日銀総裁、海外リスク警戒 追加緩和は余地乏しく
経済
2019/1/23 23:13
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日銀が海外発の景気下振れリスクへの警戒を強めている。23日開いた金融政策決定会合でまとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、「米中貿易摩擦など様々な動きには注意を要する」と指摘した。黒田東彦総裁は同日の記者会見で「リスクが高まってきている」と述べた。しかし追加緩和の余地は乏しく、景気の先行きに神経をとがらせている段階だ。
同日の会合では短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策(長短金利操作)の現状維持を賛成多数で決めた。物価の見通しは2019年度、20年度ともに昨年10月より下方修正した。実質成長率の見通しは、政府が消費増税対策を実施することを反映して19、20年度ともに小幅に上方修正した。
世界経済は減速懸念が強まっている。国際通貨基金(IMF)は21日、欧州経済の減速などを踏まえて、19年の世界経済見通しを18年10月に続いて引き下げた。米中間の貿易戦争や中国経済の減速が欧州や産油国などに波及している。日本でも財務省が23日発表した18年12月の貿易統計速報で、中国向けの輸出額が前年同月比7%減った。
黒田総裁は会見で、「米中の経済摩擦が長引けば、世界経済に深刻な影響が出てくる」と警戒した。日本では「(生産設備などの)資本財を中心に中国からの受注が減っている」と指摘した。
一方で黒田総裁は「現時点で(経済が着実な成長を続ける)メインシナリオを変えるリスクは顕在化していない」と話した。米中の貿易摩擦は交渉が断続的に進んでいることなどをあげ、「収束に向かうのではないか」と楽観的な見方を示した。工作機械などは中国経済の減速を映して受注が減っているが、受注残があることを指摘して「今のフル生産を相当程度続けられる」と語った。
こうした見方に関して市場からは「実体の数字に影響が出ていないと黒田総裁は言い切っているが、世界的な景気減速でアジア向け輸出は落ちている」(大和証券の岩下真理氏)との声が出る。米中の貿易摩擦が企業業績の下振れにつながれば、金融市場の混乱などを通じて日本の実体経済に悪影響を及ぼす恐れもある。
金融市場では世界的に投資家心理が悪化し、「昨年秋以降、やや不安定になった」(黒田総裁)。外国為替市場では米アップルの業績下方修正などを受けたリスク回避の動きから、3日に円相場が一時1ドル=104円台と約9カ月ぶりの円高・ドル安水準を付けた。4日には米欧株安を受け、日経平均株価が大発会として過去3番目の下げ幅を記録した。
黒田総裁は「先行きの不確実性にやや過敏に反応した」とみる。08年のリーマン・ショックのような金融危機が来る可能性については国際的に金融機関への規制強化が進んでいるとして「リーマン・ショックのようなことが起きることはないと思う」と述べた。
ただ、世界経済の減速が本格化したときに欧米の中銀が緩和方向に動けば、日本には円高・株安圧力が強まりかねない。
円高圧力を弱める効果がある追加緩和について黒田総裁は「政策余地が狭まっているということではない」と強調した。SMBC日興証券の丸山義正氏は「日銀は今後、円高の急な進行を止めるための政策修正を迫られる可能性がある」と話す。
しかし市場では「日銀の弾薬庫は空の状態で、追加緩和は難しい」(みずほ証券の上野泰也氏)との見方も多い。大規模な金融緩和による超低金利が長引き、金融機関収益の悪化など副作用への警戒が強まるなか、日銀の次の一手に対する市場の関心が少しずつ高まっている。
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日銀、世界経済下振れ警戒 黒田総裁「リスク高まる」
経済
2019/1/23 15:10 (2019/1/23 17:20更新)
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日銀は海外発の景気下振れリスクへの警戒を強めている。日銀の黒田東彦総裁は23日午後、金融政策決定会合後の記者会見で「リスクが高まってきている。十分注意する必要がある」と危機感を示した。米中の貿易戦争が企業業績の下振れや金融市場の混乱などを招き、日本の実体経済に悪影響を及ぼす恐れもある。ただ日銀には追加緩和余地が乏しく、状況は厳しい。
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同日の決定会合で日銀は3カ月に1度改定する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表し、2019年度と20年度の物価見通しを引き下げた。19年は1.4%から0.9%と下落幅が大きい。黒田総裁は「原油価格の下落によるところが大きい」とし、「直接的な影響は一時的だ」と強調。「2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されている」とこれまでと同じ見解を示した。
展望リポートでは実質成長率の見通しについては、政府の消費増税対策を反映し、19年度、20年度ともに小幅に上方修正した。
しかし海外経済に関しては「米中貿易摩擦など最近の様々な動きには注意を要する」と米中の貿易摩擦や欧州の政治問題、中国経済の減速などをリスクとしてあげ「下方リスクが少し高まってきた」と繰り返した。
世界的に投資家心理が悪化し、金融市場は昨年末から今年の年始にかけて揺れたのは記憶に新しい。1月3日に円相場が一時1ドル=104円台と約9カ月ぶりの円高・ドル安水準を付け、4日には日経平均株価が大発会として過去3番目の下げ幅を記録。黒田総裁は「やや過敏だったように見受けられる」とした。
足元では米中摩擦が緩和するとの思惑から市場は落ち着いているが、世界経済減速への警戒はくすぶる。国際通貨基金(IMF)は21日、19年の世界経済見通しを18年10月に続いて引き下げた。
市場では「景気後退の可能性や、追加緩和手段への黒田総裁の言及が注目されていた」(野村証券の中島武信氏)。しかし黒田総裁は「経済・物価、金融情勢を見て、必要があれば追加的な措置もとる」と述べるにとどめた。
大規模な金融緩和による超低金利環境が長引き、金融機関収益の悪化など副作用への警戒が強まる。日銀は追加緩和には動きにくいとの見方が多い。世界経済が本格的に減速し始めて欧米の中銀が緩和方向に動けば、日本には円高・株安圧力が強まりかねず、企業業績などに大きな打撃になる。日銀の次の一手に対する市場の関心が徐々に高まっている。
日銀、物価見通し下げ 決定会合 金融緩和は維持
経済・政治
2019/1/23 12:18 (2019/1/23 13:16更新)
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日銀は23日に開いた金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策(長短金利操作)の現状維持を賛成多数で決めた。原油価格の下落などで2019年度以降の物価見通しを引き下げ、景気の見通しには「米中貿易摩擦など最近の様々な動きには注意を要する」という表現を新しく加えた。
金融緩和の現状維持は9人の政策委員のうち7人の賛成多数で決めた。黒田東彦総裁が23日午後に記者会見を開き、決定内容を説明する。
3カ月に1度改定する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率予測は19年度を0.5ポイント引き下げ0.9%に、20年度を0.1ポイント引き下げ1.4%とした。19年度予測の引き下げは3回連続。今回から消費税率引き上げと教育無償化の影響を除いた例を示した。
成長率予測は19年度を0.9%、20年度を1.0%とし、前回から0.1〜0.2ポイントそれぞれ小幅に引き上げた。政府による消費税率引き上げの対策を織り込んだ影響とみられるが、先行きの海外景気に慎重な表現を盛り込んでいる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40349570T20C19A1MM0000/?n_cid=SPTMG053
日銀総裁、市場の乱高下「先行き不確実性にやや過敏反応」
経済・政治
2019/1/23 15:49
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日銀の黒田東彦総裁は23日、金融政策決定会合後の記者会見で、年末年始のマーケットの動揺について、「先行きの不確実性に対してやや過敏であったようにも見受けられる。金融市場の動向が経済物価に与える影響について注意深くみていく。適切な政策運営に努める」と述べた。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕
https://www.nikkei.com/article/DGXLNS0040004_T20C19A1000000/?n_cid=SPTMG053
日銀、展望リポートで触れない「リスク」
編集委員 清水功哉
経済
2019/1/23 12:36
「これほど不確実性の大きさを感じる年初は珍しい」。1月に入り、日銀内で複数の人たちから聞いた言葉だ。日銀が23日に公表した2019年最初の経済・物価情勢の展望(展望リポート)も「経済・物価ともに下振れリスクが大きい」と強調。海外を中心とする様々なリスク要因を挙げた。
だが、実は展望リポートが触れていないポイントがある。日銀自身の追加的な政策対応の余地が乏しい点だ。各種リスクが顕在化し市場が混乱したとき、日銀は火消しできるか。その点こそ19年の最大のリスクのひとつといえる。
展望リポートがあげた海外発のリスク要因は広範囲にわたる。米国のマクロ政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの影響、新興国・資源国経済の動向、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の影響、地政学的リスクなどだ。「海外経済を巡る下振れリスクは、このところ強まっている」と指摘。企業や家計のマインド面への影響を注視する必要があるとした。
やっかいなのは、いずれのリスク要因も顕在化すれば円高を招きかねないことだ。例えば米国の金融政策。米経済の減速を背景に利上げができなくなったり、利下げの可能性が意識されるようになったりすれば、金利面からドル売り圧力が強まる。米中貿易戦争など保護主義の拡大も、世界経済の減速を通じて市場参加者のリスク回避姿勢を強めそうだ。「安全通貨」と目されている円にマネーが集まる展開が予想される。
円高は日本の株安を招き、マーケットの混乱は経済・物価情勢に負のインパクトを及ぼす。23日公表の展望リポートで見通しを下方修正した消費者物価上昇率が、さらに下振れるだろう。
問題は市場や経済の混乱に対応するための十分な「武器」を、日銀が持っていないようにみえることだ。
黒田東彦総裁は表向きこう語ってきた。「緩和の手段として、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、通貨供給量(マネタリーベース)の拡大ペースの加速など、様々な対応が考えられる」。だがマイナス金利の「深掘り」などこれ以上の金利引き下げは、円高を止めるどころか、かえってマーケットの混乱をあおってしまう恐れもある。低金利による金融機関収益への打撃が一段と強まるとの見方から、銀行株が大きく売られるかもしれないからだ。
上場投資信託(ETF)購入の増額はどうか。株安を防ぐ効果を持つかもしれないが、円高が止まらないなら、実体経済への悪影響を十分に弱められるか不安がある。
いずれにせよ、有効な追加緩和策はあまりないのが実情だろう。日銀が十分な「武器」を持たないことを見抜いている投機筋が、その点を突いて円買いや株売りを仕掛けてくれば、マーケットの混乱に拍車がかかりそうだ。
「追加対応の余地が大きくないのは事実だが、まったくないわけではない。急速な円高が進むなどして物価上昇のメカニズムが崩れそうになれば動くだろう」。日銀の中枢部門で聞く声だ。23日の午後3時半から開く黒田総裁の記者会見でも、有効な追加緩和手段を持っていると強調するかもしれない。
しかし、その言葉に市場参加者はどの程度説得力を感じるのか。疑問が消えない。
日銀総裁、米中貿易摩擦「収束に向かうのではないか」
経済・政治
2019/1/23 16:05
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日銀の黒田東彦総裁は23日、金融政策決定会合後の記者会見で、米中間の貿易摩擦について「米国や中国からいろいろなニュースが出ているが、そういうのを見ても貿易問題については交渉が進み、解決に向かっている」という見方を示した。その上で「貿易摩擦、二国間の貿易収支などといった貿易経済問題は収束に向かうのではないか」と期待を込めた。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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