東京五輪招致をめぐる汚職容疑で、招致委員会理事長を務めていた日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長に、仏司法当局による捜査の手が及んでいます。
招致に向けてアフリカの国際オリンピック委員会(IOC)メンバーの支持を取り付けるために竹田会長が裏取引に関わったとされる疑いです。日本の五輪運動の中心人物にかけられた不正疑惑。来夏に迫った「夢の祭典」の熱気がしぼみかねない事態です。
贈賄の意図否定
疑惑は五輪開催が決まる2013年9月の前と後の計2回、招致委からシンガポールのコンサルタント会社の口座に合計で約2億2千万円が振り込まれたことに端を発しました。この会社はセネガル出身で国際陸連前会長のラミン・ディアク氏の息子パパマッサタ・ディアク氏とつながりがありました。ラミン氏は16年、ロシア陸上界のドーピング疑惑の隠ぺいで金銭を授受した疑いで仏検察から起訴され、IOC委員の資格停止処分を受けました。
竹田会長は今回の疑惑報道を受けて、「契約に基づき正当な対価を支払った」とコメントし、贈賄の意図を否定しました。
しかし、焦点は振り込まれた資金の使途です。竹田会長は1回目の送金がロビー活動と情報収集のため、2回目は成功報酬と説明してきましたが、2億円超の額が誰に流れ、どのように使われたのかは本人も説明できず、JOCが設けた調査委員会でも全く解明されていません。
そもそもディアク親子との関係が濃いコンサルタント会社を選んだ理由について、竹田会長は「国際大会などでの実績」をあげていました。
いまやその“実績”が大本から問われています。この会社の口座は先のロシア陸連のドーピング疑惑をもみ消すための金銭授受で使われていました。
リオ疑惑と同じ
16年リオデジャネイロ五輪招致をめぐる買収疑惑でも、このディアク親子が密接に絡んでいます。ブラジルや米仏3カ国の捜査当局によると、ブラジルオリンピック委員会会長としてリオ五輪招致の先頭に立ったカルロス・ヌズマン氏の仲介によって同国の企業がパパマッサタ氏の口座に約2億2千万円を振り込み、票集めを依頼したとされています。ヌズマン氏は17年、ブラジル連邦警察に逮捕されました。
国内オリンピック委員会の責任者が大会招致のためにディアク親子に頼る構図は、あまりに似通っています。しかも送金額までほぼ同じでした。
IOCが14年に発表した五輪改革の「アジェンダ2020」は、招致活動に関わるコンサルタント会社について「有資格者を登録制とし監視する」と定めました。東京招致が決まった翌年の改革提言だけに、暗躍を野放しにできない事態があったと思われます。
オリンピックは本来、高潔性とフェアプレーの促進体になりうるものです。その大会運営の中枢に不正と汚職の疑惑がくすぶったまま本番を控える現状は、あまりに残念でむなしいといえます。
(勝又秀人)
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