決し、新たな機会を広げていくだけのモメンタムは恐らくあるだろう。
だが一方で、技術革新の減速は、競争市場の構造も変える。
ブレークスルーの流れが細れば、競争上の大きな武器を長く保持できる企業は減るだろう。こうしてよりフラットな企業競争の現場では、生産性や市場占有率のやや低調な伸びが業界標準になるだろう。そうなれば、経済理論上、利益率は低下する。
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ニューヨーク大学の学者による研究では、この経済理論が一部正しいことを示している。トーマス・フィリッポン教授とジャーマン・グティエレス氏は論文で、米国全体と各業界の最大手企業を検証した。そして、2000年ごろを境に、こうした「スター企業」の傾向が大きく変わったことを発見した。
例えば、2人は、62業種における時価総額トップ上位4社が、米国の年間生産性上昇率にどう貢献しているかを調査した。こうした企業には、グーグルを傘下に持つアルファベット(GOOGL.O)やフェイスブック(FB.O)、アップル(AAPL.O)、アマゾン(AMZN.O)、そしてマイクロソフト(MSFT.O)が含まれる。各業界の最大手企業は年を追って入れ替わるため、常にその当時の「勝ち組」が含まれることになる。
1960─2000年にかけて、年間の米生産性上昇率に対するこれら248社の貢献度は、平均で0.72ポイントだった。そして、2001─16年では、同0.43ポイントだった。
市場占有率でも、同じような傾向が見て取れた。248社の米国売上高は、1980年には国内総生産(GDP)の29%だった。それが2016年には25%に低下していた。つまり、技術革新の減速に伴う「平準化作用」に耐えられるような、圧倒的なスター企業は十分にはいないということだ。
だがその一方で、企業業績には、経済理論通りではない面もある。競争力が低下しても、最終的な利益は減っていないのだ。実際、米政府の統計によると、国民所得に対する企業収益の比率は、この10年で平均6.7%で、2000─1991年の同5%から上昇している。
ただ、こうした収益の伸びは、設備投資の増加につながっていない。それどころか、民間投資は同期間に、GDPの17.6%から16.2%に減少している。
企業経営者にとって、明らかに利益追求の方が技術革新に取り組むよりも容易だった。もしくは、彼らにとってより有益だっただけかもしれない。結局のところ、経営者の報酬は、主に収益と株価の伸びに連動しているのだ。
このように技術と利益の傾向が乖離(かいり)することは、フェアではないように見える。米企業に投資する株主は事実上、技術革新への貢献が低く、設備投資も少ない企業からより多くのリターンを得ていることになる。
もちろん、このようなことを心配するのは経営者の仕事ではない。自社の技術開発の成果を、彼らは、全体への思慮なしに宣伝しても構わない。また、「株主価値教」の熱心な信者としては、利益が「高すぎる」などという考えはタブーだろう。
しかし、政治家の立場は異なる。正義の追求も視野に入れなくてはならない。そして、企業収益への課税や、反トラスト規制、業界癒着の規制など、強力な武器を手にしている。これらを使えば、利益と生産性を巡る傾向を変えることができるだろう。
株主には厳しいが、社会のためにはその方が好ましい。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/global-economics-breakingviews-idJPKCN1QE05D
米金融当局:利下げ余地限られる中、将来の景気対策の考察深める
Jeanna Smialek
2019年2月25日 11:20 JST
• 物価水準目標や潜在金利、平均でのインフレ目標達成など議論か
• バーナンキ、ウィリアムズ両氏ら著名エコノミストが戦略練る
米経済が将来新たなリセッション(景気後退)に見舞われた場合、米金融当局者がそれに対処するための利下げ余地は限定されることになりそうだ。このため、そうした不備を補うための手段についての研究が進められており、その成果は今後の金融政策運営を方向付ける可能性がある。
米金融当局は過去数年間に注意深く利上げを行い、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は2.25−2.5%のレンジに引き上げられた。だが、新たなリセッションに陥るまでにあと数回利上げできたとしても、利下げによって成長を刺激し、インフレを安定させる余地は過去のケースよりも限られそうだ。複数の研究によれば、人口動態や他の長期的トレンドによって、この現実は恐らくニューノーマル(新たな標準)であるとされる。
このような状況の下、金融当局者は2019年を金融政策へのアプローチ再検討の年とする計画で、それには低金利環境の中でどのような戦略が最も効果的に作用するか解明することが含まれる公算が大きい。トップクラスの研究者によるこれまでの論文からは、何が議論の対象となっているのかが示唆される。
米金融当局者の講演や研究結果を踏まえると、当局はインフレの新たな枠組みについて考察するか、もしくは有効性が実証済みの量的緩和(QE)のような政策措置を議論する可能性がある。当局者はさらに、他国で近年活用されてはいるが米国では試したことのないイールドカーブコントロールといった選択肢を加えることも検討するかもしれいない。イールドカーブコントロールは連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長が就任前のつい昨年、大学院生に講義していた話題の1つだ。
次に政策金利を補強すると想定される一連の措置と、その有効性に関する研究結果を紹介する。
一時的な物価水準目標
解決策を詳述するのに先立ち、低金利が金融当局にとって深刻な問題となる理由を見ておく意味があるだろう。
政策金利がゼロにまで引き下げられると、金融当局は経済を崖っぷちから引き戻す手だてに乏しい状況に置かれる。潜在力を下回る成長の期間が長引けば、インフレ率は伸び悩み、最終的には企業や消費者の将来的なインフレ期待も押し下げられる可能性がある。インフレ期待は将来のインフレを左右する重要な決定要因であり、それが後退すれば、いったん経済が回復したとしても、インフレ率は2%の当局目標を下回ったままで低迷することになりかねない。悪循環を整理して説明すると、低インフレ下では、FF金利の引き上げ余地が少なくなり、将来の危機に対抗するための余地も限られてしまうというわけだ。
幸いなことに、バーナンキ元FRB議長は1つの解決策を提示している。バーナンキ氏は17年の論文で、一時的な物価水準目標が効果的である可能性を指摘した。
米金融当局が現在採用している2%のインフレ目標は、現時点での目標達成を趣旨とし、過去のインフレ率が目標をどれ程下回ったか、もしくは上回ったかは不問とする形となっている。物価水準目標はこれとは異なり、金融当局は物価水準が安定的に上昇していくようにして、物価が低過ぎる時期があれば、物価高の時期を設けることによってそれを相殺することが求められる。実際には、従来型の金融政策ルールで想定されるよりも、政策金利を一段と長期間、低めに維持することが必要とされる。
金融当局が金利を据え置く方針であると人々が信じれば、インフレ率はさほど鈍化せず、危機は回避されるという考えだ。
バーナンキ氏は、政策金利がゼロの場合にのみ、この措置を使うとしていることから、「一時的」となる。ガソリン価格の上昇といった一過性の要因でインフレが高進したとしても、金融当局は好景気にあってもそれを押し下げるための政策引き締めを強いられることがなくなる。
米金融当局の現行のインフレ目標は2%を中心に上下対称とする仕組みだが、バーナンキ氏がFRBのトップクラスのエコノミストであるマイケル・カイリー、ジョン・ロバーツ両氏とまとめた最近の論文では、物価水準目標の方がより良い結果につながるとされる。
シャドー(潜在)金利
シャドー(潜在)金利の考え方は、ゼロ金利制約がなく、政策金利をマイナスに引き下げることができた場合にどの程度、追加的な緩和を経済に与えることができたのか継続的に推計し、その上で、金利を一段と長く据え置いて、逸失した緩和分を補うというものだ。
現在ニューヨーク連銀総裁を務めるジョン・ウィリアムズ氏が00年にシャドー金利についての論文を共同執筆したが、カイリー、ロバーツ両氏が論文で示した新バージョンの方がインフレ率を2%に安定的に保ち、成長の未達を小さくする上で一層の効果があるとされた。
平均でのインフレ目標達成
これは景気循環を通じて平均でインフレ目標達成を目指していくもので、物価水準目標ほどは劇的ではなく、魅力的な代替策と言えそうだ。
ウィリアムズ総裁とサンフランシスコ連銀のトーマス・マーテンス氏は今年1月の論文で、政策金利がゼロを上回っている局面で、インフレ率が2%をオーバーシュートするよう容認すれば、インフレ期待をつなぎとめるのに役立つとの分析を示した。
量的緩和
これまで説明してきたアプローチはいずれも、深刻なリセッションを受けてFF金利の誘導目標を一段と長く、低めに維持するという同じテーマに沿ったものだったが、金融当局者は利下げ以外にも危機対応のための措置を検討している。
明らかな候補は量的緩和(QE)であり、当局は先のリセッションを受け、第3弾までこの措置を講じた。パウエルFRB議長をはじめとする当局者は、債券購入が引き続き当局の危機対応の手段の1つであることを明確にしている。
しかし、債券購入は他に選択肢がなくなった場合にのみ活用すべきなのか、景気悪化のもっと早い段階で導入することが理にかなうのかという疑問がある。カイリー氏は18年の論文で債券購入について、「生産が潜在力を下回った段階で早急に活用」すれば最も効果的とした上で、FF金利がゼロまで引き下げられた後にだけ、二次的な措置であってよいと論じた。
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は今月8日、記者団に対し、「金利を一次的な措置とし、バランスシートは二次的ながらもっとたやすく使う措置とした政策執行を想定することが可能だ」と指摘。「これはまだ決まっていないが、われわれの現在の議論の一部だ」と語った。
マイナス金利
米金融当局に利用可能な非伝統的選択肢は債券購入だけではない。技術的には金利をマイナス圏に引き下げることも可能だ。他の中央銀行による実施例もあるが、欧州が14年に採用した段階では、米景気は既に拡大基調にあった。
幾つかの大きなリスクを考慮して、米金融当局はマイナス金利を採用しない可能性がある。マイナス金利が海外でどの程度うまく機能してきたか、まだ結論は下されておらず、米ブラウン大学のゴーティ・エガートソン氏は実際、銀行の利益を圧迫することによって逆効果となりかねないと、最近の論文で指摘した。一方、サンフランシスコ連銀のバスコ・カーディア氏は今年の論文で、マイナス金利を採用していれば、先のリセッションはもっと痛手が小さく、回復も加速された可能性があると記しており、このトピックが引き続き当局者の間で議論されている可能性がある。
イールドカーブコントロール
米金融当局が頭の体操に取り上げるかもしれないもう1つの選択肢は、日本銀行が採用したイールドカーブコントロールだ。この政策では、市場操作を通じて短期金利と長期金利をコントロールすることができる。
米金融当局も第2次世界大戦の間を含め、イールドカーブコントロールを試したことがある。当時は、債券市場の安定化と戦費抑制のため、米財務省とFRBが長期債および短期債の利回りに上限を設ける枠組みを活用した。
日銀の雨宮正佳副総裁は17年、新たなイールドカーブコントロールはデフレ脱却のための新しい手段として運用するもので、政府のコスト削減に向けたものではなく、過去のものとは違うと説明した。
クラリダ氏がアドバイザーを務め、昨年公表されたコロンビア大学の分析論文では、米金融当局が採用した場合、金利の水準およびボラティリティーを押し下げることで、FF金利がゼロに達したとしても景気刺激が期待されるとする一方、当局のバランスシートを拡大させるリスクがあり、コミュニケーションや実施面でも困難が伴うかもしれないとしている。他方で、量的緩和を補完することができるという点に「主な魅力」があるという。
原題:Fed Superstars Lay Out a Map for the Central Bank’s Big Rethink(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-25/PNDEWF6JTSJ801
NY連銀総裁:インフレ期待低下のリスク警告、枠組み見直しが必要
Craig Torres、Matthew Boesler、Christopher Condon
2019年2月23日 3:27 JST
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、インフレ率が金融当局の目標である2%に達しない状況が長年続いたことで、インフレ期待が下がった可能性があると懸念を表明した。
総裁は22日にニューヨークで講演し、「中長期のインフレ期待の指標が低下するという憂慮すべき兆候が、ここ数年に幾つか見られるようになった」とし、「インフレ期待という錨(いかり)がじわじわと岸に押し寄せられるリスクは、インフレ目標達成を目指す長年の枠組みを見直す必要性を浮き彫りにしている」と述べた。
2月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)によれば、5−10年先のインフレ期待値は2.3%に低下し、過去最低水準と一致。市場に基づくインフレ期待の指標もここ数カ月は低下しており、現在の5年後から5年間のインフレ期待を反映するブレーク・イーブン・インフレ率(フォワードBEI)は15日に1.8%。5年フォワードBEIは、2018年の大半で2%を上回っていた。
米金融当局は今年、政策の枠組みの包括的な見直しを実施する。これには議会から与えられた責務の一つ、物価安定を達成するための手法も含まれる。
総裁は「インフレ期待が高過ぎる、低過ぎるにかかわらず、縛りを解かれることについて、当局は無関心になるべきではない」とし、「当局が今年、政策枠組みの見直しを実施することを非常に喜ばしく思う」と語った。
原題:Fed’s Williams Warns of Risks of Low Inflation Expectations (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-22/PNC8FK6KLVR401?srnd=cojp-v2
フィラデルフィア連銀製造業景況指数:2月はマイナス4.1、予想14.0
Kristy Scheuble
2019年2月21日 22:41 JST
エコノミスト41人の予想レンジは10.0から22.8だった。前月は17.0。
統計表
原題:U.S. Feb. Philadelphia Fed Index Falls to -4.1, Est. 14.0(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-22/PNC8FK6KLVR401?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/262.html