分断と対立とニヒリズム。沖縄に押し付けられた「基地以外」のもの
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2019.01.28 菅野完 ハーバー・ビジネス・オンライン
写真/時事通信社
沖縄に押し付けられた「基地以外」のもの
この欄でも過去に何度か沖縄について触れたことがある。その度に「沖縄について語るのは難しい」という枕詞をつけてきた。例えば昨年8月に本欄で沖縄について言及したとき、私は、沖縄について語ることの難しさを「思い上がったオリエンタリズムに陥って」しまう可能性があるからだと書いた。今もその気持ちは変わっていない。
さらに今回はもう一つ、冒頭に留保を付けておきたい。私はありとあらゆる住民投票なるものに反対だ。大阪維新の浅知恵で行われた都構想住民投票の後に残った分断を見てみればいい。あるいは、EU離脱国民投票からこのかた英国が辿っている、ダッチロールとしかいえないあの国政運営を見てみればいい。直接民主主義の後には後味の悪い分断に支配された焼け野原のような光景しか残らないのだ。
ここまでの留保を置くものの、やはり、辺野古基地新設に関する沖縄の県民投票について触れざるを得ない。県民投票をめぐる情勢は年明け以降、あまりにも醜悪なものになりつつあるからだ。
「辺野古新基地建設のための賛否を問う県民投票条例案」が沖縄県議会で可決されたのは、昨年10月のこと。しかしその後、県内一部の自治体が「投票を実施しない」という態度を表明しだしたのだ。
なるほど、地方自治法から見れば県の決定に市が従うことは必ずしも義務ではないだろう。しかし、県全域で実施される投票に一部の市町村が参加しないとなると、その市町村の住人は投票権を剝奪されることとなる。参政権という基本的な権利が自治体の一存で否定されるのだ。そんなことが許されるはずがないではないか。
一方、県民投票を疑問視する声の中に、肯首せざるを得ないものもある。「賛成か反対かの二者択一を諮るのは乱暴だ」との声がそれだ。これは確かに正論ではあるし、私が「ありとあらゆる住民投票に反対」の立場なのもそこにある。だがしかし、そもそもこんな乱暴で稚拙な方法にさえ魅力を感じてしまうほどに、沖縄はこれまで、国側の乱暴な手法に蹂躙され続けてきたのもの事実だ。
こうして私の考えはぐるぐる回ってしまう。その度に「沖縄を語る難しさ」を痛感し頭を垂れるしかなくなる。
確かなことは、いま沖縄に、分断と対立と、そしてその結果当然生まれてしまうニヒルな無関心が蔓延していることだ。沖縄が押し付けられたものは基地だけではない。この不毛な光景をも本土は沖縄に押し付けてしまっている。
まずはそこを直視することから始めるしかない。分断と対立で荒む沖縄を前にし、本土に住む我々は、頭を垂れ、ひたすら傾聴に徹するしか、まずは方途はあるまい。
<取材・文/菅野完> すがのたもつ●本サイトの連載、「草の根保守の蠢動」をまとめた新書『日本会議の研究』(扶桑社新書)は第一回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞に選ばれるなど世間を揺るがせた。現在、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中。また、メルマガ「菅野完リポート」や月刊誌「ゲゼルシャフト」(https://sugano.shop)も注目されている
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— 菅野完事務所 (@officeSugano) 2019年1月28日
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— ハーバー・ビジネス・オンライン (@hboljp) 2019年1月27日
確かなことは、いま沖縄に、分断と対立と、そしてその結果当然生まれてしまうニヒルな無関心が蔓延していることだ。沖縄が押し付けられたものは基地だけではない。この不毛な光景をも本土は沖縄に押し付けてしまっている。
— ∞TAMMY∞ (@tammy0626) 2019年1月29日
まずはそこを直視することから始めるしかない。https://t.co/nIOUPL9FLh
多くの沖縄県以外で生活する人たちも、少し沖縄の基地問題に関心を持って考えたあとに、たぶん言葉にできない難しさを持っているのではないだろうか。その難しさを菅野氏は削ぎ落とした言葉で。一読を。 https://t.co/jD63iGiTaZ
— 奈良橋至に憧れて (@0hmfSk7hKdeuB9N) 2019年1月28日