「乱高下する鉄火場」こうして今年の市場は沈んでゆく
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2019/01/07 日刊ゲンダイ 文字起こし
さらに下がるのに、狂気の沙汰(C)日刊ゲンダイ
大発会から東京市場は大きく沈んだ。4日の日経平均は一時700円を超える大幅安。終値は前年末比452円81銭安の1万9561円96銭に落ち込み、あっさり節目の2万円台を割った。7日の市場は急反発、一時700円以上も値上がりしたが、その後、売られ、477円高の2万38円で引けた。
これぞ、今年の市場の象徴ではないか。ちょっとした材料で乱高下する鉄火場だ。しかし、ハッキリしているのは、それでも徐々に沈んでゆく流れである。それは“プロ”の予想をはるかに超えている。
日経新聞は1日付で、日本を代表する大手20社の経営者に今年の株価を予想させていたが、安値を2万1000円、2万円、1万9500円と答えた6人は大発会で、いきなり大外れ。残る8人も1万9000〜1万9200円と答えており、早くも“危険水域”に突入している。
読売新聞も3日付で、経営者30人に株価を予想させたが、こちらは6割超の19人の安値が翌日にアウト。先見の明がなさすぎる。日本を代表する経営者の投資判断はかくもデタラメなわけだが、投資のプロはとうに日本株を見放している。
〈正直に話しますと、私は日本の株を1カ月前にすべて売りました〉
最新号の「週刊現代」のインタビューにそう答えたのは、ジム・ロジャーズ氏(76)だ。著名投資家のジョージ・ソロス氏とクォンタム・ファンドを共同設立し、“投資の神様”として市場に君臨する「世界3大投資家」のひとりである。
そんな大物投資家が、保有していた日本株の完全放出を明かすとは衝撃告白だが、その理由は単純明快だ。ロジャーズ氏はこう語っている。
〈日本の経済政策の限界を感じ、株価はこれ以上伸びないと判断したわけです。にもかかわらず、安倍首相は10月の消費増税を断行しようとしている。5%から8%に上がったときもクレイジーな政策だと私は思いましたが、まだ無駄な橋や道路を作り続けるために、税収を上げようとしているのは信じられません〉
ロジャーズ氏は消費増税が日本経済にトドメを刺すと指摘するが、そこに至るまでにも今年は株暴落と、現在1ドル=108円台まで上昇した円高リスクは山のようにある。大発会の大幅株安は、まだまだ序章だ。素人は絶対に今年は株に手を出さない方がいい。
決裂間近(C)共同通信社
円安が吹っ飛べば日本経済はオシマイ |
日本に限らず、世界経済を左右する大きな懸念材料が、米中貿易戦争の行方だ。
昨年12月の米中首脳会談で一時休戦が図られたように見えたが、舌の根も乾かぬうちに、トランプ政権はカナダ政府に要請し、中国通信機器最大手・ファーウェイの孟晩舟CFOを逮捕。中国も報復のように計13人のカナダ人を自国で拘束するなど、米中両国の対立はくすぶり続けている。
米国の対中関税引き上げの猶予90日間が切れるのは、3月1日。それまでに恐らく、米中両国による壮大な水面下での駆け引きと情報戦が繰り広げられるのだろう。それでも打開できなければ、米国は2000億ドル(約21兆6000億円)分の中国製品に課す関税比率を10%から25%に引き上げると表明している。シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏はこう指摘する。
「米中両国の関税報復合戦が激化すれば、ダメージを被るのは米国経済の方です。『アップル・ショック』の株暴落を招いた米アップル社の中国市場での販売不振の理由として、貿易摩擦の激化で中国経済が低迷したかのように報じられていますが、実態は違う。中国国内ではiPhoneよりもファーウェイのスマホの方が高性能で、低価格。だからiPhone需要が減ったのです。貿易摩擦が中国の実体経済に与えた影響は微々たるもの。むしろ、中国の報復措置で原油や大豆などの対中輸出を止められた米国の方が影響は大きい。
もちろん、金正恩委員長とでも手を握ったトランプ大統領のこと、中国に譲歩する可能性もありますが、彼の支持基盤は『アンチ中国』に染まる低所得・低学歴の白人層です。来年の大統領選に勝たなければ逮捕されかねない立場ですから、票目当てに引くに引けず、激しい貿易戦争に突入する公算は高い。そうなると、関税強化で無用なインフレが進み、米国の景気後退局面を早めるだけです」
NYダウ平均もみるみる下落し、引きずられるように日経平均も暴落の一途だ。
その上、米国経済の落ち込みはさらなる円高要因となる。
■すでに始まった第2の世界金融危機の兆候
経済失速を取り戻すため、今春にも本格化する日米通商交渉で、トランプ政権の要求はエスカレート。日本からカネをふんだくる圧力が、さらに増すに違いない。
ただでさえ、トランプは日本が通貨安政策により米国で散々儲けていると考えているフシがある。新たな貿易協定に、通貨安誘導を禁じる為替条項が盛り込まれたら、日本経済は一巻の終わりだ。
「主要通貨の中で、昨年ドルに対し為替が高めに振れたのは、日本の円だけです。その上、米国に為替条項まで突きつけられたら、円高に歯止めが利かず、1ドル=90円台の高水準まで高騰しても、おかしくありません」(田代秀敏氏=前出)
そうなれば、輸出頼みの日本経済は大失速。昨年、初めて3000万人を突破した訪日外国人観光客が、日本を訪れる理由に挙げるのは「日本は物価が安い」。円安が吹っ飛べば、日本の値頃感もガタ減りし、4兆円以上ともいわれるインバウンド市場もオシマイだ。
いよいよ、上げ材料を失った日本株は「乱高下の鉄火場」を繰り返しながら、沈みゆくのだろうが、前出のジム・ロジャーズ氏はさらなる危機的状況を口にする。ズバリ、08年のリーマン・ショックに続く、第2の世界金融危機の到来だ。
その兆候として、ロジャーズ氏は昨年露呈したアルゼンチン、ベネズエラ、トルコ、インドの各銀行の運営難を挙げ、〈これらの国々の財政的な問題は、今年もさらに深刻化していく〉と語った。リーマン・ショックの時も前年にアイスランドの金融不安が露呈したが、誰も注意を払わないうちに英国の大銀行であるノーザン・ロックの取り付け騒ぎが勃発。人々が危機感を強めた直後に、リーマン・ブラザーズの破綻という未曽有の事態が発生した。
金融危機は誰も気づかない地域に起こり、数カ月後にようやく事の重大性に気づくのが歴史の教訓だ。ロジャーズ氏の予言通り、第2の金融危機が世界中に飛び火すれば、日本経済はクレージーな消費増税とのダブルパンチで、目も当てられない惨状となる。
■さらなるETF購入は危険を飛び越えて暴挙
これだけ懸念材料は山積みなのに、日本株を買い続ける黒田日銀は狂気の沙汰だ。日銀は昨年1年間に過去最大6兆5040億円ものETF(上場投資信託)を購入。
黒田総裁が目安とした6兆円を軽く突破し、現在保有するETFは取得価格ベースで約25兆円分まで膨らんでいる。
今年も大発会から716億円のETFを購入する気前の良さ。
ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏の推計によると、日銀が保有するETFの損益分岐点は1万8434円(昨年11月末時点)。間もなく株価が割り込み、含み損を抱えようが、黒田日銀はお構いなし。
4日の全国銀行協会の賀詞交歓会で、黒田総裁は「マーケットのことはマーケットに聞けというが、マーケットは真相を教えてくれない。自分の判断でしっかり政策を行っていく」と豪語した。マーケットが常に真相を示唆するのは、歴史が証明している。マーケットに対峙できないほど狂乱した人物に、金融のカジ取りを任せるのは危険を飛び越えて、暴挙だ。
「日銀が含み損を抱えれば、日本の信用力は低下し、国債の格付けもガタ落ちしかねません。中央銀行の株式購入は“禁断の果実”で、その毒が回って死に至るのは時間の問題です」(株式アナリスト・黒岩泰氏)
その時、ツケを払わされるのは国民であることを忘れてはいけない。
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— a.kimitoki@自殺する前に君の可能性を読め (@kimitoki) 2019年1月7日
財界豚に先見の明なぞあるはずはない。
ま、デフォルトでも検討したら?無能な日本政府よ
【素人は手を出さない方がいい】今年の株価は沈みゆく「乱高下の鉄火場」 それでも買い続ける日銀の狂乱を専門家はどう見ているのか まだまだ序章、山のようにある株暴落と円高リスク。かのジム・ロジャーズも指摘しているが、おそらく消費増税がトドメになるだろう(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/s7W7il5ZKz
— KK (@Trapelus) 2019年1月7日